自動車整備士資格一覧【全14種類】取得方法と最適な選び方

「自動車整備士の資格って何種類あるの？」「どの資格を取れば転職に有利なの？」とお悩みではありませんか？

自動車整備士の資格は実は全14種類に細分化されており、それぞれ取得後にできる業務や求められるスキルが大きく異なります。

間違った資格選択をしてしまうと、希望する職場で働けなかったり、キャリアアップの機会を逃してしまう可能性があります。

この記事では、14種類すべての自動車整備士資格を徹底解説します。

1．自動車整備士資格の全体像と分類システム

自動車整備士の資格体系を理解することで、適切な資格選択と効率的なキャリアプランニングが可能になります。

資格の4つの階級について

自動車整備士の資格は、1級・2級・3級・特殊整備士の4つの階級に分かれています。数字が小さいほど上位資格となり、求められる技術レベルも高くなります。

各階級で可能な業務範囲の違い

階級によって担当できる業務範囲が明確に定められており、上位資格ほど幅広い業務を担当できます。

1級自動車整備士は、すべての整備業務に加えて次世代自動車の高度な故障診断や環境保全・安全管理業務まで担当でき、技術指導や管理業務も行います。

2級自動車整備士は、自動車の分解・修理・整備のほぼすべてを単独で行うことができ、整備主任者や自動車検査員の資格要件も満たすため、実務の中心的役割を果たします。

3級自動車整備士は、上級者の指導の下で基本的な点検・整備を行えますが、エンジンの分解など高度な作業は担当できず、主に補助的な業務を担当します。

特殊整備士は、電気装置・車体・タイヤなど特定分野の専門的な整備を担当し、その分野においては2級以上の専門性を発揮します。

▼自動車整備士の職業分類について詳しく

以下の記事では、自動車整備士の職種・業種分類を解説しています。履歴書の正しい記載方法から転職成功のコツまで実践的知識を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

2．1級自動車整備士【3種類】最高難易度の上級資格

1級自動車整備士は整備士資格の頂点に位置し、高度な技術力と幅広い知識を証明する資格です。

1級小型自動車整備士の特徴と需要

技術面では、電気自動車やハイブリッド車の複雑な電子制御システムの故障診断能力を持ち、高電圧システムの安全な取り扱い技術も習得しています。

また、環境保全や安全管理に関する豊富な知識を有し、整備工場での技術指導・管理能力も兼ね備えています。

市場での需要は年々高まっており、ディーラーでは次世代車両の専門技術者として、大手整備工場では技術指導者・管理職候補として重宝されています。従来の整備技術を超えた高度なスキルを持つ人材として、業界全体で求められている状況です。

1級大型・二輪自動車整備士の現状

1級大型自動車整備士は大型トラックやバスなどの重量車両の高度な整備技術を、1級二輪自動車整備士はオートバイの高度な整備技術を対象としています。

しかし、試験実施の具体的な予定は発表されておらず、実施時期は未定です。

そのため、現在1級自動車整備士といえば1級小型自動車整備士のことを指します。

将来的に試験が開始される可能性はありますが、現在整備士を目指す方は1級小型自動車整備士の取得を検討することになります。

1級資格取得のメリットとデメリット

1級資格取得には大きなメリットがある一方で、デメリットも存在するため、総合的な判断が必要です。

3．2級自動車整備士【4種類】実務で最も重要な中核資格

2級自動車整備士は整備士として働く上で最も重要な資格で、実務に必要な技術をほぼ網羅できます。

2級ガソリン自動車整備士

主な業務内容は、エンジンの分解・組立・調整、燃料噴射システムの診断・修理、電子制御システムの故障診断、車検・点検業務全般などです。

現代の自動車に搭載される複雑な電子制御システムにも対応でき、コンピューター診断機器を使用した故障診断技術も身につきます。

また、就職・転職での優位性も高く、求人数が最も多く全体の約60%を占めます。初任給は月額18万円から25万円程度で、資格手当も月額5000円から1万5000円が一般的です。

2級ジーゼル自動車整備士

特徴的な技術領域として、高圧燃料噴射システム、排ガス後処理装置、ターボチャージャーシステム、大型車特有の制動システムなどがあります。

特に近年の環境規制強化により、排ガス処理技術や燃費向上技術の知識が重要になっています。

キャリアパスとしては、運送会社の整備部門、建設機械メーカー、バス・トラックディーラー、独立系大型車整備工場などでの活躍が期待されます。

2級自動車シャシ整備士

専門領域として、トランスミッション・デファレンシャル、ブレーキシステム、サスペンション・ステアリング、4WDシステムなどがあります。

近年の自動車では、電子制御されたABSやESC、電動パワーステアリングなど、従来の機械的な仕組みに電子制御が組み合わされており、幅広い知識が必要です。

キャリアパスとしては、ガソリンとシャシでオールラウンド整備士、ディーゼルとシャシで商用車のエキスパート、電気装置とシャシで次世代車対応技術者としてのキャリアパスが描けます。

2級二輪自動車整備士

バイク特有の技術として、高回転エンジンの調整、チェーン・ベルト駆動システム、キャブレター・燃料噴射装置、2ストローク・4ストロークエンジンなどがあります。

バイクは軽量化と高性能化が重要で、エンジンの精密な調整技術や、限られたスペースでの効率的な整備技術が必要です。

就職先としては、バイクディーラー、用品店併設工場、独立系バイク店、カスタムショップなどがあります。

バイク市場は成熟していますが、電動バイクの普及や高齢ライダーの増加により、整備需要は安定しています。特にカスタムバイクやレストア分野では高い技術力が評価されます。

4．3級自動車整備士【4種類】整備士への第一歩

3級自動車整備士は整備士キャリアの入り口となる資格で、基本的な整備技術の習得を目的としています。

3級各資格の概要と位置づけ

3級自動車整備士は、3級ガソリン自動車整備士、3級ジーゼル自動車整備士、3級自動車シャシ整備士、3級二輪自動車整備士の4種類があります。

3級で可能な基本業務は、日常点検・定期点検、オイル・フィルター交換、タイヤ交換・ローテーション、バッテリー交換、簡単な部品交換、洗車・清掃作業などです。

これらの業務は整備の基本中の基本であり、確実に身につけることで整備士としての土台を築くことができます。

ただし、エンジン分解作業、ブレーキ系統の分解整備、電子制御システムの診断などは担当できず、必ず上級者の指導・確認が必要になります。

3級の資格はあくまで、2級の受験資格を得るための足掛かりとして位置づけられており、実務経験を積みながら2級取得のための勉強を継続することが重要です。

働きながら取得する現実的なルート

3級資格を働きながら取得するためには、実務経験1年以上が必要で、段階的なアプローチが重要です。

具体的なステップとして、まず未経験者歓迎の整備工場への就職活動を行い、資格取得支援ありの求人を優先して選択します。

面接では資格取得への強い意欲をアピールし、将来的なキャリアビジョンを明確に示すことが大切です。就職後は1年間の実務経験を積み重ねながら、基本作業を通じて実技スキルを習得し、先輩整備士からの指導を積極的に受けます。

同時に空き時間を活用して学科試験の勉強を進め、整備の理論と実践を結びつけて理解を深めます。

受験資格を満たした後は、2から3ヶ月の試験対策期間を設け、過去問題集を繰り返し解き、職場の勉強会に参加し、日本自動車整備振興会の講習を受講します。

▼働きながら資格取得は可能？

以下の記事では、働きながら自動車整備士資格を取得する方法を解説しています。実務経験の積み方、教育訓練給付金で最大70%支援？効率的な学習ルートを紹介しています。ぜひ参考にしてください。

3級から2級へのステップアップ戦略

3級から2級へのステップアップには複数のルートがあり、個人の状況に応じて最適な方法を選択することが重要です。

最短ルートは専門学校を活用する方法で、3級取得後に二種養成施設の1年制コースに進学し、2級受験の準備を行います。総期間は約3年となり、実技試験免除などのメリットがあります。

働きながらのルートでは、3級取得後に実務経験を3年積み重ね、その後2級を受験します。総期間は約5年となりますが、収入を得ながら学習できるメリットがあります。

効率的な勉強法として、実務と学習の連動、職場での積極的な質問、同期との情報共有、継続的な学習習慣の確立が重要です。

特に実務で経験した内容を教科書で理論的に確認し、逆に教科書で学んだ内容を実務で実践することで、深い理解につながります。

5．特殊整備士【3種類】専門分野のスペシャリスト資格

特殊整備士は2級と同等以上の専門性を持つスペシャリスト資格で、特定分野への特化によりキャリアの差別化を図れます。

自動車電気装置整備士

専門領域として、バッテリー・オルタネーター・スターター、エアコン・ヒーターシステム、カーナビ・オーディオシステム、電子制御装置の診断・修理、高電圧システムの取り扱いなどがあります。

現代の自動車は電子化が進んでおり、ECUによる制御システム、センサー類、アクチュエーターなど、電気・電子技術なしには成り立たない状況です。

近年の電気自動車販売台数の急増に伴い、関連求人数も大幅に増加しています。電気装置のみの整備もありますが、分解整備が伴うことが多いため、他の自動車整備士資格との相乗効果が期待できます。

自動車車体整備士

専門技術として、事故車両の損傷診断・修復計画立案、フレーム修正・板金加工、塗装・仕上げ作業、保険会社との調整業務などがあります。

車体の損傷状況を正確に診断し、最適な修復方法を選択する判断力、精密な板金技術、美しい仕上がりを実現する塗装技術など、多岐にわたるスキルが必要です。

独立開業の場合、初期投資は300万円から500万円程度で、月平均売上は100万円から200万円、利益率は25%から35%程度となります。

自動車タイヤ整備士

専門知識として、タイヤの構造・性能特性、ホイールバランス・アライメント調整、ランフラットタイヤ・特殊タイヤ対応、タイヤ関連保安基準などがあります。

近年では低燃費タイヤ、静粛性タイヤ、スポーツタイヤなど、様々な特性を持つタイヤが開発されており、それぞれの特徴を理解した提案力も必要です。

また、タイヤ専門店では安定した収入と土日休みが多く、カー用品店では幅広い商品知識も身につき、ディーラーではタイヤ交換の専門担当者として重宝されます。

6．自動車整備士資格の取得方法と具体的ステップ

資格取得には複数のルートがあり、それぞれ特徴とメリット・デメリットが存在します。

専門学校ルートのメリットと費用対効果

一種養成施設の2年制専門学校では、2級ガソリン・ディーゼル・シャシ・二輪整備士の取得が可能で、実技試験免除が卒業後2年間有効になります。

カリキュラムは理論と実習がバランスよく組まれており、最新の技術動向や設備に触れる機会も豊富です。就職率は95%以上で大手ディーラーへの就職も多数あり、就職サポートも充実しています。

費用対効果として、初期投資約240万円に対して卒業後年収300万円から350万円で、投資回収期間は約3年から4年となります。生涯年収では実務ルートより約500万円から800万円高くなり、長期的には非常に有利です。

奨学金制度として、日本学生支援機構で月額2万円から12万円、自動車整備振興会奨学金で月額3万円、メーカー系奨学金でトヨタ・日産等から月額5万円から8万円の支援があります。

実務経験ルートの現実と対策

働きながら学習する場合、肉体労働後の勉強時間確保の困難さ、実技と理論の結びつけの必要性、モチベーション維持の重要性などの課題があります。

しかし、適切な戦略により、これらの課題は克服可能です。効果的な学習戦略として、時間管理術では出勤前30分の朝活用、昼休み15分間の復習時間、移動時間での音声教材利用があります。

早朝の時間は集中力が高く、効率的な学習が可能です。職場での学習支援活用では、先輩整備士への積極的な質問、社内勉強会への参加、実務作業での理論確認が重要です。

実際の作業を教科書の内容と照らし合わせることで、理解が深まります。継続的な学習習慣として、毎日30分の学習時間確保、同期との情報共有によるモチベーション維持、実務経験と学習内容の連動による理解度向上を図ります。

受験申請から資格取得までの流れ

資格取得の手続きは段階的に進められ、計画的な準備が成功の鍵となります。受験申請は試験2ヶ月前に各都道府県自動車整備振興会に対して行い、受験申請書、実務経験証明書、卒業証明書、受験手数料が必要です。

申請書類の記入は正確に行い、実務経験証明書は勤務先に早めに依頼しておくことが重要です。学科試験は年2回10月と3月に実施され、構造・機能・点検・整備・法規が出題範囲となり、70点以上で合格、試験時間は3時間です。

過去問題を繰り返し解き、苦手分野を重点的に学習することが合格への近道です。実技試験は年2回1月から2月と6月から7月に実施され、実際の整備作業を行い、減点方式で70点以上で合格、所要時間は約4時間です。

実技試験では正確性とスピードの両方が求められるため、日頃の実務経験が重要な要素となります。合格発表は試験後約1ヶ月で結果通知され、合格者は整備士手帳の交付申請を行い、登録手数料1750円が必要です。

▼自動車整備士の資格取得について詳しく

以下の記事では、自動車整備士資格の取得方法から費用まで完全解説。3級・2級・1級の違い、専門学校と実務経験の選択肢、特待生制度活用など紹介します。ぜひ参考にしてください。

7．今すぐ始める自動車整備士資格取得アクション

自動車整備士の資格は全14種類あり、1級・2級・3級・特殊整備士という4つの階級に分かれています。

2級ガソリン自動車整備士は最も汎用性が高く求人数も豊富で、電気装置整備士は将来性が抜群、1級小型自動車整備士は希少価値で際立っています。

未経験者は専門学校ルートか実務経験ルートを選択し、経験者は現在の資格状況に応じて次のステップを計画することが重要です。

転職を見据える場合は市場価値の高い資格を優先し、独立開業を目指すなら複数資格の組み合わせを検討しましょう。

資格取得により年収アップや昇進の可能性が高まり、専門技術を活かした安定したキャリア構築が可能になります。今すぐ行動を起こし、理想の整備士キャリアを実現しましょう。