自動車整備士としてキャリアアップを目指す際、「整備主任者試験」という国家試験があると思われがちですが、結論から言えば、そのような名称の試験は存在しません。
多くの人が「試験」と誤解しているのは、整備主任者に選任された後に受講が義務付けられている「研修」とその中の「修了テスト」のことです。
この記事では、「試験」の正体や、整備主任者の仕事内容、そして実際にこの重要な役職に就くための具体的なステップを分かりやすく解説します。
- 「整備主任者試験」という国家試験は存在しないこと
- 「試験」の正体である「整備主任者研修」の具体的な内容
- 整備主任者に選任されるための要件と、その後のキャリアパス
1.結論:「整備主任者試験」という国家試験は存在しない

「整備主任者試験」を検索される方は多いですが、実際にはそのような国家試験は存在しません。ここでは、なぜそう誤解されるのか、そして「試験」の正体について解説します。
読者の疑問:「試験」の正体は「研修」の修了テスト
整備士としてキャリアを積む上で「整備主任者」を目指す際、多くの方が「試験」の情報を探されます。
しかし、自動車整備士の国家試験(1級・2級など)とは別に、「整備主任者」という名前の国家試験は実施されていません。
では、なぜ「整備主任者 試験」と検索されるのでしょうか。
その「試験」の正体は、整備主任者に選任された後、毎年度受講が義務付けられている「整備主任者研修(法令研修)」の最後に行われる「筆記試験(修了テスト)」である可能性が非常に高いです。
これは、資格を取得するための「選抜試験」ではなく、最新の法令知識などを確認するための「確認テスト」という位置づけです。
「資格」ではなく「役職」であるという大きな違い
もう一つの重要なポイントは、「整備主任者」は「資格(License)」ではなく、特定の要件を満たした人が勤務先の事業場(認証工場や指定工場)から任命される「役職(Position)」であるという点です。
自動車整備士(1級・2級・3級)は国家資格ですが、整備主任者はその資格を持つ人が就くことができる、より責任のあるポジション、と考えると分かりやすいでしょう。
2.整備主任者とは?混同しやすい「整備管理者」「自動車検査員」との違い

整備主任者の役割を正しく理解するには、似た名称の「整備管理者」などとの違いを知ることが重要です。ここでは具体的な業務内容と、混同しやすい役職との違いを明確にします。
整備主任者の主な仕事内容(特定整備記録簿の管理など)
整備主任者は、自動車の分解整備(特定整備)が完了した後、その作業が保安基準に適合しているかどうかを最終的に検査・確認する責任者です。
主な仕事には、整備作業の管理・監督、特定整備記録簿の記載・管理などがあり、工場の整備品質を担保する重要な役割を担います。
整備主任者と「一般整備士」の違い(実務担当 vs 管理責任者)
一般的な整備士が「実務担当者」として実際の整備作業を行うのに対し、整備主任者はその整備が正しく行われたかをチェックし、法令遵守を確認する「整備の品質に関する責任者」という立場になります。
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整備士としての基本的な仕事内容を理解することは、整備主任者という役職の重要性を知る上でも役立ちます。以下の記事で詳しく解説しています。
整備主任者と「整備管理者」の違い(役割・根拠法)
「整備主任者」と非常によく似た名称に「整備管理者」がありますが、これらは全く異なる役職です。
整備主任者
認証工場や指定工場で、整備の「品質」を担保する役職。(根拠法:道路運送車両法)
整備管理者
一定台数以上の事業用自動車を持つ運送会社などで、車両の「安全な運行」を管理する役職。(根拠法:道路運送車両法)
検索結果でもこの二つは混同されがちですが、役割が異なります。
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認証工場と指定工場の違いを理解することで、整備主任者の役割をより深く理解できます。工場種別による違いを詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
整備主任者と「自動車検査員」との違い(キャリアパス上の関係)
「自動車検査員」は、整備主任者の次のステップとして目指すことが多いキャリアパスです。
整備主任者が「認証工場」「指定工場」の両方で必要な役職であるのに対し、自動車検査員は「指定工場(民間車検場)」において、車検の最終的な合否判定(みなし判定)を行うことができる、さらに上位の役職です。
3.整備主任者になるための具体的なステップ(選任要件)
整備主任者は「試験」でなるものではなく、「選任」される役職です。選任されるためには、以下の要件を満たす必要があります。
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2級自動車整備士の資格取得を目指す方向けに、具体的な取得ルートや年収への影響について詳しく解説した記事もご用意しています。
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4.「試験」と呼ばれる「整備主任者研修」の具体的な内容

多くの方が「整備主任者試験」と呼んでいるものの正体は、実は毎年度受講が義務付けられている研修とその修了テストです。
ここでは研修の具体的な内容や種類、そして修了テストの難易度について詳しく解説します。
受講は義務!研修の目的とは
整備主任者に選任されると、毎年度1回、地方運輸局長が行う「整備主任者研修」を受講することが義務付けられています。
この研修は、自動車に関する最新の法令や技術、保安基準の改正内容などを学び、知識をアップデートすることを目的としています。
研修の2つの種類:「法令研修」と「実習研修」
研修には大きく分けて2つの種類があります。
法令研修
全ての整備主任者が毎年度受講必須の研修です。
実習研修(技術研修)
事業場(工場)ごとに少なくとも1名以上が毎年度受講する必要があります。
修了テスト(筆記試験)の難易度や合格基準は?
読者が「試験」と認識している可能性が高いのが、この研修の最後に行われる筆記試験(修了テスト)です。
一部の情報によれば、このテストは「4択問題が10問程度」で、「概ね正答率80%以上(10問中8問正解)で合格(修了)」といった基準が設けられているようです。
これは落とすための試験ではなく、研修内容を理解できたかを確認するためのテストであり、難易度は研修をしっかり受けていれば対応可能なレベルと考えられます。
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5.整備主任者になるメリットとキャリアパス

整備主任者という役職に就くことは、単なる肩書きの変化ではなく、整備士としてのキャリアを大きく前進させる重要なステップです。ここでは具体的なメリットと、その先に広がるキャリアの可能性について解説します。
整備主任者になる3つのメリット(業務の幅・転職の有利さ)
整備主任者になることには、大きなメリットがあります。
- 業務の幅と責任
一般の整備士から一歩進み、整備の品質管理や監督といったマネジメント業務に携われます。 - 転職での有利さ
整備主任者の経験は、整備士としての高いスキルと管理能力の証明となり、転職市場での評価が高まります。 - キャリアアップの基盤
次に紹介する「自動車検査員」を目指すための事実上必須のステップとなります。(※検査員の受講要件として整備主任者としての実務経験が必要)
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整備主任者の経験を活かして転職を検討される方には、整備士向けの転職サイト活用がおすすめです。2025年最新の情報をまとめた記事もぜひご参照ください。
次の目標へ!「自動車検査員」へのステップアップ
整備主任者として経験を積んだ後の、王道とも言えるキャリアパスが「自動車検査員」です。
自動車検査員は、指定工場(民間車検場)で車検の最終ジャッジを行える、非常に需要の高い役職です。
整備主任者としての実務経験が受験資格の一つとなるため、整備主任者はその重要な通過点と言えます。
整備士業界の将来性(人手不足と新技術への対応)
自動車整備士業界は、深刻な人手不足や高齢化に直面しています。
その一方で、OBD検査(車載式故障診断装置)の導入や、ハイブリッド・電気自動車(EV)といった新技術への対応が求められており、高度な知識を持つ整備士の需要はむしろ高まっています。
整備主任者や自動車検査員は、こうした変化に対応し、現場の安全と品質を支える中核人材として、今後も重要な役割を担い続けます。
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自動車整備士業界の人手不足は深刻化していますが、これは裏を返せば、スキルを持つ整備主任者の需要が高まっているということです。業界の現状について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
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6.整備主任者は“資格”ではなく“役職”
「整備主任者試験」という名称の国家試験はありません。
整備主任者とは、1級または2級整備士の資格を持つ人が、勤務先から「選任」される重要な「役職」です。
「試験」と誤解されがちなのは、選任後に毎年受講が義務付けられる「研修」の最後に行われる「修了テスト」のことです。
整備主任者は、自動車検査員へと続くキャリアアップの重要なステップでもあります。
まずは前提となる整備士資格の取得や実務経験を積み、キャリアプランニングの一環として整備主任者を目指してみてはいかがでしょうか。