40代を迎え、年収が適正か、また将来のキャリアパスに不安を感じている自動車整備士の方もいらっしゃるかもしれません。40代は経験が蓄積される一方、給与が「頭打ち」と感じやすい時期でもあります。
この記事では、まず40代自動車整備士の平均年収に関する客観的なデータを多角的に分析します。
さらに、国土交通省の公式調査結果 を基に、40代の整備士が実際に抱える「賃金」に関する悩みの実態に迫ります。
その上で、豊富な経験を活かして年収とやりがいを向上させるための、4つの具体的なキャリア戦略(資格取得・管理職・転職など) を提示し、ご自身のキャリアを主体的に設計 するための一助となる情報を提供します。
- 40代自動車整備士の平均年収と、勤務先(ディーラー/民間)による具体的な差
- 国土交通省のデータが示す、40代整備士が抱えるリアルな賃金への悩み
- 年収を上げるための具体的な4つのキャリア戦略(資格・管理職・転職など)
- EV化などがキャリアに与える影響と、40代からの転職成功のポイント
1.40代自動車整備士の平均年収はいくら?

40代の自動車整備士として、自分の年収が適正なのか気になる方も多いのではないでしょうか。
ここでは、公的なデータをもとに40代整備士の年収実態を詳しく見ていきます。平均値だけでなく中央値も確認することで、より実態に近い収入イメージを把握できるでしょう。
【データ比較】40代の平均年収と年収中央値
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」 などを基にした複数の調査によると、40代の自動車整備士の平均年収は、約535万円 から約544万円 の範囲で報告されていることが多いです。
ただし、これはあくまで「平均」の数値です。実際の手取り額に近い感覚を示す「中央値」は、平均値よりも低くなる傾向があります。
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自動車整備士全体の年収データや、業種別・年代別の詳しい分析については、こちらの記事で解説しています。
年収のピークは40代~50代前半
年代別の年収推移を見ると、自動車整備士の年収は経験とともに上昇し、40代 から50代 でピークを迎えるのが一般的な傾向です。

これは、技術の習熟と役職(工場長など)への昇進が反映されるためと考えられます。
【100万円以上の差】勤務先(ディーラー vs 民間)での年収比較
40代の年収に最も大きな影響を与える要因の一つが、勤務先です。
ディーラー勤務
- 平均年収(目安):約509万円
- 特徴・傾向:基本給が高く、賞与や福利厚生も手厚い傾向があります。
民間整備工場
- 平均年収(目安):約389万円
- 特徴・傾向:ディーラーと比較すると年収に100万円以上の差が生じるケースも少なくありません。

この差は、取り扱い台数、利益率、インセンティブ制度の違いなどが影響していると推察されます。
手取り(月収)の実態と企業規模(大手 vs 中小)による違い
年収540万円の場合、社会保険料や税金が引かれた後の「手取り額」は、大まかに75%~80%程度、すなわち約405万円~432万円(月額換算で約34万円~36万円)が一つの目安となります(※扶養家族の有無などで変動します)。
また、勤務先(ディーラー/民間)の違いに加え、事業所の規模(大手か中小か) によっても、昇給率や手当の額が異なるため、年収に差が生じます。
参考|経済産業省:令和6年度企業の雇用状況等に関する調査研究報告書
■派遣という働き方で年収アップを目指す
40代の豊富な経験を活かして、より高待遇な職場で働きたいとお考えの方には、派遣という選択肢もあります。カラフルスタッフィング メカニックは、車両整備士・メカニックに特化した人材派遣サービスです。専門のコーディネーターが希望に合ったお仕事をご提案し、有名ディーラーでスキルや経験を積めるチャンスもご用意しています。
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2.40代整備士の約半数が「賃金」に悩み、離職

40代で年収のピークを迎える一方で、実は多くの整備士がこの年代で「賃金への不満」を抱えているという現実があります。
国土交通省の調査データからは、40代整備士の離職理由として賃金問題が最も多く挙げられていることが明らかになっています。なぜこのような状況が生まれているのでしょうか。
40代の離職理由、第1位は「賃金の条件」
年収に関する悩みは、整備士のキャリアにおいて深刻な問題です。国土交通省が実施した「元自動車整備業であった者に対する アンケート調査」 は、その実態を明確に示しています。
この調査では、整備士を辞めた人のうち49%が「40代」 であり、その40代の回答者(n=49)が挙げた離職理由の第1位は「賃金の条件がよくなかった」(23票) でした。
これは、40代整備士の多くが、自身の経験やスキルに見合う賃金が得られていないと感じていることの表れと言えます。
参考|国土交通省:元自動車整備業であった者に対する アンケート調査
なぜ40代で年収が「頭打ち」と感じやすいのか?
40代で年収が「頭打ち」と感じやすい背景には、いくつかの構造的な要因が考えられます。
キャリア論において「キャリアプラトー」 と呼ばれる昇進・昇給の停滞期に差し掛かることに加え、特に民間整備工場などでは、給与テーブルの上限が大手ディーラーに比べて低く設定されている場合があります。
また、プレイヤーとしての技術は向上しても、管理職のポストには限りがある ため、昇進による大幅な年収アップが難しくなるケースもあります。
3.年収を上げる方法は転職だけではない?40代からのキャリア戦略4選
現状の年収に悩みがある場合、キャリアデザインの視点 に立ち、主体的に次の手を考えることが重要です。
40代の豊富な経験は、年収を上げるための「資産」となります。
1. 上位資格の取得(自動車検査員・1級整備士)
現職での年収アップを目指す堅実な方法です。 「自動車検査員」の資格を取得すれば、多くの整備工場で必須とされる役割を担うことができ、資格手当やキャリアアップに直結します。また、「1級自動車整備士」は最高難度の資格であり、高度な診断技術を持つ専門家として、待遇面での優位性を確保しやすくなります。2. マネジメント職(工場長・フロント)へのキャリアアップ
現場のプレイヤーから、チームや工場全体を管理するマネジメント職 へ移行する道です。 工場長やフロント業務の責任者として、売上管理、人員配置、顧客対応などを統括します。技術力だけでなく、リーダーシップや計数管理能力が求められますが、年収の向上 が期待できます。3. 好待遇を目指す「転職」(ディーラー・大手企業)
前述の通り、勤務先による年収格差は明確に存在します。現在の職場で昇給が見込めない場合、より待遇の良い大手ディーラーやメーカー系の整備工場へ「転職」 することは、年収アップのための最も直接的な手段の一つです。40代の即戦力としての技術と経験は、転職市場において評価されやすい要素です。(補足)独立・開業は現実的か?
認証工場や指定工場として独立・開業する道もあります。 経営者としての裁量を持ち、成功すれば大きなリターンを得られる可能性がありますが、設備投資や顧客開拓、経営リスクなどをすべて自身で負うことになります。ハイリスク・ハイリターンな選択肢と言えるでしょう。▼あわせて読みたい
40代の転職活動を成功させるための具体的なステップや注意点については、こちらの記事で詳しく解説しています。
■派遣で大手ディーラーへの道を開く
大手ディーラーでの勤務を希望される40代整備士の方には、派遣からスタートするという選択肢があります。カラフルスタッフィング メカニックでは、トヨタ・ホンダ・日産などの有名ディーラーでの派遣求人を多数取り扱っています。専門コーディネーターがあなたの経験とスキルに合った職場をマッチングし、キャリアアップをサポートします。
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4.40代整備士が転職を成功させるためのポイント

転職を選択する場合、40代ならではの戦略的な準備が必要です。
経験を強みに変える「応募書類」の書き方
40代の転職では、単に「何をしてきたか」を羅列する履歴書・職務経歴書では不十分です。採用担当者が知りたいのは「入社後にどう貢献できるか」という「価値」 です。具体的なプロジェクトや改善活動について、STARメソッド(Situation:状況、Task:課題、Action:行動、Result:結果) を用いて整理し、「〇〇の課題に対し、〇〇という手法で工数を〇%削減した」のように、実績を数値で「定量化」 して記載することが重要です。
「ポータブルスキル」を面接でどう伝えるか
整備士としての専門技術(テクニカルスキル)に加えて、40代には業種や職種が変わっても通用する「ポータブルスキル」 が備わっています。例えば、「後輩の指導・育成経験(指導力)」「効率的な作業手順の構築(計画立案力)」「複雑な故障の原因究明(課題解決能力)」などです。
ご自身の経験をこれらの「ポータブルスキル」として言語化 し、面接で具体的に伝えることが、専門性+αの価値を示す鍵となるでしょう。
円満退職のための法務・労務知識
転職活動が成功した場合、現在の職場を円満に退職 するための手続きも重要です。実務的なマナーとして、退職の意思は退職希望日の1~3ヶ月前 に、まず「直属の上司」 に口頭で伝えるのが一般的です。(※なお、法律上(民法第627条)は、期間の定めのない雇用契約の場合、退職の申入れから最短2週間で契約を終了させることが可能です)後任者への丁寧な業務引継ぎ や「引継ぎ書」の作成 は、社会人としてのマナーであり、円満退職の鍵となります。
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履歴書や職務経歴書の具体的な書き方、学歴の記載方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
■派遣で柔軟なキャリア設計を実現
転職活動に不安を感じている40代整備士の方には、まず派遣で職場環境を確認するという方法もあります。カラフルスタッフィング メカニックなら、車両整備士専門のコーディネーターが転職相談から就業後のフォローまで一貫してサポート。あなたのライフスタイルやキャリアプランに合わせた働き方をご提案します。
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5.将来性:EV・自動運転の普及は40代のキャリアにどう影響するか

40代整備士にとって、EV化や自動運転技術の進展は「自分のキャリアはこの先どうなるのか」という不安を感じさせる要因かもしれません。
しかし、この技術革新は必ずしも脅威ばかりではありません。むしろ、豊富な経験を持つ40代だからこそ、新しい技術領域で活躍できる可能性もあるのです。
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転職時の志望動機の書き方や、面接で効果的にアピールする方法については、こちらの記事をご覧ください。
求められるスキルの変化(機械から電装へ)
自動車業界はEV(電気自動車)や自動運転技術の普及により、大きな変革期を迎えています。
これにより、整備士に求められるスキルも変化しています。業界のレポート によれば、従来の「機械エンジニア」としての技術に加え、今後はセンサーや電子制御システムを扱う「電装エンジニア」としての知識・技能 の重要性が高まっています。
40代からでも間に合う「リスキリング」の重要性
この技術革新は、40代整備士にとって「脅威」であると同時に、新しいスキルを習得する「機会」でもあります。
こうした新しい技術分野の「リスキリング(学び直し)」 に取り組むことで、市場価値を維持・向上させることが可能です。
国が費用の一部を補助する「教育訓練給付制度」 などを活用し、高度故障診断や電子制御に関する知識をアップデートすることも、将来に向けた有効な投資となるでしょう。
6.40代は経験を活かし、次のキャリアを設計する転換期
40代の自動車整備士が抱える年収への悩み は、個人の問題ではなく、国土交通省のデータ でも裏付けられた業界共通の課題です。
しかし、40代はキャリアの停滞期 ではなく、豊富な経験という資産をどう活かすかを再設計する「転換期」 です。
まずは客観的なデータで現在地を把握し、現状維持に不安 があるならば、この記事で提示した4つの戦略(上位資格の取得、管理職への道、待遇改善の転職、リスキリング)を参考に、自身の価値観 に合った次のステップを考えてみてはいかがでしょうか。
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