ドライバーのキャリアを考える上で、退職金の制度は重要な判断材料の一つです。しかし、企業によって制度の有無や内容は大きく異なり、適切な情報収集が欠かせません。
本記事では、ドライバーの退職金制度の基本から、職種別の相場、効果的な求人の探し方まで、将来設計に役立つ情報を徹底解説します。
- 退職金制度の4つの種類と、それぞれのメリット・デメリット
- トラックの種類別(長距離/大型/中型/小型)の退職金相場
- 退職金制度のある求人の具体的な探し方と確認のポイント
1.ドライバーの退職金制度を確認すべき理由

ドライバーとして働く中で、退職金制度の確認は将来設計において重要な要素となります。特に長期的なキャリアプランを考える上で、欠かせない情報となります。
ドライバー転職時の判断材料として
転職を検討する際、給与や勤務条件と並んで退職金制度は重要な判断材料となります。
運輸業界では約70%の企業が退職金制度を導入していると言われていますが、その内容は企業によって大きく異なります。
特に大手企業と中小企業では制度の充実度に大きな差があり、転職先選びの際には慎重な比較検討が必要です。
また、退職金制度の有無は企業の経営状態や従業員への待遇を図る判断材料としても活用できます。
将来の生活設計に直結する
退職金は将来の生活設計に大きな影響を与える重要な要素です。
一般的に退職金は老後の生活資金として重要な役割を果たし、特にドライバー職は体力的な制限から若い世代と比べて収入が減少する可能性が高い職種です。
そのため、現役時代から退職金制度を理解し、それを踏まえた資産形成計画を立てることが重要です。
また、退職金は住宅ローンの返済や子どもの教育資金など、大きな支出に対する備えとしても活用できるため、長期的な生活設計において重要な検討要素となります。
2.4つのドライバー退職金制度

退職金制度には様々な形態があり、企業によって採用している制度が異なります。それぞれの特徴を理解することで、より良い選択が可能になります。
退職金一時金制度
退職金一時金制度は、最も一般的な退職金の支給方法です。
従業員が退職時に一括で受け取る制度で、勤続年数や退職理由によって支給額が決定されます。この制度では、企業が独自に積立金を管理し、退職時に一時金として支給します。
支給額は一般的に「基本給×支給倍率×勤続年数」などの計算式で算出され、自己都合退職と会社都合退職では支給倍率が異なることが多いのが特徴です。
また、役職や貢献度によって追加の支給がある場合もあり、長期勤続のインセンティブとしても機能しています。
中小企業退職金共済
中小企業退職金共済(中退共)は、中小企業向けに特化した国の退職金制度です。
企業が毎月定額の掛金を支払い、従業員の退職時に中退共から直接退職金が支給されます。
掛金は月額5,000円から30,000円の範囲で設定でき、企業は掛金の一部を損金算入できる税制上のメリットがあります。
また、従業員が転職した場合でも、新しい勤務先が中退共に加入していれば、積立期間を通算できることも大きな特徴です。
この制度は中小企業でも安定した退職金支給を実現できる仕組みとして注目されています。
企業型確定拠出年金制度(DC)
企業型確定拠出年金制度(DC)は、企業が毎月一定額を拠出し、従業員自身が運用を行う制度です。
この制度の特徴は、運用結果が直接退職金額に反映される点にあります。従業員は自身の判断で運用商品を選択でき、運用益は非課税となります。
ただし、原則として60歳まで引き出しができない制約があり、運用次第で受取額が変動するリスクも存在します。
特に近年は、従来の退職金制度からDCへの移行を進める企業が増加しており、運用に関する知識が重要性を増しています。
確定給付企業年金制度(DB)
確定給付企業年金制度(DB)は、あらかじめ決められた給付額を保証する制度です。
従業員は運用リスクを負わず、勤続年数や給与に応じた一定額の受給が約束されます。企業は将来の給付に必要な掛金を計算し、外部の金融機関で管理・運用を行います。
基金型と規約型の二種類があり、基金型は複数企業での共同運営が可能で、規約型は単独企業での運営となります。
この制度は主に大企業で採用されており、運用リスクを企業が負担する代わりに、従業員には安定した給付が保証されるという特徴があります。
3.一般的な退職金相場
退職金の相場は企業規模や業界によって大きく異なります。ドライバー職の退職金について理解を深めるため、まずは一般的な相場を確認しましょう。
厚生労働省の調査によると、大企業における退職金の相場は、勤続5年で自己都合の場合約59万円、会社都合の場合で約118万円となっています。
一方、中小企業では同じ勤続5年で自己都合約47万円、会社都合約64万円と、企業規模による差が明確に表れています。
特に定年退職時の差は顕著で、大学卒業後から定年まで勤務した場合、大企業では平均2,564万円、中小企業では1,092万円と、2倍以上の開きがあります。
このような相場を知ることは、自身のキャリアプランを考える上で重要な指標となるでしょう。
4.トラック別退職金相場を比較

トラックドライバーの退職金は、担当する車両の種類や業務内容によって大きく異なります。それぞれの特徴と相場を詳しく見ていきましょう。
長距離ドライバー
長距離ドライバーは、他のドライバー職と比較して高水準の退職金が設定されている傾向にあります。
これは長時間の運転や泊まりがけの業務など、特殊な勤務形態が考慮されているためです。
一般的な相場として、勤続20年で500万円から700万円程度となっており、特に大手運送会社では更に高額になるケースも見られます。
これは業務の専門性や負担の大きさが評価された結果と言えます。ただし、近年は労働時間規制の強化により、給与体系の見直しが進んでいる点にも注意が必要です。
大型トラックドライバー
大型トラックドライバーの退職金相場は、全日本トラック協会の調査によると、勤続20年で350万円から500万円程度となっています。
この職種の特徴は、平均年齢が48歳と比較的高く、勤続年数が長い傾向にあることです。
大型免許の取得に時間と費用がかかることから、一度就職すると長く勤める傾向が強く、それが退職金額にも反映されています。
また、大手企業では確定給付型の退職金制度を採用しているケースが多く、安定した退職金が期待できます。
中型トラックドライバー
中型トラックドライバーは、比較的短距離の配送業務が中心で、固定ルートを担当することが多い職種です。
そのため、退職金相場は勤続20年で300万円から400万円程度と、大型トラックドライバーより若干低めの設定となっています。
この職種の特徴は、仕事とプライベートの両立がしやすい点にありますが、その分、待遇面では若干の差が生じています。
ただし、中小企業退職金共済制度を活用している企業も多く、安定した退職金制度が整備されているケースも増えています。
小型トラックドライバー
小型トラックドライバーの退職金相場は、中型トラックドライバーとほぼ同水準となっています。
定期配送や集配業務が中心で、比較的負担の少ない業務内容であることが、この水準に反映されています。
一般的な相場として、勤続20年で300万円前後となりますが、企業によって大きな差があり、特に大手企業と中小企業では制度の充実度に明確な違いが見られます。
また、近年は eコマースの発展に伴い、小型トラックドライバーの需要が増加しており、待遇改善の動きも出てきています。
参考:全国トラック協会
5.退職金制度のあるドライバー求人の探し方
運輸業界では約70%の企業が退職金制度を導入していますが、その内容は企業によって大きく異なります。
ここでは、効率的に良い条件の求人を見つけるためのポイントを解説します。
ドライバー特化型求人サイトの活用方法
ドライバー専門の求人サイトを活用することで、退職金制度のある企業を効率的に見つけることができます。
主要なサイトでは、福利厚生の条件で絞り込み検索が可能で、退職金制度の有無をチェックできます。
特に「ドラEVER」「運転ドットコム」「ジョブコンプラスD」などのドライバー専門サイトでは、退職金制度などの詳細な条件設定が可能です。
これらのサイトでは企業の規模や業態、勤務条件などもあわせて確認できるため、総合的な比較検討が可能となります。
面接時に確認する
採用面接は、退職金制度の詳細を確認する重要な機会です。
具体的な確認ポイントとしては、制度の種類(一時金制度か年金制度か)、支給条件(勤続年数や年齢要件)、支給額の計算方法などが挙げられます。
特に中小企業の場合、中小企業退職金共済制度を採用しているケースが多いため、月々の掛け金額や将来の受給見込み額について確認することが重要です。
また、確定拠出年金を導入している企業では、企業負担額や運用方法についても詳しく質問することをお勧めします。
6.ドライバー退職金制度に関する注意点とアドバイス
退職金制度を理解し、効果的に活用するためには、いくつかの重要なポイントに注意を払う必要があります。
将来の資産形成に向けて、しっかりと確認していきましょう。
受給条件の確認方法
退職金の受給条件は企業によって大きく異なります。
主な確認ポイントとしては、最低勤続年数、自己都合と会社都合の違い、役職による支給率の変動などがあります。
特に注意が必要なのは、試用期間や契約社員期間の扱い、休職期間の算入方法などです。これらの条件は就業規則や退職金規程に明記されているはずですが、不明な点があれば人事部門に確認することをお勧めします。
また、中小企業退職金共済制度を利用している場合は、掛け金額と予想受給額についても必ず確認しておきましょう。
税金と管理の基礎知識
退職金には特別な税制が適用されます。
具体的には、退職所得控除額(勤続年数×40万円、ただし20年を超える部分は70万円)を超えた額に対して課税されます。
特に高額の退職金を受け取る場合は、税負担を考慮した受け取り方を検討する必要があります。
また、確定拠出年金のような年金型の退職給付を選択した場合は、運用期間中の税制優遇措置や受給時の課税方法が異なるため、確実な情報を得るには、専門家に相談することをお勧めします。
追加で準備すべき資産形成
退職金だけでは十分な老後資産を確保できない可能性があります。そのため、在職中から計画的な資産形成を心がけることが重要です。
具体的には、iDeCoや財形貯蓄など、税制優遇のある制度を活用することをお勧めします。
また、退職金制度が充実していない企業に勤務している場合は、特に積極的な資産形成が必要です。投資信託や個人年金保険など、自身のリスク許容度に合わせた運用方法を検討しましょう。
7.【ドライバー】退職金制度に関する疑問

ここでは、ドライバーの退職金に関するよくある質問をQ&A形式でご紹介していきます。
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退職金は会社の法的な義務ではないのですか?
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退職金制度は法律で定められた義務ではなく、各企業が任意で導入する制度です。そのため、企業によって制度の有無や内容が大きく異なります。
ただし、一度導入した退職金制度を廃止または不利益に変更する場合は、労働契約法に基づき従業員との合意が必要となります。
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ドライバー職で多くの退職金をもらう方法はありますか?
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ドライバー職で高額な退職金を受け取るためには、いくつかの方法が考えられます。まず、大手企業や退職金制度が充実している企業を選択することが重要です。
また、中途入社の場合でも、中小企業退職金共済に加入している企業を選べば、前職の積立期間を通算できる可能性があります。
さらに、役職への昇進や資格取得によってキャリアアップを図ることで、退職金の支給率が上がるケースもあるため、積極的なスキルアップを心がけることをお勧めします。
8.退職金の有無をドライバーの転職先探しの参考にしよう!
退職金制度は企業選びの重要な要素であり、長期的なキャリアプランに大きく影響します。
制度の種類や内容は企業によって異なりますが、事前に十分な情報収集と確認を行うことで、より良い選択が可能になります。
特にドライバー職は体力面での制約もあるため、現役時代から退職金を含めた将来設計をしっかりと行うことをお勧めします。