トラックドライバーの福利厚生は充実している？待遇や魅力を紹介

トラックドライバーの仕事を選択するうえで、福利厚生は大切な検討要素になりますが、近年の運送業界ではドライバー不足が深刻化しており、各社が労働環境の改善に力を入れています。

その中でも特に福利厚生の充実は、ドライバーの確保と定着に大きな影響を与えるため、企業にとっても重要な課題となっています。

本記事では、トラックドライバーの福利厚生について、法律で定められている「法定福利厚生」と、企業独自の「法定外福利厚生」に分けて、詳しく解説します。

また、ドライバー業界の環境が整ってきた背景や、福利厚生以外のメリットについても詳しく解説していきます。

1．トラックドライバーの福利厚生とは

トラックドライバーへの転職を検討している方なら、運送業界で働く際の福利厚生が気になるところです。近年の運送業界は、ドライバーの人材不足もあり労働環境の改善が進んでいます。

福利厚生とは、給与や賞与以外で会社が準備する、従業員の利益になる制度のことです。

現在のトラックドライバーの仕事は、福利厚生が充実しており、以前に比べて随分と働きやすくなりました。

トラックドライバーの主な福利厚生を、大きく「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」に分けて解説します。

法定福利厚生

法定福利厚生とは、会社が導入しなければならないと法律で定められている福利厚生です。雇用保険、健康保険、介護保険などの保険や厚生年金などが法定福利厚生に該当します。

雇用保険

雇用保険は、従業員が失業もしくは休業した際に給付金が受けられる制度です。会社には従業員を雇用保険に加入させる義務があり、その保険料を一定額負担します。

雇用保険で受け取れる主な給付は、従業員が失業した際の生活の安定や求職活動を支える目的で給付される「求職者給付」です。

また、再就職の援助や促進を目的に給付される「就業手当」や「再就職手当」などの「就職促進給付」。

厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講、修了した場合などに給付される「教育訓練給付金」。

教育訓練支援を目的に給付される「教育訓練支援給付金」などの「教育訓練給付」などもあります。

健康保険

健康保険は、従業員が病気やケガなどで病院にかかった際の医療給付や、手当金などを受給できる医療保険制度です。保険に加入した際に健康保険証が発行されます。

医療機関で健康保険証を提示すると、病院でかかる高額な医療費が、1割から3割の自己負担額の支払いだけですみます。かかった医療費が高額の場合には、高額療養費制度などの利用も可能です。

従業員が加入する健康保険には、主に、大企業が自社で設立・運営する健康保険組合と、中小企業が加入する全国健康保険協会（協会けんぽ）があります。

健康保険料は、保険料を会社と従業員が半額ずつ負担します。

介護保険

介護保険は、高齢者の介護費用の負担を軽減するための保険制度です。2000年に創設され、市区町村などが運営しています。

高齢者が要介護状態になり、市区町村や病院などで要支援もしくは要介護と判定された場合に、自己負担額の1割から3割程度で介護サービスの利用が可能です。

利用できる介護サービスには、自宅で受ける訪問介護や訪問入浴介護などの「訪問サービス」、施設で受けるデイサービスなどの「通所サービス」。施設で短期間生活する「短期入所サービス」などがあります。

介護保険制度の加入義務者は40際以上の従業員です。保険料は従業員と会社が折半して負担します。

労災保険

労災保険は、従業員が業務中や通勤の途中で生じたケガや、いわゆる職業病と呼ばれるような明らかに業務を起因とする病気などに対して給付が支払われる保険制度です。

労災保険の保険者は厚生労働省や労働基準監督署などです。原則として、従業員を1人でも雇用する事業主は労災保険に加入しなければなりません。

労災保険への加入が必要になる従業員は、正社員だけでなく、パート、アルバイトなども該当します。

労災保険で受給可能な給付には、「療養補償給付」「休業補償給付」「傷病補償給付」「障害補償給付」「葬祭料」「介護補償給付」といった、ケガや病気で働けなくなった従業員に対する療養給付や年金などがあります。

労災の保険料に従業員の負担義務はなく、加入している従業員の保険料は全額会社が支払います。

厚生年金

厚生年金保険は、従業員やその家族が老後の安定した生活のために加入する年金保険制度です。

日本の年金保険制度は、20歳から60歳の人が加入しなければなりません。

厚生年金の加入者は第二号被保険者になり、すべての国民に加入が義務付けられている国民年金に上乗せする形で加入します。

また、第二号被保険者に扶養されている専業主婦などの配偶者は、国民年金に加入しているとみなされる第三号被保険者になります。

厚生年金に加入しているもしくは加入していた人が受け取れるのは、従業員が65歳以上になった場合の「老齢厚生年金」、障害を負った場合の「障害厚生年金」、死亡した場合の「遺族厚生年金」といった年金給付です。

厚生年金保険料も、健康保険や介護保険と同様に従業員と会社が折半で保険料を負担します。

法定外福利厚生

法定外福利厚生は、法律では定められていない、各会社が独自で設定している福利厚生制度です。主に資格取得の支援、住居関係の補助、各種支援金などがあります。

免許や資格取得の支援

法定外福利厚生には、従業員が業務に役立つ免許などの資格を取得するための支援制度があります。

運転する車両に応じて、ドライバーにはさまざまな免許が必要です。それらの免許を取るためにかかる費用の補助や、資格取得のための休暇付与、一定の資格を取得した場合に受け取れる合格報奨金、資格手当などが具体例に挙げられます。

これらの福利厚生を利用すれば、免許を取得しやすくなり、モチベーションアップも可能です。

免許・資格を取得することで、会社の生産性向上にも貢献できます。

寮や社宅の提供

従業員の住宅に関する費用補助は多くの会社が導入している人気の高い福利厚生です。ドライバーに対する福利厚生では、寮や社宅を用意する会社が多いです。

寮や社宅は入居費用が無料もしくは安価で利用できるため、生活費の多くを占める住居費用が抑えられます。

各種支援金（出産一時金、結婚祝い金、慶弔金）

従業員やその家族の慶弔時に給付される慶弔金などの支援金は、節目ごとに従業員の経済的なサポートを行う福利厚生制度です。

従業員のモチベーションアップなどを目的に導入する会社が多く、会社ごとに設定している金額や目的（お祝い金、お見舞金など）は異なります。

主なお祝い金は、従業員が結婚した際に支給する「結婚祝い金」、従業員に子どもが生まれる際に支給する「出産一時金」などです。

一方、従業員が病気やケガで療養する場合に支給する「傷病見舞金」、従業員やその家族が死亡した際に支給する「弔慰金」、従業員が災害に遭って損害を受けた際に支給する「災害見舞金」などのお見舞金や弔慰金もあります。

2．ドライバー業界は、働く環境が改善されてきている

これまでのドライバーの仕事は、長時間労働や不定休など、厳しい仕事のイメージがありました。

ところが、過重労働による事故の発生や人材不足、ドライバーの高齢化などの理由から、近年ではドライバーの働き方が改善されています。

2024年4月1日からは、働き方改革関連法の改正によってトラックドライバーの時間外労働時間が年間で上限960時間以内に制限されました。

ドライバーがしっかりと休暇、休息を取れるように、働き方が大きく変化しています。

参考元：厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制 （旧時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務）」

3．トラックドライバーの福利厚生が充実してきた背景

ドライバー業界には人材不足をはじめとしたさまざまな課題があります。手厚い福利厚生の実施は、それら課題解決の目的で行われています。

働きやすく魅力的な職場で、採用・定着の向上をはかる

トラックドライバーの仕事は、長時間労働になりやすく、重い荷物を運ぶなど、ほかの仕事と比べると体力的に厳しい仕事です。

通信販売やEC市場の拡大によってドライバーの需要が増加している現代において、仕事に対する過酷なイメージや、少子高齢化の影響から、トラックドライバーの人材は常に不足しています。

また、2024年の時間外労働の上限規制によるドライバーの労働時間削減を受けて、これまでと同じ人員では業務をこなせなくなることも考えられます。これにより人材不足の状況が加速する恐れもあります。

業界で福利厚生が充実しているのは、家賃補助や資格取得補助など充実した福利厚生制度を設けて、働きやすく魅力的な職場環境を整えるためです。

トラックドライバーの獲得を目指して福利厚生を整える会社も多く、仕事への満足度が高まっています。

給与アップが難しい部分を福利厚生の充実でサポート

2024年からトラックドライバーの時間外労働の上限規制がはじまり、ドライバーの労働時間はこれまでよりも短くなりました。人材不足が解決できないと、運送会社は仕事の受注を削減しなければならなくなり、会社の利益が減少します。

利益が減少した状態では、トラックドライバーの給与は上げられません。そして、給与面での不満はドライバーの離職につながります。

そのため、多くの運送会社が給与という形ではなく、福利厚生の充実で人材定着を図っています。

4．福利厚生の他に確認しておくべきトラックドライバーの仕事内容

トラックドライバーの仕事を探す場合、福利厚生以外にも仕事内容や給与、休日数などを確認することも重要です。事前にドライバーの仕事を確認しておくと、納得して業務に携われます。

トラックドライバーの仕事内容

トラックドライバーの仕事内容は、主にトラックで送り先まで荷物を運ぶことです。

トラックには大型トラックや中型トラック、小型トラックなどの種類があるため、使用する車両によっても仕事内容は異なります。

大型トラックでは長距離輸送をする仕事が多く、中型トラックの仕事は大型トラックほどではない中長距離輸送です。

小型トラックの場合、荷物を集配所から集配所に送るルート配送や個人宅に配送する宅配などの仕事に分かれます。

積み荷を上げ下ろしするフォークリフトを使用する仕事や、タンクローリー、バルク車、トレーラーなどの車両を運転する仕事などもあります。

▼ドライバーの仕事の種類が気になる方はこちら

トラックドライバーの給与

厚生労働省の発表した「令和3年分賃金構造基本統計調査」の結果によると、全産業平均給与は約489万円です。一方、大型トラックドライバーの平均年収は約463万円、中小型トラックドライバーでは大型トラックドライバーよりも低く、約431万円です。

大型、中小型ドライバーを合わせたトラックドライバー全体の平均年収は、約447万円と、全産業平均よりも40万ほど低くなります。

また、全日本トラック協会による「2022 年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」によると、性別・地域によって平均賃金に大きな差が見られます。男性で25万～36万円/月程度ですが、女性になると14万～31万円/月とその開きは顕著です。

参考元：e-Stat「令和3年賃金構造基本統計調査」
参考元：厚生労働省「統計からみるトラック運転者の仕事」
参考元：公益社団法人 全日本トラック協会「2021 年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態 （概要版抜粋） 」

▼トラックドライバーの給与について詳しく知りたい方はこちら

トラックドライバーの休日数

厚生労働省の発表した「平成29年就労条件総合調査」では、全産業の労働者1人あたり平均年間休日は113.7日でした。

一方、トラックドライバーの労働者1人あたり平均年間休日は「運輸業・郵便業」で確認したところ、106.6日と平均よりも7日ほど少ないです。

これらのことから、年間休日が120日以上ある会社は、業界内だけでなく他業種を含めても多くの休日を設定している好待遇の会社と判断できます。

参考元：「平成29年就労条件総合調査」

5．トラックドライバーにとって働きやすい環境が整ってきている

トラックドライバーの仕事は、かつては長時間労働や厳しい労働環境というイメージがありましたが、近年は働き方改革や人材不足の影響で、福利厚生の充実や労働環境の改善が進んでいます。

法定福利厚生に加え、資格取得支援や住宅補助などの法定外福利厚生も整備されており、ドライバーにとって働きやすい職場環境が整ってきました。

また、仕事内容や給与、休日数など、福利厚生以外の面でも魅力的な条件が揃っています。トラックドライバーの仕事は、これからますます注目される職業といえるでしょう。