自動車整備士不足が深刻化！10年で1.2万人減少の現状

最近、車両整備に3週間以上かかることが珍しくなくなったと感じていませんか？この背景にあるのが深刻化する自動車整備士不足です。

10年間で1.2万人減少し、有効求人倍率は4.55倍という異常事態が発生しています。ドライバーの業務に直接影響する一方で、転職市場では絶好のチャンスも生まれています。

1．自動車整備士不足の深刻な現状

自動車整備士不足は数字で見ても明らかな深刻な状況にあり、その影響は業界全体に波及しています。

データで見る整備士減少の実態

自動車整備士不足の深刻さは、公式データからも明確に読み取れます。日本自動車整備振興会連合会の最新調査（令和6年度版）によると、令和6年3月末時点の自動車整備士数は329,680人でした。

平成25年度（2013年度）の343,210人から、この11年間で実に13,530人もの整備士が減少したことになります。この減少傾向は続いており、整備士数は過去最低を更新しています。

この減少傾向はさらに加速しており、令和5年度の整備士数はここ10年で最も少ない数値を記録しました。

一方で、整備工場数は約9万事業所とほぼ横ばいで推移しているため、1事業所あたりの整備士数が大幅に減少している計算になります。

 国土交通省と日本自動車整備振興会連合会が公表した令和5年度版（2023年度）の調査によると、自動車整備士の有効求人倍率は5.56倍に達しており、状況は深刻化しています。

参考：国土交通省｜「自動車整備人材の確保・育成について」～令和5年度「自動車特定整備業実態調査」の結果概要～

整備士の高齢化が加速する問題

自動車整備士の減少と並行して深刻化しているのが高齢化問題です。

日本自動車整備振興会連合会のデータによると、自動車整備士の平均年齢は46.7歳に達しており、特に民間整備工場では52.1歳、ディーラーでも36.8歳となっています。

現場では40歳でも最も若い整備士という状況が珍しくなく、若手の確保が極めて困難な状況が続いています。

この高齢化は定年退職による人材流出の加速を意味しており、新卒採用数を大幅に上回るペースで整備士が減少している要因となっています。

さらに、高齢化は技術継承の面でも深刻な問題を引き起こしており、ベテラン整備士が持つ豊富な経験と技術が十分に継承されないまま退職するケースが増加し、業界全体の技術レベル維持にも影響を与えています。

参考：令和４年度 自動車特定整備業実態調査結果の概要について│自動車整備業の概要

2．自動車整備士不足の根本的な原因

自動車整備士不足の背景には、社会構造の変化と業界特有の課題が複合的に作用しています。

少子化による若年人口の減少

自動車整備士不足の最も根本的な原因は、日本全体の少子化による若年人口の減少です。

自動車整備士になるための一般的なルートである自動車整備学校への入学者数は、この問題を如実に表しています。

文部科学省の学校基本調査によると、自動車整備学校への入学者数は平成15年頃の約12,000人から、令和4年度には7,373人まで約40％も減少しています。

さらに令和3年度から令和4年度の1年間だけでも1,082人の大幅な減少を記録しており、減少ペースが加速していることが分かります。

若者の車離れとイメージ問題

現代の若者の価値観変化も、自動車整備士不足に大きく影響しています。

昭和から平成初期にかけて、自動車は社会的ステータスの象徴でしたが、現在では必要な時だけ利用する交通手段という認識に変化しています。

特に都市部の若者を中心に、車両購入費や保険料、駐車場代、燃料費などの維持コストの高さ、公共交通機関の充実により車の必要性が低下、所有よりもシェアリングやサブスクリプションを重視する価値観の変化などにより車離れが進んでいます。

さらに、自動車整備士に対するきつい、汚い、安いという3K職業のイメージが根強く残っていることも、若者の職業選択に影響を与えています。

▼あわせて読みたい

整備士の離職理由や業界の実態について詳しく知りたい方は、業界の課題と成功のためのポイントをまとめた以下の記事をご覧ください。

労働環境の厳しさと離職率の高さ

業界内部の構造的問題も深刻です。厚生労働省の雇用動向調査では、自動車整備業が含まれる大分類（その他の生活関連サービス業等）の離職率は約18%ですが、業界の実態はより厳しいものと見られています。

特に若年層の離職は深刻で、入社後3年以内に3人に1人が辞めてしまうとも言われ、人材の定着が大きな課題となっています。

離職の主な理由として、重いパーツの運搬や無理な姿勢での作業による腰痛や関節痛などの体力的負担、繁忙期の長時間労働や土日出勤の多さ、他業種と比較して相対的に低い賃金水準、夏は高温で冬は低温の作業環境や騒音、有害ガスへの曝露などの職場環境が挙げられます。

特に人手不足が深刻な職場では、1人あたりの業務量が過大になり、忙しいから人が辞める、さらに忙しくなるという悪循環に陥っているケースも少なくありません。

参考：厚生労働省｜令和5年雇用動向調査結果の概況

自動車整備士転職を検討中の方へ

車両整備士・メカニック専門の人材派遣サービス「カラフルスタッフィング メカニック」では、専門のコーディネーターが希望に合ったお仕事をご提案いたします。有名ディーラーでスキルや経験を積めるチャンスもあります！派遣という働き方で、まずは職場環境を確認しながらキャリアを積むことができます。

▼お問い合わせはこちら

3．自動車整備士不足がドライバー業界に与える深刻な影響

整備士不足は運送業界の運営効率と安全性の両面で深刻な問題を引き起こしています。

車両整備の長期化によるコスト増

自動車整備士不足は、ドライバーの日常業務に直接的な打撃を与えています。最も深刻な問題は、車両整備にかかる時間の大幅な延長です。

以前なら1週間程度で完了していた定期点検や修理が、現在では2～3週間、場合によっては1ヶ月以上かかるケースも珍しくありません。

整備期間の長期化による経済的影響

• 車両稼働率の低下による直接的な売上減少
• 長期間の代車利用によりレンタル費用が月額数十万円になる
• 計画的な整備が困難になり緊急対応による非効率性が発生する
• リスク回避のため追加車両購入が必要となり初期投資が増大する

運送業界の安全性リスク

整備士不足は、車両の安全性確保にも重大なリスクをもたらしています。適切な整備頻度を維持できない状況は、深刻な安全上の問題を引き起こす可能性があります。

人手不足により整備工場の予約が取りにくく、法定点検の期限ギリギリまで整備を延期せざるを得ないケースが増加しており、これは道路運送車両法違反のリスクを高め、事業停止処分の可能性もあります。

本来であれば故障前に交換すべき部品の交換時期を見逃し、路上での突然の故障リスクが高まっており、特にブレーキ系統やエンジン系統の不具合は重大事故につながる可能性があります。

整備士1人あたりの作業量が過大になることで、通常より短時間での作業を余儀なくされ、点検・整備の品質低下が懸念されています。

地方における整備工場の減少

自動車整備士不足の影響は、特に地方エリアで深刻化しています。人材確保が困難な地方の整備工場では、廃業や休業に追い込まれるケースが増加しており、ドライバーが利用できる整備拠点そのものが減少しています。

東京商工リサーチのデータによると、自動車整備業の休廃業・解散件数は過去最多ペースで推移しており、特に従業員10人以下の小規模事業所での廃業が目立っています。

地方では整備工場間の距離が元々長いため、1つの工場が廃業するだけでも地域全体の整備サービス供給に大きな影響を与えます。

この状況は、故障時に最寄りの整備工場まで数十キロ移動が必要になること、競合が減ることで整備工場の価格設定力が向上し整備費用が上昇すること、大型車やトレーラーなど専門性の高い車両整備ができる工場が減少することなどの問題を引き起こしています。

4．国と業界が進める整備士不足対策

政府と業界団体が連携して、包括的な人材確保・育成施策を展開しています。

国土交通省の人材確保推進協議会

深刻化する自動車整備士不足を受けて、国土交通省は2014年に自動車整備人材確保・育成推進協議会を設立しました。

この協議会は、整備士の労働環境改善と待遇向上を通じて、持続的な人材確保を目指す包括的な取り組みです。

協議会の主要な施策

• 小学生・中学生を対象とした職業体験プログラムの実施
• 高校生向けの整備工場見学・仕事体験の拡充
• 自動車メーカーと連携した工場見学ツアーの開催
• 整備士の働きやすい職場環境基準の明文化
• 事業者の達成状況評価システムの構築
• 短時間勤務・週休三日制などの多様な働き方の推進

さらに、全国での経営者向けセミナーの定期開催、先進的な労働環境改善事例の共有、人材投資の重要性に関する啓発活動などの経営者向け意識改革も行っています。

給付金制度と支援体制の充実

国は自動車整備士を目指す人材への経済的支援も大幅に拡充しています。最も注目すべきは、2018年に制度が拡充された専門実践教育訓練給付金です。

この制度では受講費用の50％を年間上限40万円で、原則2年、最大3年間にわたって雇用保険加入歴のある求職者に対して、受講中および修了後の両方で支給されます。

実質的に、自動車整備学校の学費の半額を国が負担する制度となっており、経済的な理由で整備士を諦めていた人材にとって大きな後押しとなっています。

年間最大40万円、3年間で最大120万円の支援は、転職を検討する社会人にとって非常に魅力的な条件です。

資格制度の見直しと統合

自動車整備士不足解消の抜本的対策として、2027年1月には資格制度の大幅な見直しが実施されます。この改革は1951年の制度創設以来、約70年ぶりの大規模な変更となります。

現行制度では2級・3級でガソリン、ディーゼル、シャシの区分があり、1級では大型・小型の区分がありましたが、新制度ではこれらの複雑な区分を統合し、総合自動車整備士として一本化されます。

この統合により、受験者にとってより分かりやすい資格体系、幅広い車種に対応できる汎用性の高い技術者の育成、EV・ハイブリッド車など次世代技術への対応力強化、複雑な区分による新規参入障壁の除去などの効果が期待されています。

整備士養成施設では、VR教材や最新のEV車両を使用した実習環境の整備に対する国の支援も拡充されており、従来の内燃機関だけでなく、電動化が進む自動車技術に対応できる人材の育成を目指しています。

▼あわせて読みたい

2027年の資格制度改革を理解するためにも、現行の整備士資格制度の詳細を把握しておくことが重要です。各級の取得ルートを詳しく解説しています。

整備士派遣で新しいキャリアをスタート

「カラフルスタッフィング メカニック」は車両整備士・メカニック特化の人材派遣サービスです。人材不足が深刻な業界だからこそ、派遣での好条件求人が豊富にあります。専門コーディネーターが一人ひとりの希望に合わせて最適な職場をご提案し、スキルアップもしっかりサポートします。

▼お問い合わせはこちら

5．整備士不足で生まれる転職・キャリアチャンス

人手不足により完全な売り手市場となった整備士業界は、転職希望者にとって絶好の機会を提供しています。

売り手市場による待遇改善の加速

自動車整備士不足は確かに業界全体の課題ですが、転職を検討している方にとっては絶好のチャンスでもあります。

極端な人手不足により完全な売り手市場となっている現在、整備士の待遇は急速に改善されています。

日本自動車整備振興会連合会のデータによると、自動車整備要員の平均年収は平成28年の383万円から令和3年には399万円へと、6年連続で上昇しており、特に2022年～2024年の3年間では大幅な増加が記録されています。

また、人材確保のため、多くの企業が労働環境の見直しを積極的に進めています。

• 残業時間の削減
• 一部企業での定時後のシステム停止実施
• 週休2日制の完全実施
• 一部での週休3日制導入
• 空調設備の完備による作業環境の改善
• 作業補助機械の導入による身体的負担の軽減
• 分単位での残業代支給
• 公正な給与体系の導入

異業種からの転職メリット

現在の自動車整備業界は、未経験者にとって極めて有利な転職市場となっています。

人手不足の深刻さから、多くの企業が経験よりもポテンシャル重視の採用方針に転換しており、入社後2～6ヶ月の基礎研修プログラム、OJTによる段階的な技術習得システム、資格取得費用の全額会社負担、外部研修への参加支援などの充実した研修制度を提供しています。

自動車は現代社会のインフラとして不可欠であり、整備需要がなくなることは考えられません。

車両の高度化により専門性がより重要になり、EVやハイブリッド車の普及で新たな技術需要が生まれ、地方では特に需要が安定し、景気変動の影響を受けにくい業界特性を持つため、安定性の高い職種となっています。

▼あわせて読みたい

未経験から整備士を目指す具体的な方法について詳しく知りたい方は、転職成功のステップと必要な準備を詳しく解説したガイドをご参考ください。

▼あわせて読みたい

技術進歩による職種価値の向上

自動車業界の技術革新は、整備士の職種価値を大幅に向上させています。自動車整備士不足が深刻化する中で、高度な技術を持つ整備士の市場価値はさらに上昇しています。

電動化が進む自動車市場において、従来のエンジン整備とは異なる専門知識が求められており、高電圧システムの安全な取り扱い技術、バッテリーシステムの診断・交換技術、モーター・インバーターの整備技術、充電システムの点検・修理技術などを習得した整備士は、一般的な整備士よりも年収で50～100万円高い待遇を受けるケースが増えています。

自動ブレーキや車線維持支援などのADASの普及により、センサー類の校正・調整技術、ECUの診断技術、ソフトウェア更新への対応、複雑な電子システムの故障診断などの新たな整備技術が必要となっています。

輸入車専門技術者、商用車・大型車専門技術者、二輪車専門技術者、カスタマイズ・チューニング専門技術者などの特定分野での専門性を高めることで、一般整備士の1.5～2倍の年収を得ることも珍しくありません。

▼あわせて読みたい

未経験から整備士を目指す具体的な方法について詳しく知りたい方は、転職成功のステップと必要な準備を詳しく解説したガイドをご参考ください。

売り手市場を活かした整備士派遣

車両整備士・メカニック専門の「カラフルスタッフィング メカニック」では、人手不足による売り手市場の恩恵を最大限活かした派遣求人をご用意しています。有名ディーラーや優良企業での派遣勤務を通じて、安定した収入とスキルアップの両立が可能です。専門コーディネーターが転職成功をサポートします。

▼お問い合わせはこちら

6．ドライバーが知っておくべき今後の見通し

整備士不足の解消には時間を要するため、短期的対策と中長期的展望の両方を理解することが重要です。

短期的な影響と対策

自動車整備士不足の解消には時間がかかるため、ドライバーの皆さんは当面の間、現在の状況を前提とした対策を講じる必要があります。

整備予約が取りにくい現状では、定期点検や車検は3ヶ月前からの早期予約が必須となり、緊急時に備えて2～3箇所の整備工場とのネットワーク確保、突発的な故障を避けるため日常点検と早期部品交換を実施する予防整備の徹底が重要になります。

また、整備工場選びの基準も見直しが必要で、適正な技術力を持つ認証・指定工場の選択、代車サービスの充実度、緊急時の対応体制、料金体系の透明性などを重視した信頼できる整備工場の選定が求められます。

中長期的な業界展望

自動車整備士不足の解消時期については、複数の要因を考慮する必要があります。

国の施策効果と業界の取り組みを考慮すると、短期の1～3年では待遇改善により離職率は改善するが根本的解決には至らず、中期の3～7年では新資格制度と給付金制度により新規参入者が徐々に増加し、長期の7～10年では業界イメージの改善と技術革新により需給バランスが正常化すると予測されます。

AIやロボット技術の導入により、整備作業の一部自動化が進むと予測されており、診断システムの高度化による故障箇所の迅速特定、3Dスキャンによる車体損傷の正確な把握、予知保全技術による計画的な部品交換などの技術により、整備士1人あたりの作業効率が向上し、人手不足の緩和が期待されています。

7．自動車整備士不足の現状と今後の展望

自動車整備士不足は10年で1.2万人減少という深刻な現状にあり、車両整備の長期化やコスト増加でドライバー業界に直接的な影響を与えています。

少子化、若者の車離れ、労働環境の厳しさが主な原因ですが、国土交通省の包括的対策や給付金制度の充実、2027年の資格制度見直しなど官民一体の取り組みが進んでいます。

ドライバーは3ヶ月前からの早期予約や複数工場とのネットワーク構築で対応し、転職検討者にとっては完全な売り手市場で待遇改善が進む絶好のチャンスとなっています。

中長期的には技術革新と国の施策により不足は解消され、より高品質な整備環境が実現される見込みです。

▼あわせて読みたい

整備士不足による転職チャンスを活かしたい方は、整備士専門の転職サイトを活用して効率的な転職活動を始めることをおすすめします。