自動車整備士という専門職へのキャリアは、正しい知識から始まります。
特に未経験から資格取得を目指す場合、最初のステップである「実務経験」の積み方を間違えてしまうと、貴重な時間が無駄になってしまう可能性があります。
制度を正しく理解し、「正しい場所」で第一歩を踏み出すことこそが、専門家への最短ルートです。
この記事では、自動車整備士の受験資格として認められる「実務経験」とは何か、どこで積むべきなのか、そしてよくある疑問について、分かりやすく解説します。
- 自動車整備士の受験資格として認められる「実務経験」の正しい積み方
- ガソリンスタンドやアルバイトでの勤務が実務経験に含まれるかという疑問への回答
- 未経験や学歴不問からでも整備士を目指せる理由と具体的なルート
1.自動車整備士の「実務経験」とは?キャリアの第一歩を踏み出すための原則

自動車整備士の資格(3級)を受験するには、整備工場での「実務経験」が必要になる場合があります。
この「実務経験」には、法律に基づいた定義があります。
結論:認められるのは「認証工場」または「指定工場」のみ
結論からいうと、自動車整備士の受験資格として公式に認められる実務経験は、国土交通省から認可を受けた「認証工場」または「指定工場」での整備作業経験に限られます。
キャリアプランニングにおいて、目標達成までのルートを明確にすることはとても重要です。
「どこでもいいから車に触れれば経験になる」というわけではない、という点をまず押さえてください。
なぜ「認証工場」「指定工場」でなければならないのか?
自動車の分解整備(ブレーキやエンジンなど、走行の安全に直結する重要な部分の整備)は、法律により、地方運輸局長の「認証」を受けた工場でなければ行ってはならないと定められています。
| 認証工場 | 分解整備を行うことを国から許可された工場 |
| 指定工場(民間車検場) | 認証工場のうち、さらに高い技術基準や設備を持ち、車検(継続検査)のラインまで自社で完結できる工場 |
受験資格としての「実務経験」は、この法的に認められた範囲での整備作業を指すため、勤務先がどちらかの認可を受けていることが絶対条件となります。
2.無資格から目指す具体的な道筋:3級整備士資格へのステップ
3級整備士資格へのステップ
最初の目標
3級自動車整備士
受験資格
必要な実務経験
1年以上
基本条件
多くの方が最初に目指すのが「3級自動車整備士」の資格です。ここからキャリアがスタートします。
最初の目標「3級自動車整備士」の受験資格
3級整備士の受験資格を得る方法は、学歴によって異なりますが、無資格・未経験から目指す場合は「実務経験」ルートが基本となります。
自動車整備系の専門学校などを卒業していない場合、まず整備工場(認証工場または指定工場)に就職し、整備補助員として働きながら経験を積みます。
必要な実務経験の期間は「1年以上」が基本
3級自動車整備士の受験資格を得るために必要な実務経験は、原則として「1年以上」と定められています。(※機械科など関連学科の卒業者は短縮される場合があります)
この「1年」を、制度上認められない場所で過ごしてしまうと、受験資格が得られず、キャリアプランが大きく遅れてしまうことになります。
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3級自動車整備士の資格取得方法や合格率、仕事内容について詳しく知りたい方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
■派遣で実務経験を積みながら整備士を目指す
カラフルスタッフィング メカニックは、車両整備士・メカニックに特化した人材派遣サービスです。専門のコーディネーターが希望に合ったお仕事をご提案し、有名ディーラーでスキルや経験を積めるチャンスもあります。派遣として認証工場・指定工場で働きながら、整備士資格取得に必要な実務経験を積むことができます。
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3.よくある疑問を徹底解説:「ガソリンスタンド」や「アルバイト」は実務経験になる?

「自身のこの経験は認められるのか?」という相談は数多く見受けられます。
ここでは、よくある疑問について具体的に解説します。
ケース1:ガソリンスタンドでの勤務
ガソリンスタンドでの勤務が実務経験として認められるかは、そのガソリンスタンドが「認証工場」の認可を受けているかどうかによります。
給油や洗車、タイヤ交換のみを行っている一般的なスタンドは認証工場ではありません。
しかし、ピットを併設し、分解整備も行う「認証工場」として登録されているスタンドであれば、そこでの整備補助業務は実務経験として認められます。
ケース2:アルバイトやパートタイマーでの勤務
雇用形態(正社員、アルバイト、パート)は直接的には問われません。重要なのは「認証工場または指定工場」で「整備作業に従事」していることです。
ただし、アルバイトの場合、勤務日数や時間が少ないと「1年以上の実務経験」としてカウントされるかどうかが曖昧になる可能性があります。

フルタイム勤務と同等の経験と見なされるか、事前に勤務先や地域の自動車整備振興会に確認することが賢明です。
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【重要】経験が認められるかの最終確認方法
最終的に実務経験を証明するのは、勤務先の工場(事業者)が発行する「実務経験証明書」です。
一番確実な方法は、就職・転職活動の面接時に、「こちらで勤務した場合、整備士の受験資格(3級)のための実務経験証明書は発行していただけますか?」と直接確認することです。

この質問を行うことは、学習意欲のアピールにもつながります。
4.学歴に不安があっても大丈夫。整備士になるための多様なルート

「専門学校を出ていない」「普通科高校卒だから」といった、学歴に関する不安を過度に持つ必要はありません。
ここでは、整備士になる
「学歴不問」の整備工場は多い
自動車整備業界は、学歴よりも実務での技術や意欲を重視する傾向があります。実際に、求人情報を見ても「学歴不問」としている整備工場は多く存在します。
働きながら学ぶ「自動車整備振興会」の技術講習とは
各都道府県にある「自動車整備振興会」では、整備工場で働きながら整備士資格の取得を目指す人向けの技術講習(一種養成施設)を開催している場合があります。
認証工場などで実務経験を積みながら、夜間や休日に振興会の講習に通うことで、学科試験の勉強や実技試験に向けた訓練を効率的に進めることができます。
この講習を修了すると、実技試験が免除されるという大きな利点があります。
参考|日本自動車整備振興会連合会:自動車整備士を希望されるみなさんへ
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働きながら資格取得を目指す方に向けて、実務経験を積みながら効率的に資格を取得する方法を詳しく解説しています。
機械科以外の卒業生が優遇されるケース
高校や大学で機械に関する学科を卒業していると、必要な実務経験期間が1年から6ヶ月に短縮される優遇措置があります。
これは工業高校の機械科だけでなく、大学の工学部(機械工学科など)も対象となる場合があります。
■派遣なら柔軟な働き方で整備士を目指せる
カラフルスタッフィング メカニックでは、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能です。学歴不問で未経験からスタートでき、専門のコーディネーターが資格取得をサポート。派遣だからこそ、複数の職場で幅広い経験を積むことができ、自分に合った環境を見つけながらキャリアを築けます。
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5.なぜ今、未経験から整備士を目指しやすいのか?

キャリアチェンジを考える上で、その業界の「追い風」を理解することは重要です。
現在、整備士業界には未経験者にとって挑戦しやすい状況となっています。
業界の深刻な「整備士不足」という背景
自動車業界は、技術の高度化(ハイブリッド、EVなど)が進む一方で、若手の整備士が慢性的に不足しているという大きな課題を抱えています。
この「整備士不足」は、裏を返せば、未経験者や無資格者であっても「これから育てていこう」という意欲のある企業にとっては、採用の門戸が大きく開かれていることを意味します。
追い風となる「受験資格の緩和(実務経験期間の短縮)」
整備士不足の対策として、国土交通省は受験資格の見直しを進めています。
例えば、2級整備士の受験に必要な実務経験期間が短縮されるなど、より早くステップアップできる環境が整いつつあります。
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6.自動車整備士の実務経験に関するQ&A


実務経験証明書は誰が発行するのですか?

勤務している(または、していた)認証工場・指定工場の事業者(勤務先の会社)が発行します。
退職する際などは、忘れずに発行を依頼してください。

複数の工場で働いた場合、実務経験は合算できますか?

可能です。A工場(認証工場)で6ヶ月、B工場(認証工場)で6ヶ月勤務した場合、合計1年として申請できます。
その場合、それぞれの工場から実務経験証明書を発行してもらう必要があります。
■派遣で安心して整備士のキャリアをスタート
カラフルスタッフィング メカニックは、整備士を目指すあなたを全面的にバックアップします。認証工場・指定工場での就業先紹介はもちろん、実務経験証明書の発行など、資格取得に必要な手続きもしっかりサポート。派遣という働き方で、安心してキャリアの第一歩を踏み出せます。
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7.確実な一歩が、専門職としての未来につながる
自動車整備士という専門職への道は、学歴や経験がなくても開かれています。
しかし、その第一歩である実務経験は、「認証工場」または「指定工場」で積まなければならない、という絶対的なルールがあります。
このルールを知らずに時間を費やしてしまうことが、キャリア形成における潜在的なリスクです。
業界の人材不足という追い風を活かし、正しい場所で確実な一歩を踏み出すことが、専門家としての未来を築くための有力な戦略と言えるでしょう。
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