国土交通省が2023年7月に創設した「トラックGメン」をご存知ですか?荷主や元請け事業者による長時間の荷待ちや不当な運賃据え置きなど、プロドライバーの労働環境を悪化させる不適正な取引を監視・是正する重要な役割を担っています。
本記事では、トラックGメンの基本情報から具体的な活動実績、そしてプロドライバーが知っておくべき対応策までを徹底解説します。
- トラックGメンの役割と監視活動の実態、荷主への4段階アプローチ(働きかけ・要請・勧告・公表)の仕組み
- 長時間の荷待ちや不当な運賃据え置きなど、主な違反行為の具体例と最新の取締り状況
- プロドライバーが自身の権利を守るための具体的な対応策5選と関連法規の基礎知識
1.トラックGメンとは?役割と目的を徹底解説

トラックGメンは物流業界の健全化を目指す国土交通省の重要な取り組みです。その具体的な仕組みや役割を理解することで、プロドライバーとして適切に対応し、自身の権利を守ることができるようになります。
ここでは、トラックGメンの基本情報について詳しく解説します。
国土交通省が創設した物流監視チーム
トラックGメンは、国土交通省が2023年7月21日に創設した物流監視チームで、物流の2024年問題への対応と不適正な取引の監視強化を目的として設立されました。
、荷主企業や元請事業者による不適切な取引慣行(長時間の荷待ちや運賃の不当据え置きなど)を調査します。162人体制で活動を開始しました。
また、トラックGメンを統括する組織として「トラック荷主特別対策室」(通称:トラックGメン室)が国土交通省本省内に設置され、自動車局貨物課長の小熊弘明氏が室長を兼任していました。
この体制により、全国各地で荷主や元請け事業者による不適正な取引を監視する態勢が整えられました。
トラックGメンの主な役割と権限
トラックGメンの主な役割は、荷主や元請け事業者による不適正な取引を監視し、トラック運送業界の健全化を図ることです。
具体的には、トラック事業者に対して不適切な取引を強いる荷主や元請け事業者の情報を収集し、悪質な行為が確認された場合には改善を促します。また改善が見られない場合には勧告を出し、さらに社名の公表も行うという強い権限を持っています。
情報収集の方法としては、各担当者が一人あたり数千から数万単位の荷主や元請け事業者に電話をかけて調査を行ったり、高速道路のサービスエリアでトラックドライバーに対する聞き取り調査を実施したりしています。
さらに、荷主や元請け事業者に対してアポイントなしで訪問してヒアリングを行うこともあり、プッシュ型の積極的な監視活動を展開しています。

トラックGメンは、従来の荷主勧告制度の実効性を高める実働部隊として重要な役割を担っています。
トラック・物流Gメンへの改組と体制強化
トラックGメンは創設後も継続的に体制が強化されてきました。2024年8月には、トラックGメンとは別に「適正化事業指導員」(略称:Gメン調査員)が新設されました。
これは都道府県トラック協会の「適正化事業指導員」から選任される調査員で、地域の事業者事情や荷主との関係についての知見を活かし、巡回指導などを通じて得た情報をトラックGメンと共有することで監視体制を強化する役割を担っています。
体制も大幅に強化され、既存の162名に加えて地方運輸局などの物流担当職員29名が追加され、Gメン調査員も166名まで増員されたことで、総勢357名という大規模な監視体制が構築されたのです。
当初は各都道府県から合計94名の調査員が情報収集に従事していました。さらに2024年11月には「トラック・物流Gメン」へと改組・拡充され、調査対象が拡大されました。
これにより倉庫業者からもトラック事業者に対する違反原因行為をしている疑いのある荷主について情報収集を行うようになりました。
参考:国土交通省|トラックGメンを「トラック・物流Gメン」へ改組・拡充し、集中監視月間を実施します
2.トラックGメン創設の背景にある物流業界の課題

トラックGメンが創設された背景には、長年物流業界が抱えてきた構造的な問題があります。ドライバー不足、長時間労働、低賃金といった課題は相互に関連し、業界全体の持続可能性を脅かしています。
これらの課題がなぜトラックGメン創設につながったのか、その背景を詳しく見ていきましょう。
物流2024年問題とドライバー不足への対応
物流2024年問題とは、2024年4月から導入されたトラックドライバーへの時間外労働の上限規制を指します。この規制により、トラックドライバーの時間外労働は年間960時間(月平均80時間)を超えることができなくなりました。
この規制は働き方改革の一環として導入されたものですが、長時間労働が常態化していた物流業界にとっては大きな変革を迫るものでした。また、トラック運送業界は深刻なドライバー不足に直面しており、高齢化と若年層の参入減少によって今後さらに状況が悪化すると予測されています。
このような状況を背景に、国土交通省は2018年の議員立法において「荷主対策の深度化」と「標準的な運賃」制度を時限措置として創設しましたが、2023年6月16日の法改正によって、これらの制度は「当面の間」の措置へと変更され、継続的な対応が行われることになりました。
ドライバーの時間外労働削減には荷主の協力が不可欠であり、その監視体制を強化することがトラックGメン創設の大きな目的だったのです。
長時間労働と低賃金の実態
トラック運送業界では長時間労働と低賃金の問題が深刻です。
トラックドライバーの労働時間は全産業平均と比較して著しく長く、一方で賃金水準は全産業平均を下回る傾向にあります。この問題の深刻さを認識した厚生労働省は2022年12月に「荷主対策特別チーム」を発足させ、改善基準告示の遵守と長時間労働の是正に取り組んでいます。
荷待ち時間は単に待機しているだけの非生産的な時間であるにもかかわらず、ドライバーの労働時間としてカウントされるため、労働効率の低下と長時間労働を同時に引き起こす大きな問題です。
また、本来の運送契約には含まれていない積み下ろしなどの付帯作業を無償で行わされるケースも多く、これらが長時間労働の原因となっているのです。
荷主と運送業者の力関係の不均衡
トラック運送業界における諸問題の根底には、荷主と運送業者の力関係の著しい不均衡が存在します。多くの運送業者、特に中小事業者は荷主企業に対して弱い立場にあり、不当な条件であっても取引継続のためにそれを受け入れざるを得ない状況に置かれています。
例えば運賃・料金の不当な据え置きは、本来であれば燃料費の高騰や人件費の上昇に応じて適正に改定されるべきですが、荷主との力関係により交渉が難しく、長年にわたって据え置かれるケースが少なくありません。
また、荷主都合による長時間の荷待ちや契約外の付帯業務を強いられても、取引を失うことを恐れて異議を唱えられないドライバーが多いのが現状です。
国土交通省の「目安箱」に寄せられる情報も、荷主に情報提供を行ったことが知られる可能性を危惧して躊躇するトラック事業者が多く、十分な情報が集まらないという問題がありました。

このような背景から、荷主と運送業者の力関係を是正するための実働部隊としてトラックGメンが創設されたのです。
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3.トラックGメンの具体的な取り組みと監視対象

トラックGメンは設立以来、様々な手法で情報収集や監視活動を行っています。
情報収集の実態と監視方法
トラックGメンは以下の方法で情報収集と監視活動を行っています。
情報収集や監視活動の方法
「働きかけ」「要請」「勧告・公表」の段階的アプローチ
トラックGメンは情報収集の結果に基づいて、段階的な是正措置を講じています。この措置は4段階のアプローチで構成されており、違反の重大性や改善状況に応じて段階が上がっていきます。
第1段階は「働きかけ」
これは法令違反の原因となる疑いがある荷主や元請け事業者に対して行われ、問題点の指摘と改善の必要性を伝えます。
第2段階は「要請」
法令違反の原因として疑うことに相当の理由がある場合に行われます。より強い改善の要請がなされ、具体的な改善策の提示が求められることもあります。
実際に要請を受けた荷主や元請け事業者の中には、荷待ち時間の短縮策として予約システムを導入したり、バースを増設したり、荷役作業の効率化を図ったりするなどの対応をした事例があります。
また、荷待ち時間の有料化や契約書面の見直し、適正な運賃・料金の設定などの措置を講じるケースもあります。
第3段階は「勧告」・「公表」
要請を受けても改善が見られない場合に行われます。
勧告を受けた荷主や元請け事業者の社名と事案の詳細が公表されます。この社名公表は企業の社会的評価に影響するため、大きな抑止力となっています。
4.トラックGメンの活動実績と違反事例

トラックGメンは創設以来、急速にその活動範囲と実績を拡大しています。具体的な数字や事例を通じて、その活動がいかに物流業界に影響を与えているかを理解することで、ドライバーは自身の権利を守るための重要な情報を得ることができます。
令和6年12月末最新!都道府県別指摘件数
都道府県別指摘件数ランキング
順位 | 都道府県 | 合計 |
1位 | 東京都 | 301件 |
2位 | 大阪府 | 113件 |
3位 | 埼玉県 | 101件 |
4位 | 福岡県 | 82件 |
5位 | 愛知県 | 78件 |
6位 | 神奈川県 | 71件 |
7位 | 千葉県 | 69件 |
8位 | 北海道 | 63件 |
9位 | 兵庫県 | 46件 |
10位 | 新潟県 | 45件 |
地方別指摘件数ランキング
順位 | 地方 | 合計 |
1位 | 関東地方 | 634件 |
2位 | 近畿地方 | 199件 |
3位 | 九州・沖縄地方 | 165件 |
4位 | 東海地方 | 152件 |
5位 | 甲信越地方 | 125件 |
国土交通省が発表したトラック・物流Gメンによる、令和6年12月末時点の都道府県別実績を分析すると、東京都が301件と圧倒的な指摘件数で全国トップ、次いで大阪府113件、埼玉県101件と続きます。地方別では関東地方が634件と突出しており、全体の約4割を占めています。
勧告に至った事例は全国でわずか4件(東京都3件、大阪府1件)と厳しい措置は少数ですが、働きかけを中心に各地で監視が強化されています。
なお、トラック・物流Gメンの活動実績は、令和6年12月末現在までは、働きかけ1378件、要請183件、勧告4件となっています。
長時間の荷待ちが最多の違反行為


出典:国土交通省ウェブサイト
トラックGメンが確認した違反原因行為の中で、圧倒的に多いのが「長時間の荷待ち」です。
全体の約48%を占めており、物流業界における最大の課題となっています。国土交通省の「目安箱」に寄せられる情報の中でも、「長時間の荷待ち」に関する報告が4割強を占めています。
荷待ち時間は単なる時間のロスだけでなく、ドライバーの労働時間として計上されるため、時間外労働の上限規制が適用される2024年以降、特に重大な問題となっています。
次いで多い違反原因行為は「契約にない付帯業務」(20%)「運賃・料金の不当な据置き」(16%)、残りは「無理な運送依頼」(7%)、「過積載運行の指示・容認」(5%)、「異常気象時の運送依頼」(4%)となっています。
荷待ち時間解消のための対策として、トラックGメンの要請を受けた荷主の中には、予約システムの導入やバースの増設、荷役作業の効率化、荷待ち時間の有料化などの措置を講じた例があります。

トラックGメンはこれらの違反行為を網羅的に監視し、不適正な取引の是正に取り組んでいます。
勧告・社名公表された企業の事例と対応
国土交通省は、トラックドライバーの長時間労働是正に向けて、荷待ち時間違反に関する勧告を4件(荷主2件、元請1件、その他1件)実施しました。
勧告対象となったのは王子マテリア株式会社、ヤマト運輸株式会社、NX・NPロジスティクス株式会社、株式会社吉野工業所の4社です。
特に詳細が明らかになっている王子マテリアル株式会社の事例では、長時間の荷待ちが主な違反原因とされ、2022年8月に是正要請を受けていました。しかし、改善が不十分だったため「勧告・公表」に至り、2024年3月には新たな改善計画を提出し、以下の対策を実施していました。
- 荷待ち・荷役作業時間を2時間以内に短縮する目標設定
- トラック予約システムの導入
- 出荷口の増設と荷捌き場の新設
- 倉庫の効率的活用による混雑緩和
同社は物流部門が定期的に進捗を報告し、国交省は1年以上かけて改善状況を監視してきました。この取り組みは、物流効率化とドライバーの労働環境改善という重要な課題への対応事例として注目されています。
社名公表は企業イメージへの打撃だけでなく、取引先からの信頼低下にもつながります。荷主企業や元請け事業者はトラックGメンからの働きかけや要請を重視し、早期改善に取り組むことが重要です。
参考:カーゴニュースオンライン|国交省Gメン勧告企業の改善状況を公表、実効性確保へ
5.違反行為を見逃さない!ドライバーが知っておくべき対応策5選

トラックGメンの存在を知ったドライバーが次に考えるべきは、具体的にどう行動すべきかという点です。違反行為に直面した際、自身の権利を守りながら適切に対応するための知識は、より良い労働環境を実現するための武器となります。
ここでは、ドライバーが実践できる具体的な対応策を5つ紹介します。
違反行為を記録する習慣づけ
ドライバーが最初に取り組むべきは、違反行為を日常的に記録する習慣づけです。具体的かつ客観的な証拠があれば、トラックGメンなどへの情報提供時により効果的な対応が期待できます。
記録すべき重要情報を紹介します。
- 日時と場所の詳細
- 荷主名や担当者名
- 具体的な違反内容(荷待ち時間の場合は到着・開始・終了時刻)
- 契約外の付帯作業の場合は、作業内容、所要時間、本来の担当者
- 不当な運賃・料金据え置き要求の経緯や具体的金額
記録方法としては、スマートフォンのメモやカメラ機能が便利で、特に写真や動画は客観的証拠として有効です。
デジタルタコグラフや運行記録計のデータも重要な証拠となるため定期的なバックアップを推奨します。会話記録時は相手の同意を得るなど法的に適切な方法で行いましょう。
これらの記録は情報提供だけでなく、会社との交渉や労働環境改善にも役立つ貴重な資料となります。
匿名でも可能な通報方法
違反行為を発見したドライバーの最大の懸念は通報による不利益ですが、匿名での通報が可能で、適切に活用すれば身元を明かさずに問題改善できます。
最も利用しやすいのは国土交通省ウェブサイト上の「目安箱」で、匿名での情報提供が可能です。通報時は具体的な荷主名や場所、違反内容などを詳細に記入しましょう。匿名でも具体的情報があれば調査対象となります。
各地方運輸局の相談窓口では電話での匿名相談も受け付けており、相談内容は守秘義務で保護されます。厚生労働省の「荷主対策特別チーム」も労働条件違反について匿名通報を受け付けています。
各都道府県トラック協会の「適正化事業指導員」も地域事情に詳しく、適切なアドバイスを提供してくれる相談先です。同じ内容を複数窓口に通報することで、より確実な対応が期待できます。

匿名通報は違反行為の抑止に大きく貢献する重要な手段であり、ドライバーの権利を守るための有効なツールとなります。
荷主との適切なコミュニケーション方法
荷主との適切なコミュニケーションは、不適正な取引を防ぎ健全な関係構築に不可欠です。業務開始前に契約書に基づいて荷待ち時間や付帯作業の範囲、追加料金発生条件などを確認しておくとトラブル防止になります。
コミュニケーションはメールや書面など記録が残る方法を優先し、口頭でのやり取りは議事録にまとめておきましょう。問題発生時は自社の運行管理者や上司に報告し、会社としての対応方針を確認してから荷主と交渉することが重要です。
法令違反となる要求を受けた場合は、法的根拠を示しながら丁寧に断りましょう。例えば「改正貨物自動車運送事業法では〇〇が定められており、ご要望に応えると法令違反となります」といった説明が効果的です。
単に断るだけでなく代替案を提案することで荷主の理解を得やすくなります。またトラックGメンの存在や荷主勧告制度についても適切なタイミングで説明し、法令遵守の重要性を共有することも有効です。
法律で保護されるドライバーの権利
改正貨物自動車運送事業法では荷主対策が強化され、荷待ち時間の削減、契約外付帯作業の強要防止、適正運賃の確保などが規定されています。2024年4月からは労働基準法による時間外労働の上限規制が適用され、年間960時間(月平均80時間)を超える時間外労働が禁止されています。
厚生労働省の「改善基準告示」ではドライバーの1日の拘束時間は原則13時間以内、休息期間は継続8時間以上と定められており、これを超える労働を強制されることはありません。
運賃面では「標準的な運賃」制度が導入され、適切なコストを反映した運賃の目安が示されています。
安全面では、異常気象時の運行指示や過積載要求などに対し、ドライバーは拒否する権利があります。また内部告発者保護制度により、違法行為の通報を理由とした不利益取扱いは禁止されています。
これらの法的権利を理解し活用することで、ドライバーはより安全で健全な労働環境を確保できます。
業界団体や専門家への相談先
頼りになる相談先としてまず全日本トラック協会と各都道府県トラック協会があります。業界に特化した専門知識があり、都道府県協会には「適正化事業指導員」が配置され、地域の実情に詳しい具体的な解決策を提供してくれます。
労働条件問題は労働基準監督署の無料相談窓口が適しており、違反があれば調査・是正指導も行われます。国土交通省の地方運輸局にも荷主との取引問題や運送事業の法令について相談できる窓口があります。
専門的な法的アドバイスが必要な場合は、弁護士や社社会保険労務士への相談も検討すべきです。交通事故対応に強い弁護士や労務管理に詳しい社会保険労務士など、専門分野の専門家を選ぶとより効果的です。
労働組合に加入している場合は、組合を通じて集団的な交渉力を背景に問題解決を図ることも可能です。
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6.トラックGメンがもたらす物流業界の未来

トラックGメンの活動は単なる監視や取り締まりにとどまらず、物流業界全体の構造改革につながる可能性を秘めています。
その活動が継続・強化されることで、どのような未来が待っているのか。プロドライバーのキャリアにとって重要な展望を考えてみましょう。
適正な労働環境への転換
トラックGメンの活動進展で最も期待される変化は労働環境の適正化です。長時間の荷待ちや契約外付帯作業、過密スケジュールに苦しんできたプロドライバーにとって大きな転換点となるでしょう。
荷主や元請け事業者による不適正取引が是正されることで、長時間労働の主要因が解消に向かいます。荷待ち時間短縮のための予約システム導入やバース増設、到着時間分散化が実現すれば、労働時間は大幅に削減されます。
付帯作業の範囲明確化と適正料金設定により、無償荷役作業などが減少するでしょう。これは労働時間短縮だけでなく、ワークライフバランス向上にもつながります。家族との時間や趣味・休息時間が確保され、精神的充実感とモチベーション向上が期待できます。
適切な休息時間確保により疲労蓄積が軽減され、健康管理と安全運転にも好影響をもたらし、労働環境改善は若年層や女性ドライバーなど新たな人材にとっても魅力となり、深刻なドライバー不足解消の一助となることが期待されます。
運賃・料金の適正化への期待
トラックGメンの活動がもたらすもう一つの大きな変化は、運賃・料金の適正化です。国土交通省が導入した「標準的な運賃」制度と連動し、これまで不当に据え置かれてきた運賃・料金の是正が進むことが期待されます。
トラックGメンが「運賃・料金の不当な据え置き」を違反行為として監視し、是正を求めることで、荷主側も適切な価格設定の必要性を認識せざるを得なくなるでしょう。
また、これまで無償で行われてきた付帯作業の有料化や、荷待ち時間の有料化も一般的になっていくと予想されます。実際にトラックGメンの要請を受けた荷主の中には、荷待ち時間の有料化を導入した例も報告されています。
さらに収益性の向上により、車両や機器への設備投資が活性化し、より安全で効率的な輸送環境が整備されるでしょう。このような変化は、単に価格だけの競争から、サービス品質や安全性、環境対応などの価値を重視した健全な競争へと物流市場を転換させる原動力となります。
ドライバーのキャリア展望
これまで労働環境や賃金問題から敬遠されがちだった運送業界ですが、適正な労働条件と運賃・料金の実現により、社会的評価と魅力向上が期待されます。また、労働時間の適正化によるワークライフバランス改善で、長期的かつ安定したキャリア形成が可能になります。
物流業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)も加速し、最新技術を活用した効率的な運行管理や配送システム導入が進むことで、プロドライバーに新たなスキル習得機会が生まれます。
単なる運転業務だけでなく、物流コンサルタントや運行管理者、安全指導員など、経験とスキルを活かした多様なキャリアパスも広がりつつあります。高齢になっても無理なく働ける環境整備で、長年培った経験や技術を活かし続けることも可能になります。
トラックGメンの活動がもたらす業界改革は、ドライバー職の魅力と社会的地位を高め、誇りを持って長く活躍できる環境づくりにつながります。
7.トラックGメンがもたらす物流業界の新時代
トラックGメンの登場は、長年物流業界が抱えてきた構造的問題の解決に向けた重要な一歩です。
荷主や元請け事業者による不適正な取引を監視・是正する仕組みが整うことで、ドライバーの労働環境改善と業界全体の健全化が期待されます。
違反行為の記録習慣、匿名での通報方法、荷主とのコミュニケーション技術、法的権利の理解、相談先の活用など、本記事で紹介した対応策を実践することで、自身の権利を守りながら業務に取り組むことができるでしょう。
トラックGメンの活動は今後も拡大・強化されていく見込みであり、ドライバーにとっては不適正な取引から身を守る強力な味方となります。労働環境の改善と運賃の適正化を通じて、ドライバー職の魅力と社会的地位が向上する未来が期待されます。
▼ドライバーはやめとけって本当?
以下の記事では、さまざまなドライバー職が「やめとけ」といわれている理由や実情を解説。やめとけと言われる仕事の隠された魅力についても解説!ぜひドライバー転職の参考にしてください。