「整備士の仕事は好きだが、なかなか給料が上がらない」「将来の安定に不安がある」
自動車整備士として働く方、あるいはこれから整備の道を目指す方の中には、このような悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
特に、乗用車の整備士の場合、給与水準が他産業の平均と比べて伸び悩む傾向にあるのは事実です。
しかし、「バス整備士」は違います。その年収は、他の自動車整備士と比べて高い水準にあり、キャリアの安定性も群を抜いています。なぜバス整備士の年収は安定して高いのでしょうか?
その答えは、単なる技術力の評価ではなく、「国の法律によって、事業の存続に不可欠な法的資産として位置づけられているから」という構造的な優位性にあります。
この記事では、バス整備士の年収実態を、法的な側面とキャリア戦略の観点から徹底的に解説します。
- バス整備士の年収が安定して高い「法的・構造的な理由」
- 経験年数別のリアルな年収モデルと、資格手当による具体的な収入アップ戦略
- 年収アップに直結する「整備管理者」になるためのロードマップと具体的なステップ
1.バス整備士の年収はなぜ安定して高いのか?

バス整備士の年収が高い背景には、日本の労働市場における賃金上昇トレンドや大型車の整備技術が求められるという要因に加え、バス事業特有の「法的義務」が大きく関わっています。
この法的義務こそが、バス整備士の市場価値を構造的に高めている最大の理由です。
業界全体の平均年収と比較して高水準にある理由

一般的に、自動車整備士全体の平均年収は350万円から450万円程度で推移しています。
しかし、バス整備士の場合、キャリアスタートの段階から400万円を超える求人が多く、経験を積むことで平均年収400万円から600万円という水準に達します。
この差が生まれるのは、バスやトラックといった大型車両の整備には、より高度な専門知識と技術が求められ、一つ一つの点検・整備が重大な事故につながる可能性が高いためです。
特に多くの乗客の命を預かるバスにおいては、整備の質が企業の安全運行を左右する、まさに「経営の生命線」だからに他なりません。
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会社経営の「生命線」である整備管理者制度の存在
バス整備士の年収が安定して高い理由を語る上で、「整備管理者制度」の存在は避けて通れません。
これは、道路運送車両法によって定められた制度で、バス事業者は営業所ごとに必ず「整備管理者」を選任することが義務付けられています。
整備管理者は、バスの日常点検の管理、整備計画の策定、車検の実施などを統括する、安全運行の最高責任者の一人です。
もし、この整備管理者が選任されていない、あるいはその職務を適切に遂行していない場合、事業許可の取り消しや事業停止処分という、会社にとって致命的な罰則が科されます。

つまり、バス整備士、特に整備管理者資格を持つ人材は、企業の安全運行と事業継続そのものを担保する「事業に不可欠な存在」として、他の職種にはない高い価値と安定的な需要を常に持ち続けているのです。
2.バス整備士の年収実態とモデルケースを解説

次に、具体的な年収のモデルケースと、年収を構成する要素を詳しく見ていきましょう。
経験年数別のモデル年収と現実的なレンジ
バス会社や地域、残業時間によって幅はありますが、おおよその年収レンジは以下の通りです。
- 経験3年未満(初年度〜若手):400万円~450万円
- 経験5年~10年(中堅):450万円~550万円
- 経験10年以上・整備管理者(ベテラン):550万円~700万円以上
初年度で年収400万円を超えるケースが多いのは、多くのバス会社が「資格取得支援制度」を充実させており、入社後にすぐに資格を取得し、その分の資格手当が支給されるためです。
年収を構成する「基本給・賞与・資格手当」の構造
バス整備士の年収を押し上げる重要な要素が「資格手当」です。
年収は「基本給」+「残業代・諸手当」+「賞与」で構成されますが、特に資格手当は、毎月の給与に安定的に上乗せされるため、生涯年収に大きな影響を与えます。
- 三級自動車整備士:月額5,000円~10,000円程度
- 二級自動車整備士:月額10,000円~20,000円程度
- 一級自動車整備士:月額20,000円~30,000円程度
例えば、二級整備士の資格手当が毎月15,000円支給される場合、年間で18万円の収入アップに直結します。
この資格手当は、法律上求められる職務遂行能力に対する報酬であり、「市場価値を証明する重要な要素」とも言えるでしょう。
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2級自動車整備士の資格取得が年収にどれだけ影響するか、具体的なデータと収入アップの方法を詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。
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3.年収アップに直結!整備管理者になるためのロードマップ

バス整備士として最も市場価値が高く、年収アップに直結するキャリアパスは、「整備管理者」へのステップアップです。
整備管理者に求められる役割と仕事の重要性
整備管理者は、バスの整備部門における指揮官です。その主な役割は以下の通りです。
- 日常点検・定期点検の実施計画の策定と実施の指揮
- 点検・整備記録の作成と保管
- 故障や事故が発生した場合の原因究明と再発防止策の徹底
単なる技術者としてだけでなく、法令遵守と安全管理を担うマネジメント能力が求められるため、当然、一般の整備士よりも高い役職手当や給与が支給されます。
資格保有者が「選任前研修が免除」される法的優位性
整備管理者になるためには、基本的に「整備管理者選任前研修」を受講する必要があります。
しかし、一級、二級、三級のいずれかの自動車整備士資格を保有し、かつ2年以上の整備実務経験がある人は、この研修が免除されます。
これは、整備士資格を持つことが、会社にとって整備管理者選任のプロセスを大幅に簡略化できる「パスポート」となることを意味します。
企業が求める「即戦力」とは、技術力だけでなく、この「整備管理者としてすぐに選任できる法的要件を満たしていること」も含まれるため、資格は強力な武器となります。
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自動車整備士資格の全体像を把握したい方は、全14種類の資格の取得方法と最適な選び方を解説した完全ガイドをご覧ください。
資格取得支援制度を活用した効率的なステップアップ
「資格取得のための費用が心配」という方もご安心ください。
多くの優良なバス会社は、社員のキャリアアップを積極的に支援するため、「資格取得支援制度」を設けています。
これは、資格取得にかかる費用(受験料、講習費用、教材費など)を会社が全額または一部負担してくれる制度です。
この制度を活用すれば、自己投資のリスクを抑えつつ、市場価値を高める資格を効率的に取得できます。求人情報を見る際は、「資格取得支援制度あり」の有無を必ずチェックしましょう。
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働きながら資格を取得したい方には、実務経験を積みながら効率的に2級資格を取得する方法や職場選びのポイントを詳しく解説した記事がおすすめです。
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4.バス整備士の将来性:AI時代でも安定している理由

「自動運転技術が進むと、整備士の仕事はなくなるのではないか」という不安も耳にします。
しかし、バス整備士の将来性は極めて安定しており、むしろ自動運転技術は仕事を奪うものではなく「パートナー」になると考えられます。
AIは仕事を奪う「敵」ではなく「パートナー」になる
自動運転システムが搭載されたバスは、より複雑なセンサーや電子制御システムを搭載することになります。
これらの高度なシステムを診断・修理・調整するスキルは、AIではなく人間に求められる仕事です。
AIは単調な故障診断を効率化しますが、故障個所を特定するための「経験知に基づく推論」や、大型車両特有の複雑な機構に対する「人間による最後の確認」は、決して不要になりません。むしろ、知識をアップデートし続ける整備士の需要は高まります。
整備士から管理職や専門職へ広がるキャリアパス
バス整備士として培った安全管理や点検の知識は、整備部門にとどまらない幅広いキャリアパスにつながります。
例えば、整備部門の責任者である整備管理者から、さらに上位の運行管理者(ドライバーの労務・運行管理を行う国家資格)や、営業所全体の統括を行う営業所長など、マネジメント職への道が開かれます。
現場を知る整備士だからこそ、「安全」と「効率」の両立を実現できる管理職として、非常に重宝されるのです。
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整備士のキャリアアップや転職を考えている方は、転職を成功させるための志望動機の書き方や企業タイプ別のカスタマイズ術を解説した記事をチェックしてみてください。
■バス整備士への転職は派遣からスタートする選択肢も
未経験からバス整備士を目指す方や、まずは職場環境を確認してから正社員を検討したい方には、派遣からのスタートもおすすめです。カラフルスタッフィング メカニックは、車両整備士・メカニックに特化した人材派遣サービスとして、専門のコーディネーターがあなたの希望に合った職場をご提案。安定したバス整備士のキャリアへの第一歩をサポートします。
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5.安定したキャリアを築くための第一歩
バス整備士の年収が高いのは、「整備管理者制度」という法的な根拠に裏打ちされた、構造的な安定性があるためです。
この仕事は、単に機械を直すだけでなく、多くの乗客の安全と会社の事業継続を支える、極めて公共性が高く、社会的意義の大きい仕事です。
もしあなたが、安定した高収入と明確なキャリアアップの道筋を求めているなら、バス整備士は最も戦略的な選択肢の一つです。
まずは、資格取得支援制度が充実している企業を見つけ、第一歩を踏み出してみましょう。
この記事をきっかけに新しいキャリアに進む決断が決まれば幸いです。