30代未経験から自動車整備士への転職は可能か?「もう遅い」と不安に思う方もいるかもしれませんが、結論、業界の深刻な人手不足により、30代はむしろ「若手」として歓迎されています。
この記事では、時間や収入のロスを最小限に抑え、未経験から国家資格を取得して安定したキャリアを築くための最も現実的な3つのルートと、将来性・給与について、キャリア形成の視点から詳しく解説します。
- 30代未経験でも自動車整備士への転職が「歓迎」される明確な理由
- 30代に最適な「働きながら資格を取る」現実的なルート
- 転職後の給与、体力、EV化による将来性など、リアルな不安への回答
1.【結論】30代未経験から自動車整備士への転職は「歓迎」されている

「未経験者可」の求人があっても、それは20代までの話ではないか。そう考える方も多いかもしれません。
しかし、自動車整備業界においては、30代は十分に「若手」として期待される存在です。
なぜ「30代は遅い」どころか「若手」として期待されるのか
自動車整備士の平均年齢は年々上昇し、現場では世代交代と若返りが急務となっています。
この背景から、多くの企業が年齢や経験よりも「意欲」や「定着して長く働いてくれること」を重視する傾向が強まっています。
30代の方々は、これまでの社会人経験で培ったビジネスマナー、コミュニケーション能力、責任感といった「ポータブルスキル(持ち運び可能なスキル)」を持っています。
整備技術は入社後の研修や実務で習得できますが、これらの社会人基礎力は一朝一夕では身につきません。

顧客対応やチーム内での連携が必須の整備現場において、30代の持つ「人間力」は、技術を学ぶ意欲と同じくらい高く評価される、揺るぎない武器となるのです。
根拠は深刻な「人手不足」と「整備士の高齢化」
整備業界が30代未経験者を歓迎する最大の理由は、その深刻な人手不足にあります。
若者の車離れや少子化の影響に加え、ベテラン整備士の高齢化・大量退職が目前に迫っています。
一方で、自動車の技術は高度化・複雑化しており、安全を守る整備士の需要は減るどころか、ますます高まっています。
この「需要と供給の大きなギャップ」を埋めるため、企業は未経験者を採用し、ゼロから育てる体制(資格取得支援制度など)を強化しています。
今このタイミングは、30代未経験者にとって、業界に参入する大きなチャンスと言えるでしょう。
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2.30代未経験者が知るべき3つの資格取得ルートを徹底比較
自動車整備士として働くためには、国家資格である「自動車整備士技能検定(1級・2級・3級・特殊)」が必要となります。
未経験から目指す場合、まずは「3級」または「2級」がターゲットとなりますが、資格取得には「受験資格」が必要です。その受験資格を得るためのルートは、大きく分けて3つあります。
ルート1:働きながら実務経験を積む(推奨)
最も現実的で、30代の方に推奨したいのがこのルートです。
未経験者OKの「認証工場」や「指定工場」に「整備補助」として就職し、給与を得ながら実務経験を積みます。 3級整備士の場合、中学卒業以上であれば1年以上の実務経験で受験資格が得られます。
メリット
- 収入の空白期間が一切発生しない
- 現場の生きた技術を日々学べる
- 企業の「資格取得支援制度」を利用できる可能性が高い
デメリット
- 働きながら勉強時間を確保する自己管理が必要
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ルート2:専門学校で学ぶ(2年制)
自動車整備士養成課程のある専門学校や大学校(国土交通大臣の指定する一種養成施設)に入学するルートです。
メリット
- 卒業と同時に「2級整備士」の受験資格(実技試験免除)が得られる。
- 体系的に整備技術を学べるため、知識の基盤がしっかりする。
デメリット
- 2年間の学費(約200万~300万円)と生活費が必要。
- その間、収入が途絶える(または大幅に減る)。
ルート3:公共職業訓練(ハロートレーニング)を活用する
ハローワークが窓口となる公共職業訓練(ハロートレ)にも、自動車整備士コースが設けられている場合があります。
メリット
- 受講料が無料(テキスト代などは実費)。
- 雇用保険の受給資格者は、失業手当を受けながら通える場合がある。
デメリット
- 希望のタイミングでコースが開講されているとは限らない。
- 訓練期間が比較的短い(半年~1年程度)ため、基礎的な内容が中心となる場合が多い。

30代の転職では、収入の安定が最優先事項です。
その点で、経済的なリスクを最小限に抑えられる「ルート1:働きながら実務経験を積む」が、最も堅実な選択肢となります。
■未経験から整備士を目指すなら、派遣という選択肢も
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3.【最重要】働きながら目指す「資格取得支援制度」とは

ルート1(働きながら目指す)を選択した場合、成功の鍵を握るのが企業の「資格取得支援制度」です。これは、整備士不足に悩む企業が、意欲ある人材を確保・育成するために設けているサポート制度です。
企業の支援制度を転職先選びの軸にする
30代未経験者の転職活動では、この制度の有無と内容を「企業選びの最も重要な軸」の一つに据えるべきです。
主な支援内容の例
- 資格取得に必要な講習費用や受験費用を会社が全額(または一部)負担する。
- 業務時間内に研修や勉強会を実施する。
- 専門学校の夜間コースへの通学費用を支援する。
- 資格取得後に「資格手当」を支給し、給与に反映する。

求人票に「資格取得支援制度あり」と記載があるか、面接で「30代未経験から資格を取得した実績」や「具体的な支援内容」を必ず確認しましょう。
国の支援「教育訓練給付制度」も選択肢に
もしルート2(専門学校)やルート3(職業訓練)を選ぶ場合、あるいは働きながら自分で学校に通う場合、国の「教育訓練給付制度」が利用できるか確認しましょう。
これは、働く人の主体的な能力開発を支援する雇用保険の制度です。一定の条件を満たせば、専門学校の学費などの一部がハローワークから支給されます。
キャリアチェンジには公的なサポートも用意されています。雇用保険制度の観点からも、こうした利用できる制度は、漏らさず活用することを強く推奨します。
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4.30代転職の現実|給料・体力・将来性の不安に答える

挑戦する意欲はあっても、現実的な「お金」「体力」「将来」の不安は尽きないものです。ここでは、30代転職のリアルな疑問にお答えします。
給料の現実:スタート時の年収と昇給モデル
未経験スタートの場合、初年度の年収は250万円~350万円程度が相場となることが多いでしょう。
これは、前職の給与より下がるケースも少なくありません。しかし、重要なのはその後の昇給モデルです。自動車整備士の給与は「資格」と「経験」に直結します。
3級整備士資格を取得し、さらに実務経験を積んで2級整備士、検査員といった上位資格を取得することで、着実に給与は上がっていきます。
また、特定のメーカーに強い、あるいはEV・ハイブリッド車に精通するなど、専門性を高めることで市場価値はさらに高まります。

スタート時の給与だけでなく、5年後、10年後にどのような給与体系・キャリアパスが用意されているかを重視しましょう。
体力的な不安:実際の現場ときつい点
自動車整備士は、確かに体力を使う仕事です。
重いタイヤや部品の運搬、中腰での作業、夏場の暑さ、冬場の寒さ、オイル汚れなどは「きつい点」として挙げられます。
しかし、30代で体力が落ちてきたと感じる方でも、過度に心配する必要はありません。
多くの現場では、リフトや工具の電動化、作業の効率化が進んでおり、昔ながらの「力仕事」一辺倒ではなくなっています。
重要なのは、日々の体調管理と、体に負担をかけない作業のコツ(力の入れ方や姿勢)を早く覚えることです。この点は、他のどのような職業でも同じと言えるでしょう。
将来性:EV化で仕事は無くならない?
「EV(電気自動車)が普及したら、ガソリン車の整備士の仕事は無くなるのでは?」という不安は、非常によく聞かれる質問です。
結論は、仕事はなくなりません。むしろ、新しい需要が生まれます。確かにEV化でエンジンオイル交換のような作業は減るでしょう。
しかし、EVにはEV特有の(そしてより高度な)整備が必要です。モーター、バッテリー、そして複雑な「電子制御システム」の診断・整備には、新しい知識と技術が求められます。
これからの整備士は、従来の機械工学の知識に加え、電子工学やITの知識も併せ持つ「ハイテク技術者」へと進化していきます。

30代から新しい技術を学ぶ意欲さえあれば、将来性は非常に明るいと言えます。
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派遣の自動車整備士として働く場合、時給1,500円~2,000円以上のスタートも珍しくありません。カラフルスタッフィング メカニックでは、大手ディーラーや優良整備工場など、待遇の良い派遣先を多数ご紹介しています。資格取得支援制度がある企業も多く、キャリアアップを目指しながら安定収入を得ることができます。
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5.未経験者がアピールすべき「強み」とキャリアパス

最後に、未経験だからこそアピールできる「強み」と、整備士になった後のキャリアについて解説します。
前職の経験(例:接客、営業)はどう活きるか
「前職は全くの異業種だから、アピールポイントがない」と考えるのは間違いです。
例えば、前職が営業職や販売・接客業だった場合、その「顧客対応能力」は整備士の現場で大きな強みとなります。
現代の整備士は、単に車を修理するだけでなく、「お客様に故障内容を分かりやすく説明する」「予防整備を提案する」といった接客・提案業務の比重が非常に高まっています。
また、事務職などで培った「PCスキル」も、見積書作成や顧客管理システムへの入力などで即戦力となります。

面接では、技術を学びたいという意欲に加え、前職の経験が「整備士の仕事のこの部分で活かせる」と具体的にアピールすることが重要です。
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整備士の先のキャリア(管理職、検査員、独立)
自動車整備士は、キャリアの終着点ではありません。そこから多様な道が広がっています。
キャリアパスの例
- スペシャリスト: 2級、1級と資格を極め、現場の技術リーダーを目指す。
- 自動車検査員: 車検の最終判断を行うことができる重要なポジション。
- フロントアドバイザー: お客様対応と整備士の橋渡し役を専門とする。
- 工場長(管理職): 現場のマネジメントや売上管理を担う。
- 独立開業: 自分の整備工場を持つ。
30代からのスタートでも、5年後、10年後を見据えた長期的なキャリアプランを描くことが可能です。
■まずは派遣で経験を積むという戦略
30代からのキャリアチェンジでは、いきなり正社員として飛び込むよりも、まず派遣で複数の職場を経験し、自分に合った環境を見極めるという選択肢もあります。カラフルスタッフィング メカニックなら、大手ディーラーから地域密着型の整備工場まで、幅広い職場をご紹介可能です。経験を積んだ後の正社員登用の道も開かれています。
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6.30代は現実的なルート選びが成功の鍵
30代未経験から自動車整備士への転職は、業界の人手不足という強い追い風を受け、十分に実現可能です。30代の社会人経験は、技術を学ぶ上で必ずプラスに働きます。
ただし、成功の鍵は「情熱」だけではなく、「現実的なルート選択」にあります。30代のキャリアチェンジでは、収入の安定と時間の効率化が何よりも重要です。
まずは「資格取得支援制度」が充実している企業を探し、給与を得ながら実務経験を積み、資格取得を目指すという道筋が、最も堅実で持続可能な戦略です。
この記事が、今後の具体的な行動計画のヒントとなれば幸いです。