自動車整備士として働くあなたにとって、1級資格は憧れでありながら「本当に必要なのか?」と悩む存在かもしれません。
最高峰の国家資格である1級自動車整備士は、取得は困難ですが、変化する自動車業界に対応する強力な武器となります。
この記事では、1級自動車整備士の仕事内容から試験の難易度、給料事情、未来のキャリアパスまで、現役整備士の視点から徹底解説します。
- 1級自動車整備士の具体的な仕事内容と、2級との違い
- 1級自動車整備士の資格取得にかかる費用や試験の難易度
- 給料アップ以外の1級資格がもたらす本当のメリット
1.1級自動車整備士とは?最高峰の資格がもたらす未来とは

自動車整備士の最高峰に位置する1級資格は、取得が難しいからこそ大きな価値を持ちます。
この章では、1級自動車整備士がどのような資格で、なぜ取得者が少ないのか、その背景を詳しく見ていきましょう。
自動車整備士の最高峰「1級」はどんな資格?
1級自動車整備士:最高峰の国家資格
車両のスペシャリスト
最高レベルの自動車整備士
幅広い整備範囲
自動車整備士の国家資格の中で、最も高いレベルに位置するのが1級自動車整備士です。
その中でも一般的に「1級小型自動車整備士」を指し、この資格を取得すると、総重量8トン未満、最大積載量2トン以下、乗車定員10名以下の普通自動車や、四輪・三輪の小型自動車、軽自動車など、幅広い種類の車両の整備を網羅的に行うことが可能になります。
2級や3級が「ガソリン」「ジーゼル」「シャシ」といった特定の専門分野に分かれているのに対し、1級はたったひとつの資格ですべての整備範囲をカバーできるのが最大の特徴です。
そのため、車両全体を俯瞰して診断・整備する高度なスキルが求められ、特に複雑な故障や最新技術が搭載された車両の対応に強みを発揮します。

この資格は、単なる修理作業者ではなく、自動車の専門家として、より深い知識と技術を持つことの証明となるでしょう。
なぜ1級資格を持つ整備士は、全体の約3~4%しかいないのか?
2級で十分
1級自動車整備士の資格を持つ人が、整備士全体のわずか3%ほどしかいないのには、いくつかの理由があります。
最も大きな要因は、多くの整備工場において、2級自動車整備士の資格があれば、日々の業務のほとんどを滞りなくこなせるためです。
現状、法律や業務上の制約で1級資格が必須となる場面は非常に限られています。そのため、多くの現役整備士は、時間や費用をかけてまで難関の1級資格を取得する必要性を感じにくいのが実情です。
さらに、1級資格取得には、専門学校での長期的な学習や、2級取得後の実務経験を積むといった時間と労力がかかるため、その負担に見合うだけの明確なメリット(特に給与面)が見えにくいことも、取得者が少ない背景として挙げられます。

しかし、この希少性こそが、今後の市場価値を高める要因となり得るとも考えられます。
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2.1級自動車整備士の「仕事内容」と「2級との違い」を徹底比較

1級自動車整備士の仕事は、単なる車の修理だけにとどまらず、より専門的で複雑な領域に踏み込みます。
この章では、1級整備士に求められる高度な専門知識と、2級整備士との具体的な業務内容の違いについて深掘りしていきます。
1級整備士が担当する具体的な仕事とは?
1級自動車整備士に求められる仕事
最新技術への対応
電気自動車(EV)、ハイブリッド車、自動運転技術など、高度な電子制御システムの整備や診断を行います。
お客様へのコンサルティング
故障原因を分かりやすく説明したり、今後のメンテナンス計画を提案するなど、専門的な視点から顧客対応を行います。
技術指導・マネジメント
チームリーダーとして、他の整備士の技術指導や工場全体の品質管理など、マネジメント業務を担います。
1級自動車整備士に求められる仕事は、多岐にわたります。
まず、最も特徴的なのは、電気自動車(EV)やハイブリッド車、自動運転技術が搭載された車両など、最新技術が使われている車の整備です。
これらの車両は、従来のガソリン車とは異なる複雑な電子制御システムやバッテリー機構を搭載しており、診断や修理にはより専門的な知識と経験が不可欠です。
また、1級資格を持つ整備士は、お客様に対するコンサルティング業務も担当することが多くなります。
故障の原因を専門的な視点からわかりやすく説明したり、今後のメンテナンス計画を提案したりと、お客様の信頼を築く重要な役割を担います。
さらに、チームリーダーとして他の整備士の技術指導や教育、工場全体の品質管理やマネジメント業務も任されるなど、業務範囲が大きく広がります。

単なる修理技術だけでなく、高度なコミュニケーション能力やマネジメントスキルも必要とします。
2級にはない1級ならではの「プロの技術力」
1級自動車整備士と2級自動車整備士の最も大きな違いは、その知識の網羅性と故障診断能力にあります。
2級が「ガソリン」「ジーゼル」「シャシ」といった特定の分野に特化しているのに対し、1級はこれらすべてを網羅し、車両全体をトータルで診断する能力を証明します。
1級整備士は、高度な電子制御システムに関する深い知識と、テスターなどの専用機器を駆使した専門的な故障診断能力を持っているため、他の整備士が手こずるような難易度の高い故障も解決に導くことができます。

「オールマイティな知識」と「専門的な故障診断能力」こそが、2級にはない1級ならではのプロの技術力であり、お客様からの信頼を勝ち取る最大の武器となります。
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3.1級自動車整備士になるには?受験資格と資格取得までの道のり

1級自動車整備士の資格取得を目指すには、定められた受験資格を満たす必要があります。ここでは、効率的に資格を取得するためのルートや、具体的な試験の流れについて詳しく解説します。
最短ルートは専門学校?受験資格の条件
1級自動車整備士の資格試験を受験するには、いくつかの受験資格を満たす必要があります。
一般的なルート
最も一般的で最短のルートとされるのが、国土交通大臣から認定を受けた一種養成施設(自動車整備士の専門学校や自動車大学校など)で所定の課程を修了することです。
メリット
このルートの最大のメリットは、国が定めるカリキュラムに沿って効率的に知識と技術を習得できるだけでなく、卒業することで実技試験が免除される点にあります。
専門学校に通わない場合
一方、専門学校に通わない場合は、まず3級、そして2級と段階的に資格を取得し、その後、車種ごとに定められた実務経験を積む必要があります。
メリット
このルートは時間がかかりますが、実際の現場で経験を積みながら資格取得を目指せるという利点があります。

自分のキャリアプランや学習スタイルに合わせて、最適なルートを選ぶことが重要です。
資格取得までの具体的な流れと手続き
登録試験から国家資格取得まで
1級自動車整備士になるには、まず日本自動車整備振興会連合会が実施する「自動車整備技能登録試験(登録試験)」を受験するのが一般的です。
これは国家資格に直結する試験であり、登録試験に合格すると、国が実施する「自動車整備士技能検定試験(検定試験)」が免除されます。
この免除制度を適用するために、合格後2年以内に「全免申請」という手続きを行うことで、正式に国家資格を取得できます。
登録試験は「筆記」「口述」「実技」の3つの試験から構成されており、それぞれ合格することで次の段階へと進めます。

全免申請に必要な書類は、卒業した学校の種類などによって異なるため、事前に各都道府県の自動車整備振興会に問い合わせて、必要な手続きをきちんと把握しておくことが大切です。
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4.1級自動車整備士試験の概要と難易度を解説

1級自動車整備士の試験は、その専門性の高さから非常に難易度が高いとされています。
ここでは、試験の具体的な内容やスケジュール、そして過去のデータからその難しさを紐解いていきましょう。
試験は年に1回!試験内容とスケジュール
項目 | 内容 | 備考 |
実施頻度 | 年1回 | |
試験スケジュール | 筆記: 3月 口述: 5月 実技: 8月 | 段階的に実施 |
筆記試験 | 形式: マークシート 問題数: 50問 時間: 100分 出題範囲: 車両の構造・機能、修理方法、法規など広範囲 | 最新技術の問題も含まれるため、過去問対策だけでは不十分 |
口述試験 | 形式: 口頭による知識確認 問題数: 2問 時間: 10分 | |
実技試験 | 形式: 実際の工具を使用した作業能力を評価 問題数: 4問 時間: 40分 |
試験範囲は広く、特に筆記試験では最新の自動車技術に関する問題も含まれるため、単なる過去問対策だけでは不十分であり、日頃から新しい知識を吸収していく姿勢が求められます。
意外と知られていない口述・実技試験のポイント
1級自動車整備士の試験は、筆記試験が最も注目されがちですが、合格への鍵を握るのは口述試験と実技試験です。
多くの受験者は筆記試験の学習に集中し、口述・実技対策がおろそかになりがちですが、これらが合否を分けることも少なくありません。
- 口述試験
整備に関する基本的な知識や、故障診断の手順、使用する工具や測定器の取り扱い方法などについて口頭で問われるため、知識の暗記だけでなく、論理的に説明する能力も必要となります。 - 実技試験
実際の車両や部品を使用して点検・分解・組み立てを行い、正確かつ迅速な作業が求められます。特に、安全確認や工具の正しい使い方など、普段の実務で身についているかどうかが試されます。
これらの試験は、机上の知識だけでなく、長年の実務経験で培われたスキルが大きく影響します。
過去のデータで見る合格率の推移と難易度の変化
1級自動車整備士試験 合格率データ
筆記試験
65.7%
口述試験
98.6%
※令和6年度第2回(第110回)データ
1級自動車整備士試験の難易度を客観的に見る上で、過去の合格率データは非常に参考になります。
令和6年度第2回(第110回)のデータによると、筆記試験の合格率は65.7%、口述試験の合格率は98.6%でした
口述試験の合格率が極めて高い一方で、筆記試験の合格率は年度によって大きく変動し、広範かつ深い知識をしっかりと身につける必要があることを物語っています。
特に、近年はハイブリッド車や電気自動車、先進安全技術に関する出題が増加傾向にあり、最新の技術動向を常にキャッチアップすることが合格への重要な要素となっています。
参考:令和6年度第2回(第110回)自動車整備技能登録試験「学科試験」の試験結果について
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5.1級自動車整備士のリアルな給料事情と資格手当の相場

多くの人が資格取得を考える際に気になるのが、その資格がどれだけ給料に反映されるかです。
ここでは、1級自動車整備士の給料の現状と、給与以外のキャリアメリットについて正直に解説します。
給料は本当に上がる?2級と変わらないってホント?
1級整備士の平均年収は400万円~500万円程度とされ、残念ながら2級整備士の給料と大きく変わらないのが現状です。 この背景には、中小規模の整備工場では1級資格に対する明確な給与規定がない場合も少なくないという実情があります。
給与アップを目的に1級を目指す場合は、事前に勤務先や転職先の企業で1級資格に対する手当がどれくらい出るのかを確認することが非常に重要です。資格手当の相場は会社によって異なりますが、月数千円から1万円程度が一般的とされています。
また、この点が、1級整備士が少ない理由の一つでもあり、資格取得のコストや労力と、給与面でのメリットを天秤にかける必要があるのが現実です。
給料アップ以外の1級資格がもたらすキャリアの付加価値
給料が上がりにくいという現実がある一方で、1級自動車整備士の資格には、給料では測れない大きな価値があります。
①会社内での評価向上
最高峰の資格を持つことで、社内での信頼が高まり、重要な故障診断や難易度の高い整備、新人教育など、責任のあるポジションを任される機会が増えます。
②転職時の強力な武器になる
1級資格は、高度な専門知識と技術を持っていることの証明となり、特に最新技術に対応できる整備士を求める企業からは高い評価を得られます。
③同僚や顧客からの信頼
この資格を持つことで、顧客は安心して整備を任せることができ、同僚からも頼られる存在となります。そして何より、整備士としての自信とやりがいを得られるでしょう。
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6.なぜ今、1級自動車整備士の資格を取るべきなのか

1級自動車整備士の資格は、給料アップだけが目的ではないことがご理解いただけたでしょう。では、なぜ今、あえてこの難関資格に挑戦する意味があるのでしょうか。
自動車業界は、電気自動車(EV)や自動運転技術の急速な普及により、かつてない大きな変革期を迎えています。
従来のガソリン車やディーゼル車とは根本的に異なる知識と技術が求められる時代において、1級自動車整備士が持つ新技術への対応力は、今後ますますニーズが高まっていくでしょう。
全国で2級整備士が圧倒的多数を占める現状の中で、1級資格を持つことは、労働市場での希少価値の高い存在となることを意味します。
特に、高度な故障診断技術や複雑な電子制御システムの深い理解が必要な現代車両において、1級整備士の高度な専門知識は不可欠な存在となっています。

この資格は、技術革新の波に取り残されることなく、常に時代の最先端で活躍し続けるための強力なパスポートとなるのです。
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7.1級自動車整備士はキャリアを加速させる最強の武器
1級自動車整備士の資格は、単なる名誉や給料アップのためだけにあるわけではありません。
確かに、取得には時間と労力が必要で、給与面での直接的な見返りが少ないという現実もあります。しかし、この資格は、これからの自動車業界の変化に対応するための、最強の武器となります。
電気自動車や自動運転技術が普及する中で、従来の整備技術だけでは対応できない高度な知識とスキルが求められるようになります。
1級資格は、これらの最新技術を習得していることの証明であり、市場でのあなたの希少価値を飛躍的に高めるでしょう。
また、お客様からの厚い信頼を得て、単なる修理作業者から「技術コンサルタント」へと役割を広げることができます。
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