緑ナンバーは運送事業者にとって欠かせない存在ですが、その取得には厳しい条件があります。
本記事では、緑ナンバーの基本情報から申請方法、取得後の運用まで、運送業に携わる方が知っておくべき重要ポイントを徹底的に解説します。
- 緑ナンバー取得のメリットと申請条件
- 申請に必要な書類と許可までのスケジュール
- 緑ナンバー取得後の車両表示と運輸支局への報告義務
1. 緑ナンバーとは?意味と定義を解説

緑ナンバーとは、貨物自動車運送事業の用途に供される車両に交付される、緑色のナンバープレートのことです。
緑ナンバーは「営業用ナンバー」とも呼ばれ、他社の貨物を運ぶ事業用のトラックに装着が義務付けられています。
緑ナンバー車両を所有するには、国土交通大臣の許可を受けた運送事業者であることが条件となります。
ナンバープレートの色の種類と違い
ナンバープレートには、用途に応じてホワイト(白)、グリーン(緑)、ブラック(黒)、イエロー(黄)、ブルー(青)の5色が存在します。
このうち、運送業者にとって最も関係が深いのが緑ナンバーと白ナンバーです。
- 白ナンバー
自家用車両に交付される一般的なナンバー - 緑ナンバー
事業用車両のうち、貨物自動車運送事業の用に供されるもの - 黒ナンバー
事業用乗用車(タクシー、ハイヤーなど) - 黄ナンバー
大型特殊自動車(ブルドーザー、ロードローラーなど) - 青ナンバー
外交官などの特殊車両
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緑ナンバーの正式名称「一般貨物自動車運送事業許可」
緑ナンバーの正式名称は「一般貨物自動車運送事業許可」といいます。
道路運送法に基づき、自社以外の荷主から運送の依頼を受け、その貨物を運ぶ事業を行うには、緑ナンバーの取得が必要不可欠です。
2.緑ナンバー取得のメリット

運送事業者にとって、緑ナンバーの取得には大きなメリットが3つあります。
信用の向上で営業力アップ
緑ナンバーは、運送会社としての信用や安全性の証となります。
荷主企業からの信頼を得やすくなり、新規顧客の獲得や営業活動に有利なうえ、公共事業への参入も可能になるなど、ビジネスチャンスが広がります。
運送可能な範囲の拡大
白ナンバー車両では社内の物品しか運べませんが、緑ナンバーを取得すれば他社貨物の運送が可能になります。
より広範囲の荷物を扱えるようになり、事業の幅を大きく広げられます。
従業員の福利厚生充実
緑ナンバー取得の条件として、従業員の社会保険への加入が義務付けられています。
ドライバーの健康管理や事故時の保障がしっかりとなされることで、従業員の安心感とモチベーションの向上につながります。
3.緑ナンバー車両の仕様と維持費
緑ナンバーを取得する際に必要な、車両の仕様や維持費について、車の台数や大きさ、税金、車検など、主なポイントを解説します。
必要な車両台数と仕様
緑ナンバー取得の条件として、事業所に5台以上の車両を所有していることが求められます。
車両の種類は、トラックやトレーラーなど貨物自動車運送事業の用途に適したものでなければいけません。車両の大きさについては、事業計画に見合った積載量や車両総重量であることが重要です。
自動車税・重量税の優遇措置
営業用車両である緑ナンバー車は、自家用の白ナンバー車と比べて自動車税や重量税が安く設定されています。
例えば、積載量2トンのトラックで年間の自動車税は、白ナンバーの約7万6千円に対し、緑ナンバーは約6万2千円と優遇されます。
車両を多数所有する事業者にとっては、大きなメリットとなるでしょう。
車検の有効期間と点検項目
車検(自動車検査登録)の有効期間は、車両総重量8トン未満のトラックの場合、緑ナンバーも白ナンバーも共に2年間です。
ただし、総重量8トン以上の大型トラックは、1年ごとに車検が必要になります。また、緑ナンバー車は事業用であるため、白ナンバーよりも厳しい保安基準が適用されます。
日常点検や定期点検を怠らず、適切なメンテナンス管理を行うことが大切です。
4.緑ナンバー取得の申請条件
一般貨物自動車運送事業の許可を受けるには、いくつかの申請条件をクリアしなければなりません。
事業者の資質や、運送サービスの安全確保の観点から国が定めた基準があるのです。主な4つの条件について見ていきましょう。
必要な車両台数と車庫の広さ
緑ナンバー取得のためには、まず5台以上の事業用車両を所有している必要があります。車種はトラックやトレーラーなど、貨物運送に適したものを選びます。
また、それらの車両を停めるための十分な車庫の確保も求められます。車庫の広さの目安は車両1台あたり約10平方メートルですが、実際には運送業務に支障のない広さであれば、多少狭くても認められるケースもあるようです。
運行管理者の選任と配置基準
事業用車両の運行にあたっては、国家資格を持つ「運行管理者」の選任が義務付けられています。
事業所で保有する車両台数に応じて、下記のように必要な運行管理者数が定められています。
- 車両数29両まで:運行管理者1名
- 車両数30両以上59両まで:運行管理者2名
- 以降、30両増えるごと:運行管理者を1名追加
運行管理者になるには、国土交通大臣指定の講習を修了するか、または国家試験に合格する必要があります。
人員配置については各都道府県の運輸支局に相談し、アドバイスを受けるとよいでしょう。
事業計画と必要資金
緑ナンバー取得の審査では、事業計画の適切さと、それに見合う資金力も重要なポイントとなります。
事業計画書には、営業地域や扱う貨物の種類、運賃設定、安全輸送のための方策などを具体的に記載します。
また、事業開始に必要な資金については、車両購入費や人件費、保険料など初期投資の総額を算出し、その8割以上の自己資金を用意しておくことが望ましいとされています。借入金の返済計画も明確にしておきましょう。
5.緑ナンバー取得の申請方法

ここから、緑ナンバーの申請手続きとなります。基本的な流れは、管轄の運輸支局への事前相談から始まり、必要書類の提出、審査、許可証の交付というステップで進みます。
申請から許可まで約4ヶ月を要するため、余裕をもってスケジューリングすることが大切です。
申請書類の準備
申請に必要な主な書類は以下の通りです。それぞれ定められた様式に漏れなく記入し、必要に応じて証拠になる書類を添付します。
- 一般貨物自動車運送事業許可申請書
- 事業計画書
- 運行管理者選任(予定)届出書
- 車庫の配置図・見取図および付近の見取図
- 自己資金の証明書類(預金残高証明書、納税証明書など)
- 申請者の略歴書および証明書
記入例を参考にしながら、内容に間違いがないよう慎重に作成します。不明点があれば、運輸支局の担当者に相談しましょう。
運輸支局への申請の流れ
申請書類の準備が整ったら、管轄の運輸支局の窓口に提出します。その後の流れは主に次の通りです。
- 申請書類の受理
- 審査(書類審査および必要に応じて聞き取り審査)
- 陸運局から運輸支局への意見照会
- 必要に応じて現地調査
- 審査結果の通知(補正指示や許可)
- 許可証の交付
なお、申請に際しては手数料が必要です。標準的な許可手数料は、事業用自動車30両以下の場合は10万円、30両を超えると15万円となります。
許可までのスケジュールと審査ポイント
申請から許可までの標準処理期間は4ヶ月ですが、書類の不備や追加説明の必要などがあれば、さらに時間を要する場合もあります。
審査のポイントは下記の5項目です。
- 事業計画の適切性(需要動向、競争状況、損益見通しなど)
- 事業遂行の確実性(自己資金、Vehicle Stability Control装置など)
- 法令遵守の体制(運行管理体制、運行管理者の選任など)
- 安全性の確保(点呼の実施体制、運転者の指導監督など)
- 環境への配慮(低公害車の導入、アイドリングストップの実施など)
これらの事項について、申請内容や事業計画が適切かつ確実であるかどうかが、綿密に審査されます。
不適切と判断された場合は、補正指示や許可却下となることもあるため、入念な準備が欠かせません。
6.緑ナンバー取得後の手続きと運用

無事に緑ナンバーの許可が下りたら、運送事業者としての責務を果たすために、各種の手続きや安全運行のための取り組みが求められます。許可後の主な対応についてチェックしていきましょう。
車両の表示と営業所の掲示義務
緑ナンバーの許可を受けた車両には、法令で定められた表示を行う必要があります。
具体的には、車体の両側面に運送事業者の名称や許可番号などを記載しますが、文字の大きさや色についても規定があるため、注意が必要です。
また、営業所の見やすい場所に「一般貨物自動車運送事業営業所」である旨を掲示することも義務付けられています。
許可証の原本も営業所に備え置き、利用者から請求があれば提示しなければなりません。
運輸支局への定期的な報告
緑ナンバーを取得した運送事業者には、業務の実施状況についての定期的な報告が求められます。 主な報告内容は以下の通りです。
- 事業報告書(毎事業年度)
- 事業用自動車の運転者に関する報告書(毎事業年度)
- 運行管理者資質の確認(運行管理者選任後5年毎)
- 事業用自動車の点検整備記録簿(3ヶ月毎)
- 輸送の安全にかかわる情報(重大事故発生時など)
これらの報告を怠ると、行政処分の対象となる可能性がありますので、期限を守って必ず提出しましょう。
ドライバー教育と運行管理の重要性
事業用車両の運転者には、輸送の安全を確保するための指導教育が必要です。
具体的には、以下のような取り組みが求められます。
- 運転者に対する法令や安全運転のための適性診断の実施
- 初任運転者や高齢運転者に対する特別な指導
- 点呼時に運転者の健康状態や睡眠不足などを確認
- アルコールチェックの実施
- 事故やヒヤリハットの事例を活用した指導
- デジタル式運行記録計やドライブレコーダーによる運行管理
運行管理者は、日々の指導や点呼を通じて運転者の状態を把握し、必要に応じてきめ細やかなアドバイスを行います。
運転者の健康管理や適性診断などの記録は確実に保存し、いつも安全運行の体制を整えておくことが大切です。
7.緑ナンバー取得で得られるもの

緑ナンバー取得のメリットから申請方法、取得後の留意点まで、運送事業者にとって必要な情報を解説しました。
緑ナンバーの許可は、運送事業者としての信頼の証であり、安全で質の高いサービスを提供するための第一歩といえます。
ただし、その許可を維持し、事業を発展させるためには、法令遵守と安全運行の徹底がとても大切です。 定期的な車両管理や運転者教育を通じて、大切な貨物を確実に輸送できる体制を構築しましょう。