運送業界において、安全で効率的な車両運行を支える重要な役割があります。
それが「運行管理」です。運行管理とは、貨物や旅客を運ぶ車両の運行を適切に管理し、安全性と効率性を確保する業務のことを指します。
近年、物流の需要増加や交通事故防止の観点から、運行管理の重要性がますます高まっています。
適切な運行管理は、交通安全の確保だけでなく、効率的な運送業務の実現や法令遵守の徹底にもつながる、運送業界になくてはならない存在です。
本記事では、運行管理の基本的な概念から具体的な業務内容、さらにはメリットやデメリットまでを解説します。
- 運行管理の具体的な業務内容と責任
- 運行管理者になるための資格取得方法
- 運行管理業のメリットや現状
1.運行管理には2種類ある

運行管理は、大きく分けて「貨物」と「旅客」の2種類に分類されます。これらは運ぶ対象が異なるため、それぞれに特有の管理方法や注意点があります。
ここでは、貨物運行管理と旅客運行管理の特徴と違いについて詳しく見ていきましょう。
貨物運行管理
貨物運行管理は、主にトラックなどを使用して物資を輸送する際の管理を指します。この分野では、以下のような特徴があります。
- 積載量管理
車両の最大積載量を守り、過積載を防止する - 配送ルートの最適化
効率的な配送ルートを計画し、燃料コストと時間を節約する - 荷物の安全確保
荷物の破損や紛失を防ぐための適切な積み方や固定方法を指示する
貨物運行管理では、物流の効率化と同時に、交通安全や環境への配慮も重要な課題となっています。
旅客運行管理
旅客運行管理は、バスやタクシーなどを使用して人を輸送する際の管理を指します。この分野の特徴は以下の通りです。
- 乗客の安全確保
乗客の安全を最優先し、事故防止に努める - 定時運行
時刻表に沿った正確な運行を維持する - 運送の質の向上
乗客に快適な移動環境を提供する
旅客運行管理では、安全性と快適性のバランスを取りながら、公共交通機関としての社会的責任を果たすことが求められます。

貨物と旅客の運行管理は、適用される法律や規制も異なります。例えば、貨物運送では貨物自動車運送事業法が、旅客運送では道路運送法が主に適用されます。このため、運行管理者は担当する分野の法規制を学び、遵守する必要があります。
2.運行管理の重要性

運行管理は、運送業界において大切な役割を果たしています。安全、経済、法令遵守、そして社会的な観点と多岐にわたります。
以下に、運行管理が果たす主要な役割とその重要性について詳しく見ていきましょう。
安全面での重要性
- 事故防止
適切な運行計画と運転手の管理により、交通事故のリスクを大幅に低減します。 - 運転手の健康管理
疲労度チェックや健康診断の実施により、運転手の健康状態を把握し、安全運転を確保します。 - 車両の点検整備
定期的な点検と整備により、車両トラブルによる事故を防ぎます。
経済面での重要性
- 効率的な配車
最適なルート選択と効率的な配車により、燃料コストと人件費を削減します。 - 燃費改善
エコドライブの推進や車両の適切な管理により、燃費を向上させます。 - コスト削減
事故や違反の減少により、保険料や罰金などの不要なコストを抑制します。
法令遵守における役割
- 労働時間管理
運転手の労働時間を適切に管理し、過労運転を防止します。 - 速度管理
法定速度の遵守を徹底し、安全運転と燃費向上を両立します。 - 過積載防止
積載量の適正管理により、道路損傷の防止と安全運行を確保します。
社会的な観点からの重要性
- 安定した物流・人流の確保
円滑な運行管理により、社会経済活動の基盤となる物流・人流を安定的に維持します。 - 環境負荷の低減
効率的な運行と環境に配慮した運転により、CO2排出量の削減に貢献します。
運行管理の重要性は、運送業界が直面する様々な課題解決にも直結しています。
例えば、深刻化するドライバー不足に対しては、効率的な配車と労務管理により、限られた人員で最大の効果を発揮することができます。
また、長時間労働の是正や事故リスクの低減にも、適切な運行管理が不可欠です。
このように、運行管理は単なる業務の一部ではなく、安全で効率的な運送業務の中核的な機能を担っているのです。
3.運行管理の業務内容とは?

運行管理者は、安全で効率的な運送業務を実現するために、多岐にわたる業務を担当しています。
ここでは、運行管理者の主要な業務内容について詳しく見ていきましょう。
車両管理
車両管理は安全運行の要であり、定期点検整備の実施・管理、日常の車両状態チェック、修理計画の立案・実行、そして燃費管理の業務となります。
特に重要なのは、日々の点呼時に運転手から車両状態の報告を受け、必要があれば整備士と連携して迅速に対応することです。
細やかな管理により、車両トラブルによる運行遅延や事故を未然に防ぎ、安全で効率的な運行を実現します。
安全管理
安全管理は運行管理者の最重要責務の一つであり、事故防止対策の立案・実施、定期的な安全教育、事故発生時の緊急対応、安全運転技術の向上支援の業務などです。
ドライブレコーダーの映像を活用した安全運転指導や、季節に応じた安全運転講習会の開催が行われています。
これらの活動を通じて、運転手の安全意識を高め、事故リスクの低減を図ることが安全管理の目的です。
労務管理
運行管理者の重要な役割の一つに、運転手の労働環境の適切な管理があります。労働時間の管理・記録、健康状態の把握・管理、労働環境の改善提案、そして休憩・休息時間の確保が含まれます。
具体的な取り組みとしては、デジタルタコグラフを用いた運転時間の正確な把握による過労運転の防止や、定期的な健康診断の実施、ストレスチェックの導入などがあります。
これらの施策により、運転手の安全と健康を守り、質の高い運行サービスの提供を可能にします。
スケジュール管理
効率的な運行を実現するためのスケジュール管理は運行管理者の重要な業務です。日々の配車計画の立案、長期的な運行ダイヤの作成、効率的な人員配置の実施、そして急な変更への対応が含まれます。
具体的には、天候や交通状況、ドライバーの体調を考慮しながら日々の配車計画を立てるとともに、繁忙期を見据えた長期的な人員配置計画も行います。
綿密なスケジュール管理により、安定した運行サービスの提供と効率的な経営の両立を図ることができます。
配送ルートの管理
運行管理者の重要な業務の一つに、効率的で安全な配送ルートの管理があります。
最適ルートの選定、渋滞情報の収集と回避策の立案、納期管理と顧客とのコミュニケーション、そして燃費効率を考慮したルート設計が含まれます。
GPS車両動態管理システムを活用し、リアルタイムの交通情報を基に最適なルートを選定して運転手に指示を出します。
細やかなルート管理により、定時配送の実現、燃費の改善、そして顧客満足度の向上を図ることができます。

これらの業務に加えて、運行管理者は日々の点呼、運行指示、運転日報の確認といった日常的なタスクも行います。朝夕の点呼では、運転手の健康状態や疲労度をチェックし、安全な運行が可能かどうかを判断します。
適切な運行管理により、
- 燃料費や人件費などのコスト削減
- 事故減少による保険料の低減
- 納期順守による顧客満足度の向上
- 安全で信頼できる企業としてのイメージ向上
にもつながります。
このように、運行管理者は多岐にわたる業務を通じて、運送業の安全性、効率性、そして収益性の向上に重要な役割を果たしているのです。
4.運行管理者に必要な【運行管理者資格者証】の取得方法
運行管理者として正式に選任されるためには、「運行管理者資格者証」が必要です。
この資格者証は、運送事業者が運行管理者を選任する際に必須となる公的な証明書です。資格者証の取得方法には主に2つあります。
- 運行管理者試験に合格する
- 実務経験により国土交通大臣の認定を受ける
運行管理者試験は年2回実施され、関係法令や実務上の知識・能力が問われます。一方、実務経験による認定は、3年以上の経験と所定の講習修了が要件となります。
5.運行管理者の留意点

運行管理者は、運送業務の安全性と効率性を確保する重要な役割を担っています。その責任の重さゆえ、運行管理者には特別な留意点があります。
ここでは、運行管理者が特に注意すべき二つの重要な点について詳しく解説します。
ドライバーとしては働けない
運行管理者の最も重要な留意点の一つは、原則としてドライバーとして働くことができないという点です。
これは以下の理由によるものです。
- 業務の独立性確保
運行管理者は、ドライバーの労務管理や安全管理を客観的に行う必要があります。自身がドライバーとして働くことで、この独立性が損なわれる可能性があります。 - 緊急時の対応
事故や災害などの緊急時に、迅速かつ適切な対応を取るためには、運行管理者が常に管理業務に専念できる状態にある必要があります。 - 法令遵守の徹底
運行管理者は、労働時間管理や安全運転指導などを通じて、法令遵守を徹底する役割があります。自身がドライバーとして働くことで、この役割が適切に果たせなくなる可能性があります。
ただし、小規模事業者や緊急時など、例外的にドライバーとして業務に就くことが認められる場合もあります。しかし、運行管理業務に支障をきたさないよう十分な配慮が必要です。
定期的な講習が必須
運行管理者には定期的な講習の受講が義務付けられており、これは安全で効率的な運行管理のために重要な役割を果たしています。
2年に1回の受講が必要とされるこの講習では、関係法令や安全管理技術の最新情報を学び、実践的な能力を向上させることができます。
また、他の運行管理者との情報交換の場としても機能し、業界全体の安全性向上に貢献しています。
講習内容には関係法令、安全管理、過労運転の防止などが含まれ、運行管理者としての知識と技能を常に最新の状態に保つことが可能となります。
継続的な学習と能力向上の機会は、運送業界の安全と効率性を支える重要な取り組みの一つです。

これらの留意点を守ることは、単なる規則の遵守以上の意味があります。運行管理者が管理業務に専念し、常に最新の知識を持って業務にあたることで、業務の安全性が確保され、法令違反のリスクが低減し、会社全体の信頼性向上につながるのです。
6.運行管理者のメリット

運行管理者という職種には、キャリア形成の観点から見て多くのメリットがあります。ここでは、運行管理者の主な3つのメリットについて詳しく解説し、そのキャリアの可能性について見ていきましょう。
内勤として勤務できる
運行管理者の大きな魅力の一つは、内勤職として勤務できることです。ドライバーの仕事と比べて体力的な負担が少なく、長時間の運転や荷物の積み下ろしなどから解放されます。
基本的に定時勤務であることが多いため、体力の衰えを気にせず長期的に働き続けられることから、運送業界でのキャリア形成に適しています。
運行管理者は運送業界で安定したキャリアを築きたい人にとって、魅力的な選択肢となっています。
キャリアが安定している
運行管理者は法令で定められた必置の職種であり、需要は高く安定しています。運送事業者は一定規模以上の事業所に運行管理者を置くことが義務付けられているため、法的な需要が常に存在します。
物流は経済活動の基盤であり、その重要性から運行管理者の需要も安定しているといえるでしょう。さらに、運行管理の専門知識と経験は簡単に代替できないため、キャリアの安定性が高いのが特徴です。
運行管理者は運送業界において安定した将来性のある職業選択肢となっています。
即戦力として就職に有利
運行管理者の資格と経験は就職市場で高く評価されます。
関係法令や安全管理に関する専門知識、現場での実務経験、そして人員や車両の管理におけるマネジメントスキルが、大きな強みとなります。
運送会社間の転職だけでなく、物流関連の他職種への転職にも有利に働くでしょう。
さらに、運行管理者としてのキャリアは更なる発展の可能性を秘めています。
運送会社の管理職や経営層へのキャリアアップの道が開かれていることもあり、物流業界全般で知識とスキルを活かせるため、キャリアの選択肢が広がります。
7.運行管理者の実態
運行管理者の実態は、これらの要素が複雑に絡み合っています。
日々の業務では、管理業務から現場対応まで幅広い仕事をこなす必要があり、その多様性が仕事のやりがいにつながる一方で、ストレスの要因にもなり得ます。
運行管理者の勤務形態
運行管理者の勤務形態は、一般的な事務職とは異なる特徴を持っています。
基本的には日中の勤務が主ですが、ドライバーの出庫・帰庫時の点呼対応のため、早朝や深夜の勤務が必要になることがあります。
また、緊急時や繁忙期には長時間労働や不規則な勤務を強いられる場合もあり、ワークライフバランスの維持が課題となることがあります。
しかし、テクノロジーの進歩により、リモートでの点呼や管理が可能になりつつあり、勤務形態の改善が期待されています。
責任からのストレス
運行管理者は重要な責任を担う立場にあり、ストレスの要因となることがあります。安全管理の責任者として、事故や法令違反が発生した場合には責任を問われる可能性があります。
また、事故や災害時には迅速かつ適切な判断が求められ、精神的プレッシャーにさらされる可能性もあります。
これらの責任とプレッシャーは、運行管理者にとって大きなストレス源となる可能性があります。そのため、運行管理者自身のメンタルヘルスケアも重要な課題となっています。
ストレス管理や適切な休息、そして必要に応じて専門家のサポートを受けるなど、心身の健康を維持するための取り組みが不可欠です。
現場とのコミュニケーション
運行管理者の仕事において、ドライバーをはじめとする現場スタッフとのコミュニケーションは重要です。
安全運行を実現するためには、ドライバーとの強い信頼関係が不可欠ですが、管理する側とされる側という立場の違いから、時として摩擦が生じることもあります。
また、現場の状況を正確に把握し、適切な指示を出すためには、円滑な情報共有が欠かせません。
これらのコミュニケーション課題に対処するため、定期的なミーティングの実施やオープンな職場環境づくりなどの取り組みが行われています。
近年では、デジタルタコグラフやGPSシステムなどのテクノロジー導入により、業務効率化が進んでいます。
これらのツールは運行管理者の負担軽減にも貢献していますが、ドライバーとの信頼関係構築や緊急時の適切な判断など、人間的な要素が重要な部分では、依然として運行管理者の経験と能力が大きく問われます。
効果的な運行管理を実現するためには、テクノロジーの活用と人間的なコミュニケーション能力の両方が必要不可欠であり、運行管理者はこれらのバランスを取りながら日々の業務に取り組んでいます。

運行管理者の実態を理解することは、この職業を目指す人にとってとてもに重要です。責任の重さやストレスといった課題がある一方で、安全な運送業務を通じて社会に貢献できる、やりがいのある仕事であることも事実です。これらの実態を踏まえた上で、キャリアプランを考えることが、充実した職業生活につながるでしょう。
8.運行管理者が向いている方の特徴

運行管理者は、運送業界において重要な役割を担う職種です。
この職に就くにあたって、特定の資質や特徴を持つ人がより適していると言えます。ここでは、運行管理者に向いている人の主な特徴について詳しく見ていきましょう。
責任感が強い
運行管理者には強い責任感が求められます。
運送業務の安全確保に最終的な責任を負い、関係法令を熟知し確実に遵守する義務があります。さらに、緊急時には責任を持って迅速な判断を下す必要があります。
運行管理者の役割を果たすには、高い責任感を持つ人が適しています。
自身の判断や行動に責任を持ち、常に最善を尽くす姿勢が、運行管理者として成功する鍵となります。安全運行の実現、法令遵守の徹底、そして緊急時の適切な対応は、すべて運行管理者の責任感に基づいています。
責任感の強い運行管理者は、ドライバーや他のスタッフからの信頼も厚く、チーム全体の安全意識と業務効率の向上にも貢献するでしょう。
コミュニケーション能力が高い
運行管理者にとって、高いコミュニケーション能力は不可欠です。安全運行を実現するためには、ドライバーと円滑にコミュニケーションを取り、信頼関係を築く必要があります。
また、整備部門や営業部門など、他部署と連携する必要もあります。さらに、ドライバーに対して分かりやすく効果的な指導を行うことも重要な役割です。
コミュニケーション能力が高い運行管理者は、課題に適切に対応し、チーム全体の効率と安全性を高めることができます。
情報を正確に伝達し、相手の意見や状況を的確に理解する能力は、日々の業務から緊急時の対応まで、あらゆる場面で活かされます。
優れたコミュニケーション能力は、職場の雰囲気を良好に保ち、問題の早期発見と解決にも貢献します。
このように、コミュニケーション能力は運行管理に不可欠な要素であり、安全で効率的な運送業務の実現に大きく関係しています。
9.運行管理の重要性と魅力
運行管理者は、安全で効率的な運送業務を支える要となる存在です。テクノロジーの進化や社会の変化に伴い、その役割はますます重要になっています。
責任は重大ですが、社会に大きく貢献できるやりがいのある仕事です。運送業界でのキャリアを考える方にとって、運行管理者は魅力的な選択肢の一つとなるでしょう。