ホンダディーラーで働く自動車整備士の年収は442.5万円と、業界平均を上回る水準となっています。
しかし、他メーカーとの比較や独自の昇給制度、実際の待遇面など、転職を検討する上で知っておくべき情報は多岐にわたります。
本記事では、ホンダディーラー整備士の具体的な年収データから転職成功のポイントまで、現役整備士や転職検討者が必要とする情報を網羅的に解説します。
- ホンダディーラー整備士の年収442.5万円の内訳と他メーカーとの比較データ
- Honda独自資格制度(HAST・HMSG)による昇給の仕組みと具体的な手当額
- 転職成功のための3つのポイントと実際の年収アップ事例
1.ホンダディーラー整備士の平均年収は442.5万円

ホンダディーラーで働く自動車整備士の平均年収は442.5万円となっており、業界全体の平均を上回る水準となっています。
この数字は初年度の年収であり、経験年数や資格取得により段階的に上昇していく仕組みが整備されています。
初年度年収442.5万円は業界平均より高水準
ホンダディーラーで働く自動車整備士の初年度平均年収442.5万円は、自動車整備士全体の平均年収400万円程度と比較して、明らかに高い水準を示しています。
日本自動車整備振興会連合会の統計データによると、整備士全体の平均年収は404.4万円となっており、ホンダディーラーはこれを約40万円上回る結果となっています。
この背景には、大手メーカーディーラーとしての安定した経営基盤と、充実した人材育成制度があります。
業界全体で整備士不足が深刻化する中、ディーラー各社は待遇改善に力を入れており、特にホンダディーラーは競争力のある給与体系を維持しています。

また、国産ディーラー全体の平均年収481万円と比較すると、やや低めの水準ではありますが、月給ベースでは国産ディーラー最高水準の220,823円を誇っており、安定した基本給を重視する給与設計が特徴的です。
参考:メカジョブ│ホンダディーラーで働く整備士の給料は?具体的な年収を調べてみました!
月給・基本給・賞与の詳細内訳
ホンダディーラー整備士の給与構成は、基本給を重視した安定性の高い設計となっています。月給の平均は220,823円で、これは国産ディーラーの中で最高水準となっています。
基本給は18万円から22万円程度が中心となり、これに各種手当が加算されます。主な手当には、資格手当(自動車整備士1級から3級)、住宅手当、通勤手当、家族手当などがあり、月額で3万円から5万円程度が支給されます。
賞与については年2回の支給で、夏季・冬季それぞれ1.5ヶ月から2.0ヶ月分程度となっており、年間では3.0ヶ月から4.0ヶ月分が標準的です。
賞与は会社の業績だけでなく、個人の技術力や勤務態度、資格取得状況などが総合的に評価されて決定されます。

特にホンダ独自の社内資格を取得することで、追加の資格手当が支給される制度も整備されており、努力が直接的に収入アップにつながる仕組みが構築されています。
経験年数別の年収推移と昇給パターン

ホンダディーラーでの経験年数による年収推移は、明確な段階的上昇パターンを示しています。
入社1年目から3年目は350万円から420万円程度で推移し、この期間は基礎技術の習得と3級整備士資格の取得が主な目標となります。
4年目から7年目にかけては420万円から480万円へと上昇し、2級整備士資格の取得とホンダ独自資格の段階的取得が年収アップの鍵となります。
8年目から12年目では480万円から550万円の水準に達し、主任やリーダー職への昇格、1級整備士資格の取得が期待されます。
13年目以降は550万円から650万円の高い年収水準となり、工場長やサービスマネージャーなどの管理職への昇格が可能となります。
昇給の重要なポイントは、国家資格である自動車整備士資格の段階的取得、Honda独自資格であるHASTの取得、検査員資格の取得、そしてマネジメント能力の向上です。

特にホンダでは社内独自資格制度が充実しており、努力次第で着実に昇給が見込める環境が整備されています。
▼自動車整備士の資格について詳しく
以下の記事では、自動車整備士資格全14種類の特徴・取得方法・最適な選び方を解説しています。1級・2級・3級・特殊整備士の違いから収入まで紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
2.ホンダディーラーとそれ以外の年収比較

国産主要メーカーディーラーの中でのホンダの位置づけを明確にするため、具体的な年収データをもとに詳細な比較分析を行います。
トヨタディーラー(473.8万円)との差額分析
ホンダディーラーとトヨタディーラーの年収を比較すると、トヨタが473.8万円、ホンダが442.5万円となり、約31万円の差が存在します。
これは月額換算で約2.6万円の差に相当し、年収ベースではトヨタが優位に立っています。この差額の主な要因は、トヨタの圧倒的な事業規模と安定した収益基盤にあります。
トヨタは全国約5,000店舗という最大規模のディーラー網を持ち、売上高も業界トップクラスを維持しているため、整備士への還元も手厚くなっています。
しかし、月給ベースで見ると状況は異なります。ホンダの月給220,823円に対し、トヨタは190,815円となっており、ホンダが約3万円高い水準を維持しています。
この違いは給与体系の設計思想の違いを表しており、ホンダは月給を高く設定することで安定した収入を保証し、トヨタは賞与の比重を高めることで業績連動性を重視した設計となっています。

どちらが良いかは個人の価値観によりますが、安定志向の方にはホンダの給与体系がより魅力的といえるでしょう。
日産・マツダ・ダイハツとの徹底比較

国産主要メーカーディーラーの整備士年収を総合的に比較すると、トヨタが473.8万円で首位、ダイハツが468.7万円で2位、ホンダが442.5万円で3位という順位になります。
日産は430万円、マツダは407万円となっており、ホンダは中上位に位置しています。ダイハツが高い年収水準を維持している理由は、軽自動車市場での圧倒的なシェアと、専門性の高い技術力が評価されているためです。
軽自動車特有の技術や省燃費技術への深い理解が求められ、その専門性が給与に反映されています。日産は電動化技術のパイオニアとして先進的な技術を保有していますが、年収面ではやや控えめな水準となっています。
マツダは独自の技術哲学を持つメーカーとして知られていますが、企業規模の関係で年収水準は他社より低めとなっています。
月給ベースで見ると、ホンダの220,823円が最高水準で、これに続いてダイハツの205,000円、日産の195,000円、トヨタの190,815円、マツダの185,000円という順序になります。

この結果からも、ホンダが基本給を重視した安定性の高い給与体系を採用していることが分かります。
民間整備工場との年収格差の実態
ディーラーと民間整備工場の年収格差は非常に大きく、これは転職を検討する上で重要な判断材料となります。
ホンダディーラーの442.5万円に対し、民間専業整備工場は364.6万円、民間兼業整備工場は389.2万円となっており、それぞれ78万円、53万円の格差が存在します。
この格差の背景には、事業規模、技術研修制度、福利厚生制度の違いがあります。
ディーラーは大手企業の傘下で安定した経営を行っており、メーカー直系の最新技術研修を受けることができ、大企業レベルの福利厚生制度が完備されています。
一方で、民間整備工場にも独自のメリットがあります。残業時間が比較的少なく、アットホームな職場環境が多く、様々なメーカーの車両に触れる機会があり、将来的な独立開業への道筋も描きやすいという特徴があります。
また、地域密着型の経営により、顧客との距離が近く、より直接的な感謝を感じることができる環境も魅力の一つです。

年収を最優先に考える場合はディーラーが有利ですが、ワークライフバランスや将来の独立を重視する場合は、民間整備工場という選択肢も十分に検討価値があります。
▼大手ディーラー整備士の年収ランキング
自動車整備士の大手企業年収ランキング!以下の記事では、トヨタ・ホンダ・日産など8社の給料・待遇を徹底比較。転職成功のポイントも解説しています。ぜひ参考にしてください。
3.ホンダ独自の昇給・キャリアアップ制度

ホンダは自動車業界でも特に充実した独自資格制度を誇り、整備士のスキルアップと昇給を体系的にサポートしています。
Honda四輪サービス技能修得制度(HAST)の全貌
Honda四輪サービス技能修得制度(HAST:Honda Automobile Service Technician)は、ホンダが誇る独自の資格制度で、全メーカーを通じても最も難易度が高いとされる社内資格システムです。
この制度は基礎コース、3級コース、2級コース、1級コースの4段階で構成されており、入社年次に応じて段階的にスキルアップできる仕組みが整備されています。
HASTの各コース
- 基礎コース
入社1年目を対象とし、基本的な整備知識と安全作業の習得を目的としている。 - 3級コース
入社2年目から3年目を対象とし、実践的な整備技術の習得を目指す。 - 2級コース
入社4年目から6年目を対象とし、応用技術と診断能力の向上を図る。 - 1級コース
入社7年目以降を対象とし、高度な技術力と後輩指導力の習得を目的としている。
各コースには理論学習と実技研修が組み合わされており、合格率は基礎コース95%、3級コース85%、2級コース70%、1級コース45%となっています。

この制度により習得できる技術は最新のホンダ技術に対応した実践的なものであり、全国統一基準による品質保証が行われているため、他社への転職時にも高く評価される技術力を身につけることができます。
1級から3級までの資格手当と昇給額
HAST資格取得による具体的な昇給効果は非常に大きく、努力が直接的に収入アップにつながる仕組みとなっています。
資格手当と昇給額
- 基礎コース
月額3,000円の資格手当が支給され、年間では3.6万円の収入アップ。 - 3級コース
月額8,000円の資格手当となり、年間9.6万円の昇給効果がある。 - 2級コース
月額15,000円の資格手当が支給され、年間18万円の大幅な収入アップが実現。 - 1級コース
月額25,000円の資格手当となり、年間30万円の昇給効果がある。
資格手当に加えて、資格取得時には基本給のアップも行われます。
3級取得時には基本給が5,000円アップし、2級取得時には10,000円、1級取得時には15,000円の基本給アップが実施されます。
これらを合計すると、入社時から1級取得までの累積年収アップは61.2万円に達し、長期的なキャリア形成において非常に大きなメリットとなります。

資格取得は昇進の必須条件でもあり、主任やリーダー職への登用には最低でも2級資格が求められ、工場長職には1級資格取得が前提となっているため、キャリアアップには不可欠な要素となっています。
HMSG(ホンダマスターオブサービスジェネラリスト)への道のり
HAST1級の上位資格として位置づけられるHMSG(Honda Master of Service Generalist)は、ホンダ整備士の最高峰資格です。
この資格の取得要件は非常に厳しく、HAST1級取得済み、実務経験10年以上、後輩育成実績、顧客対応能力の実証、そして筆記・実技・面接の3段階試験合格が必要となります。
認定までの標準的な期間は入社から15年から20年程度で、年間認定者数は全国で約50名程度という狭き門となっています。
HMSG取得による具体的なメリットは非常に大きく、月額50,000円の専門技術手当が支給されることで年間60万円の収入アップが実現します。
さらに、工場長やエリアマネージャーへの優先登用制度があり、キャリアアップの面でも大きなアドバンテージとなります。
HMSG取得者の平均年収は650万円から750万円に達し、一般的な整備士の年収を大幅に上回る水準となります。
また、技術指導者としての確立した社内地位を得ることができ、転職時にも他社から高い評価と好条件オファーを受けることが可能となります。

独立開業時にも強力な武器となる資格として、長期的なキャリア戦略の要となっています。
4.ホンダディーラー転職のメリット・デメリット

ホンダディーラーへの転職を検討する際には、メリットとデメリットの両面を十分に理解した上で判断することが重要です。
独自技術習得による市場価値向上
ホンダは他メーカーとは一線を画す独自技術を多数保有しており、これらの技術を習得することで整備士としての市場価値が大幅に向上します。
主要な独自技術として、可変バルブタイミング・リフト機構であるVTECエンジン、独自の2モーターハイブリッドシステムであるi-MMD、高性能四輪駆動システムのSH-AWD、先進安全運転支援システムのHonda SENSINGなどがあります。
これらの技術は他社では学ぶことができない独自性の高いものであり、習得することで転職時の強み、独立開業時の武器、技術研修講師としてのキャリア、技術アドバイザーとしての活躍などが可能となります。
実際に、ホンダ出身の整備士は転職市場で高く評価され、同業他社への転職時に年収20%から30%アップのオファーを受けることも珍しくありません。
特に電動化技術やハイブリッド技術の分野では、ホンダでの経験は非常に高く評価される傾向があります。
また、近年の自動車技術の高度化により、DIYでできる整備・修理が激減している中で、専門性の高い技術を持つ整備士の需要は増加しており、ホンダの独自技術を習得することは長期的なキャリア戦略において非常に有効です。

技術革新が進む自動車業界において、継続的な学習と専門性の向上は必須であり、ホンダの体系的な技術研修制度は整備士のキャリア形成に大きな価値を提供しています。
店舗ごとの裁量が大きい職場環境の特徴
他メーカーのディーラーと比較して、ホンダディーラーは各店舗の裁量が大きく、多様な働き方が可能です。店舗タイプも大型店舗、中型店舗、小型店舗に分かれており、それぞれ異なる特徴を持っています。
大型店舗では最新設備が完備され、専門分化された業務体制により高度な技術を学ぶことができます。
中型店舗ではバランス型の運営により、幅広い業務経験を積むことが可能です。小型店舗ではアットホームな環境で、顧客との距離が近い関係を築くことができます。
働き方の柔軟性も大きな特徴で、店舗ごとの業務スタイルの違い、個人の適性に応じた役割分担、顧客対応への整備士の積極的参加、改善提案の採用されやすい環境などがあります。
これにより、自分に合った店舗選択が可能であり、個性を活かした働き方ができ、昇進・昇格の機会が豊富で、顧客との直接的な関係構築が可能となります。
特にホンダカーズでは、整備士が接客業務をする機会が多く、サービスフロントを置かずに整備士が直接顧客対応をする店舗もあります。

これにより、整備士が顧客の要望を正しく聞いてサービスを提供できるため、顧客満足度の向上と仕事のやりがい向上の両方を実現することができます。
転職前に知っておくべき注意点
ホンダディーラーへの転職には多くのメリットがある一方で、いくつかの注意点も存在します。
注意点リスト
- 技術習得の難易度が高い
ホンダの独自技術は高度で複雑なため、習得には相当の時間と努力が必要。研修期間中の負荷は高く、継続的な学習が求められるため、学習意欲の低い方には向かない環境。 - 資格取得に対するプレッシャー
昇進や昇給のためには必須となる資格が多く、常に勉強を継続する必要がある。
競争環境も厳しく、同僚との技術競争が激しいことも特徴。向上心の高い環境を好む方には適しているが、のんびりと働きたい方には負担となる可能性あり。 - 転職時の課題
中途採用の場合は研修期間が短縮されることが多く、即戦力として期待されるプレッシャーがある。
また、店舗によって待遇に差があるため、転職前の情報収集が重要となる。
業界特有のリスクとして、電動化の進展による技術の陳腐化、自動運転技術による将来の仕事内容変化、車検・点検需要の変動なども考慮する必要があります。

これらの課題を踏まえ、転職成功のためには事前にホンダ技術の基礎知識を習得し、自分の価値観に合った店舗を選定し、入社後の資格取得ロードマップを作成し、新しい環境への順応性を高めることが重要です。
5.年収アップを実現する転職成功事例

実際の転職により年収アップを実現するための具体的なポイントと成功の秘訣について詳しく解説します。
民間整備工場からの転職で30万円アップ
民間整備工場からホンダディーラーへの転職は、最も年収アップ効果が大きいパターンの一つです。
民間専業整備工場の平均年収364.6万円からホンダディーラーの442.5万円への転職により、約78万円の大幅な年収アップが期待できます。転職成功の要因として、まず事前準備の徹底が重要です。
ホンダ車の基礎知識を独学で習得し、主要技術であるVTECやi-MMDについて概要を理解しておくことで、面接時に学習意欲をアピールできます。
資格面では、保有している2級自動車整備士資格やガス溶接資格などを効果的にアピールし、民間工場での幅広い車種経験を強みとして伝えることが重要です。
特に顧客対応経験は大きなアドバンテージとなり、Honda独自資格取得への強い意欲を示すことで、採用担当者に好印象を与えることができます。
転職後は、民間工場で培った幅広い技術力を活かしながら、ホンダの専門技術を段階的に習得していくことで、長期的なキャリアアップが可能となります。

年収アップだけでなく、専門性を高めることで将来のキャリア選択肢も大幅に広がることが期待できます。
他メーカーディーラーからの転職体験談
他メーカーディーラーからホンダディーラーへの転職は、技術的な挑戦と年収アップの両方を実現できる魅力的な選択肢です。
日産ディーラーからの転職では年収430万円から465万円への35万円アップ、マツダディーラーからの転職では年収385万円から420万円への35万円アップなど、多くの成功事例があります。
転職理由として最も多いのは、ホンダの独自技術への興味と、より明確なキャリアパスの存在です。特にi-MMDシステムやVTEC技術などのホンダ独自技術は、他メーカーでは学ぶことができない貴重な経験となります。
また、ホンダの体系的なHAST制度は、他メーカーの研修制度と比較してより段階的で分かりやすい構造となっており、長期的なスキルアップ計画を立てやすいという評価を得ています。
月給重視の給与体系も転職理由の一つで、安定した基本給を重視する価値観の方には非常に魅力的です。

異なるメーカーでの経験は決してマイナスではなく、むしろ幅広い視野を持った貴重な人材として評価される傾向があります。
6.ホンダディーラー転職を成功させる3つのポイント
ホンダディーラーで働く自動車整備士の年収442.5万円は、業界平均を上回る魅力的な水準であり、特に月給220,823円は国産ディーラー最高水準を誇ります。
Honda独自のHAST制度やHMSG資格により、努力次第で年収650万円以上も目指せる明確なキャリアパスが用意されています。
トヨタディーラーとは31万円の年収差がありますが、安定した基本給重視の給与体系により、長期的な安心感を得ることができます。
転職を成功させるためには、事前のホンダ技術習得、明確なキャリアビジョン設定、効果的な面接アピールの3つのポイントが重要です。
独自技術の習得による市場価値向上と、充実した研修制度により、整備士としての専門性を高めながら安定した収入を確保できるホンダディーラーは、キャリアアップを目指す整備士にとって魅力的な選択肢といえるでしょう。