トラックドライバーの仕事は「きつい」というイメージがあります。確かに長時間運転や不規則な勤務時間による、肉体的、精神的負担があるのが現状です。
ですが、近年ではドライバーの負担軽減のため、様々な施策が進められています。
本記事では、ドライバーの仕事がきついといわれる原因やその軽減策、ドライバーの仕事の魅力や始め方などを調査。ドライバーとしてキャリアアップを考えている方へ仕事のポイントを詳しく解説します。
- ドライバーの仕事がきついと言われる理由
- 仕事のきつさを軽減する働き方
- ドライバーの仕事の魅力とメリット
- ドライバーの仕事でステップアップするための具体的な方法
1.ドライバーの仕事の実態を知ろう

トラック運転手は「きつい仕事」というイメージが強く持たれています。しかし、その実態は働き方や会社によって大きく異なります。
ドライバーの仕事は、物流という社会の重要なインフラを支える専門職です。2024年4月からは労働時間の規制が強化され、働き方も大きく変わろうとしています。
かつての「きつい」というイメージは、徐々に改善されつつあるのが現状です。また、近年のeコマースの急成長により、物流業界の重要性は増す一方で、ドライバーの仕事の価値も高まっています。
2.ドライバーの仕事で感じる7つの「きつい」ポイント
ドライバーの仕事にまつわる「きつい」という印象について、現場で実際に指摘されている7つの課題を詳しく解説していきます。
長時間運転による身体的・精神的負担
トラック運転手の最大の課題は、長時間の運転による負担です。運転席での同じ姿勢の継続は、腰痛や肩こりなどの身体的な問題を引き起こしやすく、特に長距離運転では大きな課題となっています。
また、常に周囲の状況に気を配り続ける必要があるため、精神的な疲労も蓄積されやすい状況です。
しかし、最近では車両の改良により運転席の快適性が向上しています。また、定期的な休憩ポイントの設置など、負担を軽減するための対策も進められています。
不規則な勤務時間と生活リズム
ドライバーの仕事は、夜間配送や早朝配送など、一般的な勤務時間とは異なる働き方が求められることが多いのが実情です。
特に夜勤の場合、体内時計が乱れやすく、十分な睡眠を確保することが難しくなります。また、家族との時間も取りにくくなる傾向があります。
ただし、夜間勤務には深夜手当が付くため、収入面でのメリットもあります。また、日中の自由時間を効果的に活用できる点は、ライフスタイルによってはメリットとなる場合もあります。
残業時間の多さと労働時間の課題
統計によると、トラック運転手の年間労働時間は全産業平均と比べて300時間以上多いのが現状です。
令和4年の統計では、大型トラックの運転手は年間2,568時間、中小型トラックでも2,124時間と、長時間労働の傾向が顕著です。
長時間労働の原因のひとつが、荷待ちにより拘束時間が長くなる点が挙げられます。荷待ち時間を減らすことで、より労働環境の改善が期待できます。
2024年4月からは年間960時間という残業時間の上限規制が導入され、働き方の改善が期待されています。より計画的な配送ルートの設定や、効率的な業務管理が進められることが予想されます。
休日取得の難しさと生活バランス
物流業界の特性上、完全週休2日制を導入している企業は全体の20.5%にとどまっています。特に大型トラックの長距離ドライバーは、1週間程度の長期運行もあり、規則的な休暇の取得が難しい状況です。
しかし、労働基準法改正により、最低でも32時間以上の連続した休息時間を確保することが義務付けられ、より健全な労働環境への移行が進められています。
企業によっては、シフト制を導入することで柔軟な休暇取得を可能にする取り組みも始まっています。
給与面での不安と将来性
トラック運転手の給与水準は、全産業平均489万円と比較するとやや低めの傾向となっています。
- 大型トラック運転手…約463万円
- 小・中型トラック運転手…約431万円
しかし、業界全体で深刻化する人手不足への対応として、給与水準の見直しが進められています。また、経験や資格取得に応じたキャリアアップにより、収入増を図ることも可能です。
特に大型免許保持者は需要が高く、より高い待遇を得られる可能性が開かれています。
荷物の積み下ろし作業による肉体的負担
トラック運転手の業務には、貨物の積み込みや荷下ろしも含まれており、これが大きな肉体的負担となっています。
特に小型・中型トラックの場合、手作業での荷役が中心となるため、体力的な消耗が激しい傾向にあります。
ただし、大型トラックではフォークリフトやクレーンなどの機械を使用することが一般的で、直接的な肉体負担は軽減されています。
また、最近では荷役作業の機械化や自動化が進められ、作業負担の軽減が図られています。
配送時間の厳守とストレス
納品時間の厳守は物流業界において最重要課題の一つです。交通状況や天候による遅延リスクがある中で時間を守る必要があり、これが大きなストレス要因となっています。
特にルート配送では、複数の配送先を効率よく回る必要があり、計画的な運行が求められます。
しかし、GPS等のテクノロジーを活用した効率的なルート設計や、荷主との協力による配送時間の柔軟化など、ストレス軽減に向けた取り組みも進められています。
3.きつさを軽減する3つの選択肢
トラック運転手の仕事における「きつさ」は、働き方の選択によって大きく変わってきます。
ここでは、自分に合った働き方を見つけるための具体的な選択肢について解説していきます。
車両サイズで変わる仕事内容と負担
トラックは大きく分けて大型、中型、小型の3種類があり、それぞれに特徴的な仕事内容と負担があります。
運転の難易度は車両サイズによって異なるため、経験や適性に応じた選択が可能です。
大型トラック | 長距離輸送が中心で、運転技術は必要だが、荷役作業は機械化されており肉体的負担は比較的軽め |
中型・小型トラック | 近距離配送が中心で、手作業での荷役が多くなるが、毎日自宅に帰れるという利点がある |
配送エリアと勤務形態の選び方
配送エリアは大きく「長距離エリア」と「近距離エリア」に分けられ、それぞれの特徴を理解して選択することが重要です。
長距離エリア | ・宿泊を伴うことが多く、不規則な生活になりやすい ・深夜手当や宿泊手当で収入を増やせる可能性 |
近距離エリア | ・荷物の積み下ろしが多く肉体的負担が大きい ・定時に帰宅できて比較的規則正しい生活ができる ・固定ルートを担当することで、業務の予測が立ちやすく効率的に働ける |
それぞれのメリットデメリットを把握することで、自分に合った働き方が可能です。
会社選びのポイントと理想の労働条件
運送会社選びでは、給与体系や休日制度はもちろん、車両の整備状況や安全管理体制なども重要な判断材料となります。
特に、残業時間の上限規制への対応状況や、休憩施設の充実度、社員の健康管理への取り組みなどをチェックすることで、より働きやすい環境を見つけることができます。
また、配送する荷物の種類によっても労働条件は大きく異なるため、自分の希望する働き方に合った業種を選ぶことが重要です。

面接時には、雇用条件のほかに福利厚生面も確認しておくと安心です。
4.意外と知られていないドライバーの仕事の魅力

トラック運転手の仕事には、「きつい」というイメージの裏側に、実は多くの魅力が隠されています。ここでは、現場で働く人々が実感している仕事の良さについて紹介します。
自分のペースで働ける独立性
トラック運転手の大きな特徴は、一度出発すれば基本的に自分のペースで仕事を進められる点です。直接的な上司の指示を常に受けることなく、自己判断で業務を遂行できる自由度があります。
また、配送ルートや休憩のタイミングなども、ある程度は自分で調整可能です。この独立性の高さは、自己管理能力のある人にとって大きな魅力となり、仕事へのやりがいにもつながっています。
人間関係のストレスが少ない環境
オフィスワークと比較して、直接的な人間関係から生じるストレスが少ないのも特徴です。荷物の受け渡し時など、短時間の接客は必要ですが、長時間の密なコミュニケーションを要する機会は限られています。
また、運転中は自分の時間として活用でき、好きな音楽やラジオを聴きながら仕事ができます。このような環境は、対人関係に苦手意識を持つ人や、じっくりと考え事をしながら働きたい人に適しています。
スキルアップと収入アップの可能性
トラック運転手は、経験とスキルに応じてステップアップできる職種です。例えば、小型から始めて中型、大型へとライセンスをアップグレードすることで、より高収入を得る機会が広がります。
また、危険物取扱者などの資格取得により、専門性の高い輸送業務に従事することも可能です。さらに、長年の経験を活かして独立開業する道も開かれており、キャリアパスの選択肢は意外と豊富です。
5.トラック運転手としての段階的なキャリアプラン

トラック運転手としてのキャリアを築くには、段階的なアプローチが効果的です。ここでは、未経験者が無理なくステップアップしていくための具体的な方法を解説します。
未経験からのステップアップ方法
トラック運転手としてのキャリアは、まずは小型トラックや軽貨物車での配送からスタートすることをお勧めします。
これにより、大型車両の運転に必要な基本的な技術や、配送業務の基礎知識を着実に身につけられます。
また、近距離配送から始めることで、日々の業務の流れや顧客対応、道路事情などを学びながら、徐々に長距離配送にチャレンジできます。
このような段階的なアプローチにより、無理のないペースでスキルアップを図ることが可能です。
必要な資格と取得のタイミング
トラック運転手として働くために必要な資格は、車両の大きさによって異なります。
小型トラックであれば普通自動車免許で運転可能ですが、中型・大型トラックの場合は、それぞれに対応する運転免許が必要となります。
これらの免許は、実務経験を積みながら段階的に取得していくことが一般的です。また、フォークリフトの資格や危険物取扱者など、専門的な資格を追加で取得することで、より幅広い業務に対応できるようになり、キャリアの可能性も広がります。
キャリアプランに合わせて計画的に資格取得を進めることが重要です。
理想的な働き方を実現するためのロードマップ
理想的な働き方を実現するには、3~5年程度の中期的な計画を立てることが効果的です。
最初の1年は基本的な運転技術と業務知識の習得にあて、2年目以降は各種資格の取得と専門性の向上を目指します。また、この間に様々な配送ルートや貨物の種類を経験することで、自分に合った働き方を見極められます。
さらに、安全運転の実績を積み重ねることで、より条件の良い仕事や、責任のある立場へのステップアップも可能になります。
6.仕事内容を知って自分に合った働き方を見つけよう
トラック運転手の仕事は、確かに「きつい」面がありますが、車両の種類、配送エリア、会社の特徴によって、働き方は大きく異なります。
重要なのは、これらの違いを理解した上で、自分に合った選択をすることです。近年の労働環境改善の流れや、技術革新による業務効率化により、かつての「きつい」というイメージは着実に変化しつつあります。
また、独立性の高さや、明確なキャリアパスが存在することは、この職業の大きな魅力と言えるでしょう。トラック運転手として成功するためには、段階的なスキルアップと、自分に合った働き方の発見が鍵となります。
物流業界の重要性が増す中、やりがいを持って長く続けられる職業として、トラック運転手という選択肢を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。