白ナンバートラックと緑ナンバートラックは、ともに事業用トラックとして使用されますが、その違いを理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。
ナンバープレートの色の違いを知ることは、事業者にとって車両選択や法令遵守の面でとても大切なことです。
本記事では、白ナンバーと緑ナンバーの違いについて、わかりやすく解説します。
- 白ナンバーと緑ナンバーの定義と特徴
- 白ナンバーと緑ナンバーの違い(税金、点検整備、運搬物など)
- ナンバー選択の際の留意点とアルコールチェック義務化への対応
1.白ナンバートラックとは?

白ナンバーとは、自家用車・商用車として登録しているナンバーのことです。
ナンバープレート(自動車登録番号票)は道路運送車両法によって色や様式が定められており、白ナンバーは一般的に「白地に緑文字のナンバープレート」を付けています。
白ナンバーの定義や特徴
白ナンバートラックは、自社で取り扱っている商品などの荷物を無償で運ぶという目的で使用可能です。しかし、他社の商品を輸送したり、送迎など事業用として運用し運賃や費用が発生する行為は違法となります。
営業行為を行うためには、「一般貨物自動車運送事業」または「特定貨物自動車運送事業」の許可が必要不可欠です。
白ナンバートラックのナンバープレートの色や様式
先述のように、白ナンバートラックのナンバープレートは、白地に緑文字で表示されています。
この色と様式は、道路運送車両法で定められた基準に則っており、車両の用途や種類によって異なるナンバープレートが割り当てられています。
白ナンバーは自家用車を示すものであり、事業用車両とは明確に区別されています。
白ナンバートラックのメリット
白ナンバートラックの最大のメリットは、事業用車両に比べて維持コストが安いことです。
自動車税や重量税、車検費用などが割安に設定されており、経済的な負担が軽減されます。また、運転者の資格要件や点検整備の頻度なども緩和されているため、事業者にとっては管理面でのメリットもあります。
2.緑ナンバートラックとは?

緑ナンバーとは、運送業(一般貨物自動車運送事業)に使用する営業用自動車として登録しているナンバーです。緑ナンバーは一般的に「緑地に白文字のナンバープレート」を付けています。
緑ナンバーの定義や特徴
緑ナンバートラックは、他社からの依頼に応じて、事業用として貨物・旅客を有償で運搬することができます。そのため、「営業ナンバー」とも呼ばれています。
運送事業者は、緑ナンバーを取得することで、法的に認められた範囲で営業活動を行うことができます。
緑ナンバートラックのナンバープレートの色や様式
上記に記載のとおり、緑ナンバートラックのナンバープレートは、緑地に白文字で表示されています。この配色は、白ナンバーとは明確に異なっており、一目で事業用車両であることを識別できます。
法律で定められた様式に則っているため、不正な改変などは許されません。
緑ナンバートラックのメリット
緑ナンバートラックの最大の特徴は、事業用運送に使用できる点です。運送事業者は、緑ナンバーを取得することで、他社からの運送依頼を受けて有償で貨物や旅客を運ぶことができます。
これにより、事業の幅を広げ、収益機会を増やすことが可能となります。一方で、事業用車両としての管理責任や法的義務も伴うため、適切な運用が求められます。
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3.白ナンバーと緑ナンバーの違いは?
白ナンバートラックと緑ナンバートラックには、上記以外にもいくつかの重要な違いがあります。事業者はこれらの違いを理解し、自社の事業形態に合わせて適切なナンバーを選択する必要があります。
運転前後のアルコール検査の違い
改正の概要
2023年12月1日、道路交通法の重要な改正が施行されました。この改正により、白ナンバー(自家用自動車)の事業者にも、アルコールチェッカーを用いた運転前後のアルコール検査が義務付けられることになりました。
これは、従来から緑ナンバー(事業用自動車)事業者に課せられていた規制を、白ナンバー事業者にも拡大したものです。
適用範囲
この新たな規制は、従業員が業務で自動車を運転する全ての事業者に適用されます。従業員数や保有車両台数に関わらず、全ての該当事業者がこの規制の対象となります。
白ナンバー事業者の義務
白ナンバー事業者は、アルコール検知器を常時有効な状態に保ち、運転の前後にアルコール検査を実施し、その記録を1年間保存することが求められます。
白ナンバーと緑ナンバーの違い
検査方法
- 白ナンバー事業者
アルコールチェッカーによる検査 - 緑ナンバー事業者
より精密なアルコール検知器を使用
罰則
- 白ナンバー事業者
法人は50万円以下の罰金
個人事業主は6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金 - 緑ナンバー事業者
法人は100万円以下の罰金
個人事業主は1年以下の懲役または100万円以下の罰金
共通する規制内容
- 運転前の検査
乗務開始前にアルコールチェックを行い、アルコールが検知された場合は運転を禁止 - 運転後の検査
乗務終了後に次回の乗務までの間の飲酒状況を確認 - 記録保存
検査結果を記録し、1年間保存することが義務付けられている
税金の違い
白ナンバーと緑ナンバーでは、「自動車税」と「自動車重量税」の税額に差があります。最大積載量に応じて、白ナンバーの方が高い税率が適用されます。
ただし、緑ナンバーは事業用車両としての要件を満たす必要があり、台数確保などのコストがかかる点にも留意が必要です。
最大積載量 | 白ナンバー(年間) | 緑ナンバー(年間) |
---|---|---|
2トン | 11,500円 | 9,000円 |
4トン | 20,500円 | 15,000円 |
8トン | 40,500円 | 29,500円 |
点検整備のコストの違い
車両総重量によって定期点検整備の期間が異なります。8トン未満の車両では、白ナンバーが6ヶ月、緑ナンバーが3ヶ月ごとの点検となります。
点検整備を怠ると法令違反となるため、コスト面だけでなく、確実な実施が求められます。
車両総重量 | 白ナンバー | 緑ナンバー |
---|---|---|
8トン未満 | 6ヶ月ごと | 3ヶ月ごと |
8トン以上 | 3ヶ月ごと | 3ヶ月ごと |
運搬物の違い
白ナンバーと緑ナンバーのトラックでは、運搬できる物に大きな違いがあります。
白ナンバーのトラックは、自社の製品や荷物の輸送に使用されます。例えば、食品メーカーが自社製品を販売先に届ける際、白ナンバーのトラックを利用することができます。つまり、自社の所有物のみを運ぶ場合、白ナンバーで問題ありません。
一方、緑ナンバーのトラックは、他社や個人からの依頼を受けて、貨物を運搬するために使用されます。また、旅客の送迎にも使われます。これらのサービスを提供し、運賃を収益として得る場合、緑ナンバーの取得が法律で義務付けられています。
4.白ナンバーでは運送業ができない

白ナンバーは自家用車を指し、緑ナンバーは事業用車両に用いられます。つまり、白ナンバー車を使って運送業を営むことは、原則として認められていないのです。
そもそも運送業とは
運送業とは、他者の需要に応じ、有償で自動車を使用して貨物を運送する事業のことを指します。
貨物自動車運送事業法第2条では、「他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貨物を運送する事業」と定義されています。
ここでポイントとなるのが「他人の需要に応じ」「有償で」という部分です。つまり、自社の貨物を運ぶためではなく、他者からの依頼を受けて運送を行い、その対価として運賃を得る事業が「運送業」に該当するのです。
こうした事業を営む場合、車両は原則として緑ナンバーを取得する必要があります。
白ナンバー×運送業は違法行為
前述の通り、運送業は緑ナンバーの事業用車両で行うことが原則とされています。一方で、白ナンバーの自家用車は、あくまで自社の貨物輸送のみに使用が限定されます。
道路運送法第78条では、白ナンバーの自家用車を有償で貨物輸送に使用することを禁じています。
また、貨物自動車運送事業法第3条では、運送業を営むためには国土交通大臣の許可が必要であると定められています。
つまり、白ナンバー車で運送業を営むことは、これらの法律に違反する行為であり、無許可運送として罰則の対象となります。
こうした規制により、運送業への参入基準を設けることで、安全性や信頼性を確保する目的があります。
白ナンバーで違法行為をした際の罰則
白ナンバー車での違法運送に対する罰則
白ナンバー車を使って、貨物自動車運送事業法に違反する形で貨物運送を行うと、以下のような罰則が適用される可能性があります。
- 貨物自動車運送事業法第3条第1項違反
- 内容: 許可を受けずに貨物自動車運送事業を経営した場合
- 罰則: 3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はこれらの併科
- 貨物自動車運送事業法第35条第1項違反
- 内容: 第3条第1項の許可を受けないで貨物自動車運送事業を経営した場合
- 罰則: 1年以下の懲役又は150万円以下の罰金
これらの罰則は、個人事業主だけでなく、違反行為に関与した法人の代表者や従業員にも適用される可能性があります。
違反を繰り返したり、違反の程度が著しかったりする場合には、より重い処罰を受けることがあります。
- 貨物自動車運送事業法(昭和57年7月1日法律第83号)
- 国土交通省自動車局「貨物自動車運送事業関係行政処分等指針について」(平成21年9月29日国自貨第85号)
引っ越し業者には例外がある
ここまで、白ナンバー車を運送業に使用することは原則禁止であると説明してきました。しかし、引っ越し業者に限っては、一定の条件の下で白ナンバー車の使用が認められています。
引越し業界では通常、事業用車両として緑ナンバーまたは黒ナンバーの車両のみを使用することが義務付けられています。
しかし、引越しの需要が急増する繁忙期には、一定の条件の下でレンタカー(白ナンバー車両)の使用が認められる特例があります。
特例の適用条件
- 期間: 毎年3月15日から4月15日までの間で、連続する15日間以内に限る
- 対象事業者: 事業用車両を5台以上保有する一般貨物自動車運送事業者のみ
- 手続き: 事前に国土交通省への申請が必要
この特例は、引越しの需要が集中する春の繁忙期に、事業者が一時的に車両を増強できるようにするための措置です。
ただし、事業用車両を一定規模以上保有する事業者に限定されており、レンタカーの使用には事前申請が必須となります。
注意点
特例の適用期間は最大15日間であり、それを超えてレンタカーを使用することはできません。
レンタカーを事業用車両として使用する際は、適切な保険への加入や安全運転の徹底など、通常の事業用車両と同等の管理が求められます。
この特例は引越し業界特有のものであり、他の運送業では適用されません。
引越し業者は、この特例を活用することで繁忙期の需要に柔軟に対応することができますが、特例の適用条件や手続きを遵守し、安全性と法令順守を確保することが重要です。
- 貨物自動車運送事業法第3条第1項
- 貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の5
- 国土交通省自動車局「引越事業者が繁忙期にレンタカーを使用する特例措置について」(平成25年1月29日国自貨第237号)
5.白?緑?目的に合ったナンバーかを確認しよう

白ナンバートラックと緑ナンバートラックは、事業用途や法的要件が異なります。白ナンバーは自家用車として自社の運搬に使用できますが、緑ナンバーは事業用運送に用いることができます。
税金や点検整備のコストにも差があるため、事業者はメリットとデメリットを比較検討し、自社に最適なナンバーを選択する必要があります。
また、2023年12月の道路交通法改正により、白ナンバー事業者にもアルコールチェックが義務化されました。運送業界全体として、飲酒運転防止への意識を高め、検査体制の強化が求められています。
事業者は、白ナンバーと緑ナンバーの違いを正しく理解し、コンプライアンスを徹底しながら、安全で効率的な運送事業を展開していくことが重要です。