社会人が自動車整備士への転身を目指す際、課題となるのが時間と費用の捻出です。
しかし、現在の制度を正しく理解し活用することで、働きながら経済的負担を抑えて国家資格を取得することは可能です。
この記事では、雇用保険制度や労働関係法令、およびキャリアコンサルティングの知見に基づき、給付金を活用した学校選びや、効率的に資格を取得するための具体的なルートについて解説します。
- 働きながら資格を取る「夜間専門学校ルート」と「実務経験ルート」の時間的・経済的な違い
- 学費の最大70%が支給される「専門実践教育給付金」の仕組みと具体的な受給条件
- 社会人や既卒者の受け入れに積極的で、就職支援に強いおすすめの自動車整備士学校
1.社会人が整備士資格を取る2つのルート比較
整備士資格を取る2つのルート
専門学校(養成施設)に通うルート
国土交通省指定の学校に通う一般的なルートです。実技試験が免除され、最短期間(2年など)で効率的に資格取得を目指せます。
整備工場で働きながら
実務経験を積むルート
見習いとして働きながら目指すルートです。2級取得までに最短でも4年以上必要で、実技試験も免除されないため、仕事と勉強の両立が課題となります。
自動車整備士を目指す社会人にとって、どのルートを選択するかは、その後のキャリアと生活設計を左右する重要な決断です。
大きく分けて「養成施設(専門学校)に通う」方法と「実務経験を積んで受験する」方法の2つが存在しますが、それぞれにかかる時間や取得できる資格の確実性には違いがあります。
ここでは、時間という資源を有効に使う観点から、両者の違いを比較していきましょう。
専門学校(養成施設)に通うルート
国土交通省が指定する養成施設(専門学校)に通う方法は、2級自動車整備士資格を取得するための確実なルートです。通常、2年間の課程を修了することで、国家試験の実技試験が免除となります。

この「実技免除」は、試験対策の負担を減らすだけでなく、実務で必要となる体系的な技術を習得できる点で有利です。
また、近年の車両に必須となる故障診断機(スキャンツール)の使用法や、電気自動車(EV)などの技術についても、学校のカリキュラムを通じて学ぶことができます。
整備工場で働きながら実務経験を積むルート
整備工場に就職し、見習いとして働きながら資格取得を目指すルートも存在します。しかし、この方法は資格取得までに時間を要する傾向にあります。
3級整備士を受験するために1年以上の実務経験が必要であり、さらに2級を受験するには、3級取得後3年以上の実務経験が求められます。

つまり、2級取得までに最短でも4年以上の期間が必要となるのです。
また、実技試験が免除されないため、独学での対策が必要となり、仕事と勉強の両立が課題となる可能性があります。
結論:社会人が時間を重視する理由
キャリア形成の視点では、資格取得にかかる期間は「機会損失」として捉えられます。実務経験ルートでは2級取得までに4年以上かかりますが、専門学校ルートであれば最短2年で取得可能です。
この2年の差は、早期に有資格者として正規雇用され、安定した収入とキャリアを積み上げるための時間となります。

したがって、経済的な調整が可能であれば、専門学校ルートを選択することが、中長期的なキャリア戦略として効率的であると考えられます。
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未経験から自動車整備士への転職を目指す具体的なステップや、必要な資格取得の流れについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
2.ライフスタイルで選ぶ!昼間部と夜間部の違い
昼間部と夜間部の特徴比較
昼間部(朝〜夕方)
学習時間を十分に確保でき、学生生活も楽しめます。フルタイム就労は難しいため、学費や生活費の計画が必要です。
夜間部(夕方〜夜)
昼間に働きながら通学でき、収入を維持して資格取得を目指せます。学費が割安な場合も多く、社会人の転身に現実的な選択肢です。
専門学校を選択する場合、生活スタイルに合わせて「昼間部」か「夜間部」かを選ぶことになります。
仕事を辞めて学習に専念するか、仕事を続けながら通学するかによって、生活リズムや経済的な計画は異なります。
ここでは、それぞれの特徴とメリット・デメリットを整理し、状況に適した選択をするための判断材料を提供します。
短期集中型の昼間部
昼間部は、平日朝から夕方まで授業が行われる一般的なスタイルです。学習時間を十分に確保でき、クラスメートとの交流も盛んであるため、学生生活を楽しみながら資格取得を目指せます。
ただし、平日の日中は通学に充てるため、フルタイムでの就労は困難になるのが実情です。そのため、2年間の生活費と学費を賄えるだけの貯蓄があるか、あるいは奨学金などを活用する計画が必要となります。

早期に学習を完了し、就職活動に専念したい方に適しています。
■整備士の派遣という働き方もあります
カラフルスタッフィング メカニックは、車両整備士・メカニックに特化した人材派遣サービスです。専門のコーディネーターが希望に合ったお仕事をご提案、有名ディーラーでスキルや経験を積めるチャンスもあります!派遣として働きながら資格取得を目指すことも可能です。
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働きながら学べる夜間部
夜間部は、平日の夕方(例:18時20分開始など)から授業が行われる課程です。特徴は、昼間に仕事を続けながら通学できる点です。
これにより、収入を途絶えさせることなく、生活の安定を維持しながら資格取得を目指すことが可能となります。また、昼間部に比べて学費が割安に設定されているケースもあり、経済的なメリットも享受できます。

仕事後の通学は体力的な負担を伴いますが、キャリアを中断せずに転身を図りたい社会人にとっては、現実的な選択肢となるでしょう。
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夜間部で学びながら昼間は派遣整備士として働くという選択肢もあります。派遣整備士の収入や働き方の実態について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
3.学費負担を抑える!専門実践教育給付金活用ガイド

社会人が専門学校への進学を検討する際、懸念材料となるのが学費です。しかし、国は社会人の学び直し(リカレント教育)を支援しており、その中核となる制度が「専門実践教育給付金」です。
この制度を活用することで、学費の実質的な負担を軽減できる可能性があります。ここでは、制度の仕組みと具体的な活用イメージについて、法的な視点から解説します。
最大70%が支給される制度の仕組み
専門実践教育給付金は、厚生労働大臣が指定した専門的な講座を受講する場合に、教育訓練経費の一部がハローワークから支給される制度です。
受講中および修了後には経費の50%が支給され、さらに資格を取得し、修了後1年以内に被保険者として雇用された場合には、追加で20%が支給されます。

つまり、条件を満たせば教育訓練経費の最大70%が給付されることになり、経済的なハードルは下がります。
■派遣で収入を確保しながら学ぶ選択肢
カラフルスタッフィング メカニックでは、時間の融通が利く派遣求人も多数ご用意しています。夜間部に通いながら昼間は派遣整備士として働くことで、学費や生活費を稼ぎながら資格取得を目指せます。有名ディーラーでの実務経験を積むチャンスも豊富です。
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給付金の対象となる人の条件
この給付金を受給するためには、一定の要件を満たす必要があります。基本的には、雇用保険の被保険者である期間が通算で2年以上あることが条件です(初めて教育訓練給付を受給する場合)。
現在離職中の方でも、離職日の翌日から受講開始日までが1年以内であり、かつ過去の雇用保険加入期間の要件を満たしていれば対象となります。

対象かどうか不明な場合は、ハローワークで配布されている照会票を用いて確認することができます。
具体的な金額シミュレーション
金額シミュレーション(例)
2年間の学費総額
250万円指定講座を受講する場合の想定合計額です。
最大70%支給
175万円要件を満たした場合の給付額合計です。
本人の実質負担額
75万円
(年間負担:約37.5万円)
月々の収入や貯蓄で賄いやすい金額まで抑えられます。
例えば、2年間の学費総額が250万円の指定講座を受講すると仮定します。要件をすべて満たし、最大70%の支給を受けた場合、給付額は合計で175万円となります。
この場合、受講者本人の実質的な負担額は75万円まで減少することになります。年間で見れば約37.5万円程度の負担となり、これは月々の収入や貯蓄で賄える範囲と言えるでしょう。

このように、給付金を前提とした資金計画を立てることで、進学の実現性は高まるはずです。
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資格取得後の年収や、業種・年代別の収入の違いについて知りたい方は、こちらの記事で詳しく解説しています。将来の収入設計の参考にしてください。
4.社会人におすすめの自動車整備士専門学校(紹介)
学校選びにおいては、社会人の受け入れ実績や、働きながら通いやすいカリキュラムが組まれているかどうかが重要です。また、卒業後の就職先も学校によって特徴が異なります。
ここでは、社会人学生の支援に積極的で、特徴ある教育環境を提供している代表的な自動車整備士専門学校を紹介します。
専門学校 東京工科自動車大学校(TTC)

東京都内に位置するこの学校は、2級自動車整備士を目指せる夜間課程(2年制)を持つ存在です。
平日18時20分からの授業開始設定により、仕事を持つ社会人が通いやすい環境が整備されています。

在籍する学生には社会人や既卒者も多く、年齢層も多様であるため、高校新卒者ばかりの環境に馴染めるか不安な方でも安心して学ぶことができるでしょう。
トヨタ東京自動車大学校

トヨタ自動車直系の学校であり、最新のトヨタ車を教材として使用できる環境が整っています。AO入試において既卒者の受験も可能としており、社会人への門戸を開いています。

特徴は、トヨタ系ディーラーへの就職に強みを持っている点です。
特定のメーカーで技術を極めたいと考える方や、安定した企業への就職を重視する方にとって選択肢の一つとなります。
専門学校 読売自動車大学校

少人数制による手厚い指導を特徴としており、基礎から着実に技術を身につけたい方に適しています。
1級整備士を目指す4年制学科も設置されており、より高度な資格取得やリーダーシップを発揮できる人材を目指す場合のパスも用意されています。

独立系の学校であるため、特定のメーカーに縛られず、幅広い車種に触れられる点も特徴と言えます。
関東工業自動車大学校

広大なキャンパスを有し、実践的な実習環境が充実している学校です。
ドリフトやカスタマイズといった趣味性の高い分野にも力を入れており、車好きが高じて整備士を目指す社会人からの人気を集めています。

楽しみながら技術を学びたい、あるいは独自のスタイルで車の仕事に関わりたいと考える方にとって、モチベーションを維持しやすい環境と言えるでしょう。
日産横浜自動車大学校

日産発祥の地である横浜にキャンパスを構えるメーカー校です。社会人向けの特待生制度などを設けている場合があり、経済的な支援策が用意されています。
また、厚生労働省の教育訓練給付制度の認定講座を持つなど、社会人の学び直しを制度面からもサポートしています。

日産車を中心とした高度な技術習得が可能で、メーカー系ディーラーへの就職を目指す方に適しています。
■資格取得後のキャリアもサポート
カラフルスタッフィング メカニックは、資格取得後の就職先探しもサポートします。車両整備士・メカニックに特化した専門コーディネーターが、あなたのスキルや希望条件に合った有名ディーラーや整備工場をご紹介。派遣から正社員を目指す道もあります。
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5.よくある質問(FAQ)

社会人からの再進学には不安が伴います。ここでは、入学検討者から寄せられることの多い疑問について、一般的な傾向に基づき回答します。
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30代・40代未経験でも就職できますか?
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はい、就職は可能です。
自動車整備業界は慢性的な人材不足の状況にあり、有効求人倍率は全職種平均を上回っています。
年齢そのものよりも、資格取得への意欲や社会人としての基礎的なマナー、そして整備士として長く働きたいという熱意が評価される傾向にあります。

資格を取得することで、技術職としての安定したキャリアを築く道が開かれるでしょう。
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30代から整備士への転職を考えている方向けに、転職を成功させるための具体的な戦略やポイントをまとめた記事もご用意しています。
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数学や物理が苦手でも授業についていけますか?
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多くの専門学校では、基礎からの学習カリキュラムが組まれており、心配する必要はありません。
整備士試験で出題される計算問題はパターンが決まっており、授業を通じて対策を講じれば十分に解答できるようになります。

実務で必要な知識を中心とした学習が進められるため、学校での授業に真面目に取り組めば、文系出身者でも技術を習得できます。
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入試の難易度はどのくらいですか?
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専門学校の入試、特に社会人向けの選考においては、学力テストの結果よりも、志望動機や学習意欲、人物面を重視する傾向があります。
AO入試(アドミッション・オフィス入試)や面接選考を中心に行う学校も多く、筆記試験があったとしても基礎的な内容にとどまることが一般的です。

事前にオープンキャンパスに参加し、学校側とコミュニケーションを取っておくことが有効な対策となります。
6.資格取得で安定したキャリアを
社会人が自動車整備士を目指す場合、時間をかけて実務経験を積むよりも、専門学校の夜間課程などを利用して2年間で確実に国家資格を取得するルートが効率的です。
専門実践教育給付金などの公的支援を活用すれば、経済的な負担も軽減できます。
まずはハローワークで給付金受給資格を確認し、気になる学校の資料請求やオープンキャンパスへの参加を通じて、具体的な一歩を踏み出すことを推奨します。
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