自動車整備士の方々には、転職回数の多さや資格取得のためのブランクなど、職歴の書き方に悩む方が多くいらっしゃいます。特に40代・50代の複雑なキャリアは、「ネガティブに捉えられないか」という不安につながりがちです。
しかし、職歴欄は単なる記録ではなく、求職者の「即戦力性」を証明する戦略的な資料です。
この記事では、キャリアプランニングの理論、および労働法規・社会保険制度に基づき、複雑な整備士キャリアを自信を持ってアピールするための具体的な記載ルールと戦略を解説します。
- 整備士の採用担当者が職歴欄から何を見ているかという、根本的な評価視点。
- 転職回数やブランクなど、ネガティブに見られがちな経歴をポジティブに再定義する方法。
- 会社都合退職や非正規雇用といった複雑なキャリアの、法的に正しい記載ルール。
1.採用担当者(工場長・人事)が職歴欄から判断する「たった一つのこと」

採用の現場では、履歴書は初期スクリーニング(最初の30秒)で「募集要項の必須条件を満たしているか」を確認するための書類です。
その中でも職歴欄から、工場長や人事が判断したいことは、シンプルに言って「即戦力性」です。
職歴は「即戦力性」を示すマーケティング資料である
整備士の採用担当者は、職歴欄を見て、以下の点を瞬時に確認しています。
- 保有スキルとの関連性
二級・検査員などの資格取得プロセスと、それに対応する実務経験の期間が適切か。 - 携わった車種の多様性
「ディーラー」なら特定メーカーの専門性、「民間工場」なら多様な車種への対応力というように、応募企業のニーズと合致する経験があるか。 - キャリアの一貫性
転職の理由に一貫性があり、「この会社なら長く活躍してくれるだろう」という将来性があるか。
履歴書は「事実」を伝えるものですが、職務経歴書とセットで提出することで「価値」を伝える自己PRの文書へと変わります。
単なる経歴の羅列ではなく、即戦力としてのスキルと成長を裏付けるストーリーとして編集することを意識しましょう。
整備士の転職市場で高まる「複雑キャリア」の需要と現実
近年、自動車業界ではEVやADAS(先進運転支援システム)といった最新技術への対応が必須となり、高度な知識を持つ整備士の市場価値が高まっています。
同時に、中途採用市場は活況で、日本の転職希望者数は1,000万人を超え(総務省統計局調べ)、転職がより一般的になっています。特に40代・50代の転職率が増加傾向にあります(正社員の転職率は7.2%と高水準)。これはつまり、複雑なキャリアを持つ経験者が増えているという市場の現実を示しています。
ディーラー、民間工場、カー用品店、派遣など、多様な働き方(ジョブホッピング)を通じて幅広い経験を積んできたことは、むしろ「変化に対応できる汎用性の高いスキル」の証明になります。

この現実をポジティブに捉え、職歴を戦略的に記載することが、採用を勝ち取る鍵です。
参考:総務省と荊棘|労働力調査(詳細集計) 2024年(令和6年)平均結果
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2.【基本ルール編】形式上のミスで減点されないための3原則
どんなに素晴らしいスキルがあっても、形式的なミスは採用担当者に「雑な人」という印象を与えかねません。履歴書では、以下の基本原則を厳守しましょう。
「学歴」「職歴」の区切りと日付(和暦・西暦)の統一
履歴書の冒頭には、まず「学歴」を記載し、その一段下に「職歴」と中央揃えで明記して区切ります。
- 日付の統一
学歴・職歴を通じて、和暦(平成、令和)か西暦(20XX年)のどちらかに統一してください。どちらを使っても問題ありませんが、混在させるのは厳禁です。 - 最終学歴
学歴は高校卒業から記載するのが一般的です。 - 職歴
学歴のすぐ下の行に「職歴」と記入し、その次の行から入社・退社を記載します。
入社・退社時の正しい記載方法:「現在に至る」「一身上の都合」「以上」
退職理由と締めくくりの記載には、正確なルールがあります。
- 入社
「〇年〇月 株式会社〇〇入社」と法人格(株式会社、有限会社など)を省略せず正式名称で記載します。
整備工場名だけでなく、配属された部署名(例:整備部、サービス課など)も記載すると親切です。 - 自己都合退職
「〇年〇月 一身上の都合により退社」と記載します。 - 職歴の締め
最後の退社日の次の行に、右寄せで「現在に至る」と記入します。
さらにその次の行に右寄せで「以上」と記入して、職歴欄全体を締めくくります。
在職中の記載方法と退職予定日の明確な書き方
現在在職中でありながら転職活動をしている場合も、正直に事実を記載します。
- 入社日の記載
通常通り、「〇年〇月 株式会社〇〇入社」と記載します。 - 退社日の記載
退職が決定していない場合は、「現在に至る」の記載はせず、「〇年〇月 在職中」や「現在勤務中」と記載します。 - 退職予定がある場合
「〇年〇月 〇〇(退職予定日)をもって退職予定」など、退職予定日を明記しましょう。これにより、入社可能日が明確になり、採用担当者もスケジュールを組みやすくなります。
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3.【ケース別】複雑な雇用形態・離職理由の正しい書き方

複雑なキャリアの記載で最も重要なのは、法的な事実を正確に記載することです。
特に、会社都合退職を自己都合と偽って記載すると、後の雇用保険(失業給付)受給期間や給付制限の有無、さらに年金など他の公的手続きにも影響が出るため、注意が必要です。
会社都合退職と自己都合退職を混同しない
退職理由が「一身上の都合」では済まされないケースでは、正直かつ正確な記載が求められます。
- 会社都合退職の記載
工場閉鎖、大規模な人員整理、事業所の移転、早期退職制度への応募など、会社側の事情による退職の場合は、「〇年〇月 会社都合により退職(事業所閉鎖のため)」のように具体的な事実を明記します。 - 法的なメリット
会社都合退職は、雇用保険(失業給付)において給付制限期間がないなど、自己都合退職よりも受給条件が有利になります。
この法的な権利を守るためにも、事実は正確に記載しなければなりません。
M&A(合併・譲渡)や出向・転籍に伴う社名変更の正確な記載
ディーラーや大手整備工場グループでは、M&Aや組織再編による社名変更や転籍が多く発生します。これらは、採用担当者が「どの会社で働いていたのか」を正確に把握するために重要です。
- 社名変更の場合
「〇年〇月 株式会社A入社」「〇年〇月 組織再編により社名を株式会社Bに変更(社名変更)」のように、変更の事実と新しい会社名を明記します。 - 出向・転籍の場合
「〇年〇月 株式会社Aから株式会社Bへ出向(〇〇業務に従事)」「〇年〇月 株式会社Bへ転籍」のように、所属先の変更とその理由を具体的に記載します。
契約社員・派遣整備士・アルバイトなど非正規雇用の書き方
非正規雇用だからといって職歴に記載しなくていいわけではありません。整備士としての実務経験は、雇用形態にかかわらず重要なアピール材料です。
- 雇用形態を明記
「〇年〇月 株式会社〇〇(派遣元)に入社(派遣社員として)」または「〇年〇月 株式会社〇〇に契約社員として入社」のように、入社時の雇用形態を必ず明記します。 - 派遣先も追記
派遣整備士として働いていた場合は、派遣先(例:〇〇自動車ディーラー 整備工場へ派遣)と、そこで行った具体的な業務内容を職務経歴書で詳しく補足しましょう。 - アルバイト
正社員のキャリアに一貫性がない場合は省略しても良いですが、整備補助としてのアルバイト経験は「実務経験」としてカウントされる可能性があるため、関連性の高いものだけを記載するのが賢明です。
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4.【整備士の悩み解決編】転職回数・資格取得のためのブランクの戦略

自動車整備士のキャリアは、ディーラーでの専門性追求、民間工場での汎用性獲得など、職場を変えることでスキルアップするケースが多いため、転職回数が多くなりがちです。
また、資格取得のための休学や勉強期間もブランクとして生じやすいでしょう。
多すぎる転職回数(多職歴)は「すべて記載」を原則とする
職歴欄が足りないからといって、勝手に職歴を省略(割愛)することは推奨できません。採用担当者は、経歴に空白期間や不明瞭な点があると、正直さや信頼性を疑う可能性があるからです。
- 原則は「すべて記載」
雇用形態(正社員、契約社員、派遣など)に関わらず、すべての職歴を記載するのが原則です。
特に二級整備士の実務経験期間は、資格取得の根拠となるため省略してはいけません。 - 「多職歴」の戦略的説明
転職回数が多い場合は、それをネガティブな「継続性の欠如」ではなく、「幅広い車種に対応できる汎用性」や「スキルアップを目的とした計画的なステップアップ」として職務経歴書で説明しましょう。
たとえば、「輸入車ディーラーで診断技術を磨いた後、民間工場で国産車の応用力を獲得した」など、成長の物語として再定義します。
キャリアの空白期間(ブランク・休職)を「成長の準備期間」として説明する
ブランク期間は、採用担当者が最も気にする要素の一つです。しかし、正しく説明すれば不安要素ではなくなります。
- ブランクの理由を正直に記載
ブランク期間の開始と終了を明確にし、その理由を記載します。- (例1:資格取得)「〇年〇月~〇年〇月 二級自動車整備士資格取得のため、専門学校に通学」
- (例2:体調回復)「〇年〇月~〇年〇月 健康上の理由により休養(現在は業務に支障なし)」
- 「成長への意欲」を強調
ブランクを「空白」ではなく、「キャリアへの再投資期間」として語りましょう。
特に整備士の場合、EV/ADASなど最新技術を学ぶための期間であれば、それはむしろポジティブな評価につながります。
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5.職歴を「強み」に変えるための最終チェックリスト
履歴書が完成したら、単なる形式のチェックだけでなく、採用担当者の心に響く「戦略性」を持っているかを確認していきましょう。
二級・検査員などの資格取得と成果の「定量化」を意識した表現
整備士の職歴は、「何ができるか」を具体的に示すことが最も重要です。
- 資格を経験と紐づける
資格の取得(例:二級整備士、自動車検査員)は、職歴のすぐ後の「資格」欄に記載するだけでなく、職務経歴書でその資格を「どのように実務で活かしたか」を記述する必要があります。 - 成果の定量化
「正確に整備した」ではなく、「入庫台数〇台に対して、クレーム率を前年比10%削減した」「〇〇技術の習得により、作業時間を平均15%短縮した」のように、具体的な数値を用いて実績を示しましょう。
この「定量化」こそが、経験値を即戦力性として変換する強力な武器です。
【資格と経験の紐づけ】
自動車検査員資格を取得後、これを活かし車検ラインの最終責任者として業務に従事。整備後の再チェック体制を構築し、検査業務の正確性を担保。
【主な実績と成果(定量化)】
- 車検後の顧客クレームに対し、チェックシートを改善することで、クレーム率を前年比10%削減。
- EV車の診断技術(ADASを含む)を独習・習得し、関連作業時間を平均15%短縮。
- 月間平均約80台の入庫車両に対し、責任者として品質を維持。
採用担当者に響かないNG表現とチェックリスト
最後に、よくあるNG表現をチェックし、自信を持って応募できるようにしましょう。
NG表現・行動 | 修正の方向性 |
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退職理由で「給料が安かった」「人間関係が最悪だった」と書く(あるいは面接で話す) | 「〇〇という最新技術を扱う環境で、さらに専門性を高めたい」など、将来を見据えた前向きな理由に変換する。 |
職歴を勝手に省略し、意図的にブランクを隠す | すべて記載し、職務経歴書で「キャリアの転換期」「スキルアップのための準備期間」として正直かつ戦略的に説明する。 |
会社名や日付で、和暦と西暦が混在している | どちらかに統一し、特に年月日を正確に記載する。 |
非正規雇用(派遣、契約社員)での実務経験を一切記載しない | 整備士経験として関連性が高い場合は、雇用形態を明記し、そこで得たスキルを積極的にアピールする。 |
■転職活動を専門家がサポート!派遣から始める新しいキャリア
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6.職歴は「即戦力性」をアピール|戦略的な書き方で次のキャリアへ
自動車整備士の転職では、転職回数の多さやブランクが不安材料になりがちです。しかし、それらは多様な経験の証であり、計画的なスキルアップ期間と捉え直すことができます。
履歴書の職歴欄は、単なる過去の記録ではなく、入社後の貢献度、つまり「即戦力性」を伝えるための戦略的な設計図です。本記事で解説した法務ルールとアピール方法に基づき、これまでの経歴を強みとして自信を持って記載し、希望のキャリアを実現してください。
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