「自動車整備士になりたいけれど、学歴が不安だ」「中卒や高校中退からでも目指せるだろうか」と悩むことがあるかもしれません。
自動車整備士は、現代社会のインフラである自動車の安全を守る、非常に専門性が高く「手(技術)に職」をつけられる仕事です。
そして今、この業界は深刻な人手不足に直面しており、過去の学歴よりも、これからの意欲と資格(スキル)を重視する傾向が強まっています。
この記事では、自動車整備士になるための「学歴と資格取得ルートの関係性」について、中卒・高卒・大卒など学歴別に、わかりやすく解説します。
- 自動車整備士になるのに学歴が「必須ではない」理由
- 中卒・高卒・大卒など「学歴別」の具体的な資格取得ルート
- 専門学校と実務経験のメリット・デメリット、業界の将来性
1.自動車整備士になるのに学歴は必要?

結論からいうと自動車整備士になるために、特定の学歴(例:大卒など)は必須ではありません。
中卒や高校中退の方でも、自動車整備士として活躍する道は明確に開かれています。
ただし、最終学歴は「国家資格である自動車整備士資格」を取得するためのルール(必要な実務経験の年数など)に影響します。
ここを正しく理解することが、キャリアプランを立てる上で重要です。
学歴は「必須ではない」が「ルートを決定する」
自動車整備士の資格(1級・2級・3級)には、国土交通省が定める「受験資格」があります。
この受験資格は、大きく分けて2つのルートがあります。
- 養成施設(専門学校など)を卒業するルート
- 認証工場などで実務経験を積むルート
例えば、自動車整備の専門学校(養成施設)を卒業すれば、実務経験がなくても2級整備士の受験資格が得られたり、実技試験が免除されたりします。
一方で、中学卒業後にすぐに働き始めた場合は、一定期間の実務経験を積むことで受験資格を得ることになります。
つまり、学歴は「整備士になれる・なれない」を決めるものではなく、「どの道を通って資格を取得するか」というスタート地点とルールを決めるものだと捉えることができます。
データが示す「学歴不問」の現実と人手不足の背景
現在、自動車整備業界は、若年層の車離れや既存整備士の高齢化により、深刻な人手不足に陥っています。
有効求人倍率も非常に高い水準で推移しており、企業側は「学歴」を問う余裕がないほど、強い意欲を持つ人材を求めているのが実情です。
むしろ「中卒だから」「高卒だから」と臆することなく、「人手不足の今こそ、未経験から専門職に挑戦しやすい状況だ」と前向きに捉えることが大切です。
▼あわせて読みたい
自動車整備士の人手不足がどれほど深刻化しているのか、具体的なデータと背景について、こちらの記事で詳しく解説しています。
2.【学歴別】自動車整備士の資格取得ルートと必要な実務経験

自動車整備士の国家資格は、主に「1級」「2級」「3級」に分かれています。
まずは実務の基本となる3級、そして整備工場の中心的な戦力となる「2級」の取得を目指すのが一般的です。
ここでは、代表的な「2級ガソリン自動車整備士」の資格取得に必要な実務経験を、学歴別に見ていきましょう。
国家資格(1級・2級・3級)の概要
- 3級:基本的な整備作業(オイル交換、タイヤ交換、点検)を行うための資格。整備の入り口です。
- 2級:分解整備(エンジンやブレーキなど重要部品の整備)や診断、車検の「整備主任者」として業務を行うための資格。事実上、これが一人前の整備士としての標準資格となります。
- 1級:2級の上位資格。より高度な診断技術や環境保全、安全管理、アドバイザー業務まで行うスペシャリストです。
※以下は、まず3級を取得し、その後2級を受験する場合の標準的な流れです。
ケース1:中学校卒業(中卒)の場合
中学卒業後、すぐに認証工場などで整備補助として働き始めた場合、3級の受験資格を得るまでに「3年」の実務経験が必要です。
3級合格後、さらに「3年」の実務経験を積むと、2級の受験資格が得られます。(※3級取得後の実務経験は、通常4年のところ、3年に短縮されます)
ケース2:高等学校卒業(普通科など)の場合
普通科など、自動車関連以外の高校を卒業した場合、3級の受験資格を得るまでに「2年」の実務経験が必要です。
3級合格後、さらに「3年」の実務経験で2級の受験資格が得られます。
ケース3:高等学校卒業(自動車科など)の場合
自動車科や機械科など、関連する学科の高校を卒業している場合、優遇措置があります。3級の受験資格に必要な実務経験は「6ヶ月」に短縮されます。
3級合格後、さらに「2年」の実務経験で2級の受験資格が得られます。
ケース4:大学・短大・専門学校卒業(自動車関連以外)の場合
自動車関連以外の学部・学科を卒業した場合、高等学校(普通科)卒と同じ扱いになります。
3級の受験資格には「2年」、3級合格後に2級を受験するにはさらに「3年」の実務経験が必要です。
▼あわせて読みたい
自動車整備士資格の全体像や、各級の詳細について知りたい方は、こちらの完全ガイドをご覧ください。
3.中卒・高校中退から自動車整備士を目指す具体的な3つの道筋
学歴に不安がある場合でも、整備士になる道は一つではありません。ご自身の状況や考え方に合わせて、主に3つの道筋が考えられます。
方法1:認証工場などで実務経験を積む(働きながら目指す)
最も現実的で、経済的な負担が少ない方法です。
いわゆる「見習い」として整備工場に就職し、整備補助として働きながら給与を得て、必要な実務経験年数をクリアして受験資格を得るルートです。
- メリット:経済的な負担がない(給与がもらえる)。現場で即戦力となる技術が身につく。
- デメリット:資格取得までに時間がかかる(中卒の場合、2級取得まで最短でも6年以上)。働きながら勉強する努力が必要。
方法2:高等専修学校や職業訓練校に通う
経済的な事情がある場合でも、公的な支援を受けながら学ぶ道があります。
- 高等専修学校(自動車科など):中学卒業者を対象とした学校です。
卒業すると「高等学校卒業(自動車科)」に近い扱いとなり、実務経験期間が短縮されます。 - 職業訓練校(ハロートレーニング):ハローワークが窓口となる公的な訓練制度です。
自動車整備士コースがある場合、テキスト代などを除き、授業料無料で専門知識を学べる可能性があります。
方法3:高卒認定(高等学校卒業程度認定試験)を取得し「自動車大学校(専門学校)」を目指す
これは、キャリアの選択肢を大きく広げるための「投資」的なルートです。まず「高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)」を取得し、高校卒業資格を得ます。
その資格をもって、国土交通省が認定する「自動車大学校」や「自動車整備専門学校(養成施設)」に入学します。
ここを卒業すれば、実務経験ゼロで2級整備士の受験資格が得られ、さらに実技試験が免除されるという最大のメリットがあります。
▼あわせて読みたい
働きながら自動車整備士資格を取得する方法について、さらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
■学歴不問で働ける派遣という選択肢
学歴に不安がある方でも、派遣という働き方なら、多くのチャンスがあります。カラフルスタッフィング メカニックでは、学歴よりも意欲と向上心を重視する職場を多数ご紹介しています。専門のコーディネーターが、あなたの状況に合わせて、実務経験を積める認証工場や、資格取得支援制度が充実した職場を見つけます。派遣なら、働きながらスキルを身につけ、着実にキャリアアップを目指せます。
▼カラフルスタッフィング メカニックへのお問い合わせはこちら
4.専門学校(養成施設) vs 実務経験 ルート徹底比較

「専門学校に行く」のと「現場で実務経験を積む」のは、どちらが良いのでしょうか。
それぞれのメリット・デメリットを比較します。
メリット・デメリット比較表(費用・期間・難易度)
「専門学校ルート」が有利な点(実技試験免除など)
専門学校ルートの最大のメリットは「時間の短縮」と「実技試験の免除」です。
特に国家資格の実技試験が免除されるのは、精神的にも時間的にも大きなアドバンテージとなります。
体系的な知識を集中して学ぶため、その後のキャリアにも役立ちます。
「実務経験ルート」が向いている人
「すぐにでも働きたい」「学費を払う経済的余裕がない」「机の上での勉強より、現場で体を動かして覚えたい」という方には、実務経験ルートが向いています。
時間はかかりますが、経済的な負担なく、着実に現場のスキルを身につけながらステップアップできるのが魅力です。
▼あわせて読みたい
未経験から自動車整備士への転職を目指す方には、こちらの完全ガイドが参考になります。具体的なステップと成功のポイントを解説しています。
■派遣で実務経験を積みながら資格取得
専門学校に通う経済的余裕がない方には、派遣で働きながら実務経験を積むルートがおすすめです。カラフルスタッフィング メカニックなら、資格取得支援制度のある職場や、未経験から丁寧に指導してくれる整備工場を紹介できます。給与をもらいながら、国家資格取得に必要な実務経験を積むことができ、経済的な負担なくキャリアアップを目指せます。
▼カラフルスタッフィング メカニックへのお問い合わせはこちら
5.学歴よりも重要?データで見る自動車整備士の「将来性」

キャリアを考える上で、「将来性」は学歴以上に重要な要素です。自動車整備士の将来性は明るいと言えます。
深刻な人手不足(高い有効求人倍率)は「好機」
前述の通り、整備士業界は深刻な人手不足です。
これは、見方を変えれば「就職・転職がしやすい」「意欲があれば採用されやすい」という大きな可能性があることを意味します。
学歴でフィルターをかけている余裕はなく、資格取得を目指す意欲的な人材は歓迎されます。
整備士の給与・年収は上昇傾向
人手不足を解消するため、各企業は待遇改善(給与アップや福利厚生の充実)に力を入れています。
かつては「給与が低い」と言われることもありましたが、近年は需要の高まりとともに、専門職としての価値が見直され、給与水準は上昇傾向にあります。
▼あわせて読みたい
自動車整備士の年収について、学歴別・年代別の詳細データや、年収アップの具体的な方法を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
新技術(EV・ADAS)が求めるスキルとキャリアパス
「EV(電気自動車)が普及したら整備士の仕事はなくなる」というのは誤解です。
確かにエンジンオイルの交換などは減るかもしれませんが、EVにはEV特有の高度な電子制御システムがあり、その整備には新たな専門知識(高電圧の取り扱いなど)が必須です。
また、ADAS(先進運転支援システム)のセンサー調整など、整備士の仕事はより高度で専門的になっています。
こうした新技術を学ぶ意欲さえあれば、学歴に関係なく、新時代のスペシャリストとして長期的に活躍することが可能です。
■派遣で新技術を学べる職場へ
EVやADASなど新技術を学びたい方には、派遣という働き方が最適です。カラフルスタッフィング メカニックでは、最新技術を扱う大手ディーラーや、先進的な整備工場の求人を豊富に取り揃えています。派遣なら、複数の職場で様々な車種や技術に触れることができ、学歴に関係なく、新時代のスペシャリストとして市場価値を高めることができます。
▼カラフルスタッフィング メカニックへのお問い合わせはこちら
6.学歴は出発点。計画的な資格取得で将来性あるキャリアを築こう
自動車整備士になるために、学歴は必須条件ではありません。しかし、ご自身の最終学歴が、資格取得までの「ルール」や「ルート」を決める重要な要素であることは事実です。
大切なのは、「自分は中卒だから」「高卒だから」と諦めることではありません。ご自身の「出発点」を正確に把握し、そこから「専門学校ルート」と「実務経験ルート」のどちらが自分に合っているかを戦略的に選ぶことです。
深刻な人手不足と技術革新の波が押し寄せる今、業界は過去の学歴よりも、未来のスキルを身につけようとする意欲を求めています。
この記事が、将来性ある専門職への第一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。