「二種免許を取りたいけれど、自分でお金を用意するのは難しい」と感じている方は少なくありません。実は、タクシー業界では二種免許の取得費用を会社が全額負担する制度がほぼ業界標準となっており、自己負担ゼロでキャリアをスタートできるケースが多くあります。
ただし、会社負担には「貸与型(在籍縛りあり)」と「完全負担型(縛りなし)」の2種類があり、条件を確認せずに入社すると、早期退職時に思わぬ費用返還を求められるケースもあります。
この記事では、制度の仕組みから返還リスクの回避方法、縛りなし求人の選び方まで整理します。
- タクシー会社が二種免許費用を全額負担する理由と背景
- 「貸与型」と「完全負担型」2つのパターンの違いと注意すべきリスク
- 入社前に確認すべきチェックポイントと、縛りなし求人の見極め方
1.タクシーの二種免許取得費用は会社負担が一般的

以前は、タクシードライバーになるために自分で二種免許を取得するのが一般的でした。しかし現在は、未経験者でも「入社後に会社費用で免許取得できる」という制度が広く普及しており、多くの求人で当然の条件として提示されています。
会社が費用を全額負担する理由
タクシー業界では、慢性的なドライバー不足が深刻な課題となっています。加えて、平均年齢は56.8歳と高く、今後、定年退職を迎えるドライバーが増えることも見込まれます。
内閣府の規制改革推進会議の資料によると、全国のタクシー運転者数は2010年からの12年間で約40%・約14万9,000人減少していおり、令和7年の有効求人倍率は全産業平均の約3倍にあたる3.01倍に達しています。
こうした極端な売り手市場の中で、各タクシー会社は未経験者を確保するための採用競争を繰り広げています。二種免許の取得費用(一般的に20万〜30万円程度)を会社が負担することは、人材を獲得するための投資として、業界標準となりつつあるのです。
出典:内閣府「規制改革推進会議 タクシー運転手の現状とタクシーに関する事故データ」、厚生労働省「ハイヤー・タクシー運転者の仕事を知ってみよう」「一般職業紹介状況」
【比較表】自分で取得する場合の費用相場
会社負担制度を利用しない場合、二種免許の取得にはどの程度の費用がかかるのでしょうか。取得方法によって費用と期間が異なります。
| 取得方法 | 費用の目安 | 取得期間の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 通学(教習所) | 約20万〜30万円 | 約1〜3週間 | 最も一般的。自分のペースで通える |
| 合宿免許 | 約18万〜25万円 | 約7〜10日間 | 短期集中。宿泊費込みの場合あり |
| 一発試験(試験場直接受験) | 9,800円 ※合格後に別途「取得時講習」受講料30,300円 | 受験回数による | 費用は最安。合格率は低く複数回受験が一般的 |
なお、自費で教習所に通って二種免許を取得する場合には、厚生労働省の教育訓練給付制度(一般教育訓練)を利用できる場合があります。受給要件の詳細はお住まいのハローワークでご確認ください。

【キャリアアドバイザーのワンポイン】
教習を受けず試験場で直接受験する「一発試験」は難易度が高く、再受験のたびに受験料と試験車使用料が重複してかかります。
「何度も挑戦しているうちに結局高くついた」といった話しも少なくありません。
出典:警視庁「大型二種・中型二種・普通二種免許試験(直接試験場で受験される方)」、厚生労働省「教育訓練給付制度」
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二種免許の取得には年齢や運転経験、視力などいくつかの条件があります。受験資格の詳細や、教習所・合宿免許・一発試験それぞれの特徴、取得までにかかる期間についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
2.会社負担の制度は2パターン|貸与型と完全負担型

「会社が費用を負担してくれる」といっても、すべての求人が同じ条件というわけではありません。実際には大きく2つのパターンがあり、どちらに該当するかによって退職時のリスクが大きく変わります。入社前に確認しておくことが重要です。
貸与型:一定期間の在籍で返済が免除される
多くのタクシー会社で採用されている仕組みです。入社時に会社と「金銭消費貸借契約」を締結し、免許取得費用を「会社からの貸付金」として扱います。一定期間(多くの場合2〜3年)以上勤務した場合、その返済が全額免除される、という仕組みです。
■勤続年数による免除の例(各社の条件による)
- 3年以上勤務した場合:全額免除
- 2年以上3年未満の場合:貸付総額の50%を返還
- 1年未満の場合:全額返還
在籍期間の縛りを下回って退職した場合、未返済の金額を一括で支払う必要が生じます。

【キャリアアドバイザーのワンポイン】
「貸付契約」と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、銀行や消費者金融からの借入とは異なり「信用情報がブラックになる」といった心配はありません。
完全負担型:縛りなし・返還不要
一部のタクシー会社では、在籍期間の縛りや返還義務を一切設けない「完全会社負担」を打ち出しています。この場合、たとえ入社から数ヶ月で退職したとしても、費用の返還を求められることはありません。
ただし、採用競争の激しい首都圏の一部大手タクシー会社などでのみ見られる条件のため、該当する求人を見つけるのは難易度が高いといえます。
■貸与型か完全負担型かを見極める方法
求人票に「全額会社負担」と記載されているだけでは、貸与型なのか完全負担型なのかを判断できません。企業HPなどを調べても詳細が分からない場合は、応募前に会社へ確認しておきましょう。
とはいえ、「免許取得費用に返還義務はありますか?」と直接聞くのは、なかなかハードルが高いものです。これから選考を受ける企業だけに、できるだけ心証を悪くしたくないと考える方も多いでしょう。
応募前に自分から確認するのが気まずい場合は、ドライバー専門の転職サイト「カラフルエージェント」にご相談ください。専任のエージェントが企業に確認し、免許取得支援の条件を確認してくれます。
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3.在籍縛りと早期退職リスク|返還請求は合法?

貸与型の制度を利用する場合、在籍期間を満たさずに退職すると費用の返還を求められる可能性があります。
「違約金の禁止(労働基準法第16条)」には当たらないの?
労働基準法第16条では、「労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定められています。これは、「○年以内に辞めたら罰金を支払え」という契約は無効であることを意味しています。

じゃあ、早期退職で二種免許費用の一部を払えって言うのも無効なんじゃないの?
こう考えて不安に感じる方も多いでしょう。実は、タクシー会社が採用している返金制度は、金銭消費貸借契約(貸付契約)に基づく返済免除条件という仕組みであり、違約金とは性質が異なります。具体的には、以下のような流れです。
- 入社時に「免許取得支援」として、取得に必要な費用を借りる
- 一定期間以上勤務した実績をもって、貸付金の返済が免除してもらえる
- 免除される前に退職した場合は、貸付金の返済が必要になる
早期退職の罰金として徴収するわけではないため、原則として労働基準法第16条違反にはあたりません。実際に、「問題ない」と示された裁判例もあります。
参照:e-Gov 法令検索「労働基準法」
入社前に確認すべき4つのチェックポイント
入社後のトラブルを防ぐために、雇用契約書または労働条件通知書および金銭消費貸借契約書などで以下の4点を確認してください。
- 返還対象となる費用の範囲:免許取得費用のみか、研修費用も含むか
- 返還義務が発生する在籍期間の条件:「〇年未満」の具体的な年数
- 返還額の計算方法:全額返還か、勤続月数に応じた按分か
- 返還が免除されるケース:会社都合退職(解雇)の場合は免除されるか
これらが書面で明示されていない場合は、入社前に会社へ確認を求めてください。口頭での説明のみに頼ると、後々のトラブルにつながりやすい点にご注意ください。
応募者本人が会社へ直接聞きづらいと感じる場合は、転職エージェントを介して確認してもらう方法もあります。
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入社前に確認すべきポイントとして、実際に未経験からドライバーへ転職する際にはどのような準備や心構えが必要なのでしょうか。応募から内定までの流れや、企業選びで押さえておきたい注意点について、こちらの記事で詳しく解説しています。
4.会社負担でタクシー二種免許を取得する流れ

二種免許を取得するまでには、いくつかのステップがあります。それぞれにかかる期間や内容を把握しておくと、入社後のイメージがつかみやすくなります。
受験資格・取得期間と難易度の実態
一般的なタクシー会社の養成プログラムでは、入社後に会社が指定する教習所などで二種免許の取得を目指します。入社から乗務開始までにかかる期間の目安は以下の通りです。
| ステップ | 内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 教習(免許取得) | 指定教習所または合宿での技能・学科教習 | 7〜20日程度 |
| 乗務前研修(地理・法令・接客) | タクシーセンターでの法令講習、会社独自の地理研修など | 1〜2ヶ月程度 |
| 同乗研修・デビュー | 先輩乗務員との同乗練習を経て独り立ち | 数日〜1週間程度 |
なお、普通二種免許を受験するには、以下の条件を満たす必要があります。
- 21歳以上であること(受験資格特例教習を修了した場合は、19歳以上・当該免許取得から1年以上)
- 普通・中型・準中型・大型・大型特殊いずれかの免許を取得してから通算3年以上であること
二種免許の学科試験は、旅客運送に関する法規知識や応急救護なども含まれ、一種免許の学科試験と比べて問われる範囲が広くなっています。合格率は受験者によって差がありますが、教習所のカリキュラムをしっかりこなせば十分対応できる難易度とされています。
教習・研修期間中の収入
多くのタクシー会社では、二種免許を取得するための教習期間(7〜20日程度)や、免許取得後の乗務前研修期間中(最大1〜2ヶ月程度)も、「保証日給」として給与が支払われます。
一般的な保証日給の目安:
- 教習(免許取得)期間中:日給10,000円前後
- 乗務前研修期間中:日給12,000〜16,000円前後
入社日から正社員として雇用契約を結ぶ企業が多く、社会保険(健康保険・厚生年金)も入社初日から適用されます。教習中も生活費の心配をせずに研修に専念できる点は、会社負担で免許を取得する大きなメリットです。
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実際に乗務が始まった際の給与体系がどのような仕組みになるのか気になる方も多いでしょう。こちらの記事では、固定給や歩合給、賞与の仕組みなど、タクシードライバーの代表的な4つの給与体系について詳しく解説ています。
一部地域限定:二種免許以外に必要な試験(地理試験は廃止)
東京・神奈川・大阪などの一部地域では、二種免許に加えて指定機関での講習・手続きが必要になります。
この地域では、以前は「地理試験」の合格が乗務の前提条件でした。しかし、2024年2月29日に地理試験制度が廃止されたため、現在はタクシーセンターが実施する「法令・接客サービス」などの講習を受講・修了することが、乗務の前提条件となっています。
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5.縛りなし・完全会社負担の求人を見極めるポイント

在籍期間にかかわらず返還義務が生じない「完全会社負担(返還不要)」の制度を採用している会社もあります。ただし、求人票の表現だけでは、返還義務の有無を判断しにくいケースも少なくありません。以下のポイントを確認し、制度の内容を見極めましょう。
- 求人票の「免許取得費用全額会社負担」の文言だけで判断しない
「全額会社負担」と記載されていても、貸与型で在籍縛りが設けられている場合があります。「退職時の返還義務の有無」を必ず個別に確認してください。 - 雇用契約書・労働条件通知書に「返還不要」が明記されているか確認
口頭での説明では後から証明が難しくなります。入社前に書面で返還免除の条件が明示されていることを確認することが重要です。
■縛りなし求人を探すなら専門エージェントへの相談がおすすめ
数多くある求人の中から「縛りなし・完全会社負担」の条件で募集している会社を自分で一社ずつ調べて見つけ出すのは簡単ではありません。
そんな方は、タクシー専門の転職エージェント「カラフルエージェント」への相談がおすすめです。返還条件や日給保証の詳細を、入社前に無料で確認しながら、自分に合った求人を効率よく比較検討できます。
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6.よくある質問

ここでは、二種免許を取得してタクシー運転手への転職を目指す方から、よく寄せられる疑問をまとめました。
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普通免許しか持っていなくても応募できますか?
-
多くのタクシー会社では、普通自動車第一種免許を持っていれば応募可能です。
二種免許は入社後に会社の費用で取得できます。
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運転免許を全く持っていない場合でも応募できますか?
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多くのタクシー会社では、入社時点で「普通自動車第一種免許」を持っていることが応募条件となっています。
免許を持っていない場合は、まず一種免許を取得してから応募するのが基本です。ただし、一種免許の取得からサポートする制度を設けている会社も稀ですが存在するので、こうした求人を探してみましょう。
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在籍縛りの期間内に辞めると、必ず費用を全額返還しなければなりませんか?
-
返還額の計算方法は会社によって異なります。
在籍月数に応じて減額される会社もあれば、一定期間以内は全額返還とする会社もあります。また、会社都合による退職(解雇など)の場合は返還が免除されるケースが一般的です。
7.タクシーの二種免許を会社負担で取得する際の注意点
タクシー業界では、深刻なドライバー不足を背景に、二種免許の取得費用を会社が全額負担する制度が広く導入されています。自己資金がなくても、未経験からタクシードライバーを目指せる環境が整っているのは大きなメリットです。
ただし、こうした制度には「貸与型(在籍縛りあり)」と「完全負担型(縛りなし)」の2種類があります。貸与型の場合、早期退職すると免許取得費用の返還を求められる可能性があるため、応募・入社前に雇用契約書などで返還条件を必ず確認しましょう。