タクシー運転手をすぐ辞めた人がいると聞いて、「自分も続かないのでは」と転職を迷っている方もいるのではないでしょうか。
たしかに、隔日勤務や歩合制といった業界特有の仕組みを知らないまま入社すると、ギャップを感じやすい仕事です。
一方で、公的な統計を見ると、タクシー事業を含む運輸業・郵便業の離職率は全産業の平均より低い水準にあります。
本記事では、すぐ辞めた人に多い理由を入社前から本採用後まで時系列で整理し、ドライバー目線でつまずきやすい具体的な場面、長く続けるための適性、後悔しない会社選びのポイントを解説します。
- タクシー運転手をすぐ辞めた人に多い理由と、つまずきやすい時期
- 公的データで見る離職率の実態と、隔日勤務のルール
- 入社後に後悔しないためのタクシー会社の選び方
1.タクシー運転手をすぐ辞めた人に多い4つの理由

タクシー運転手の早期退職は、「研修・免許取得の段階」と「本採用後まもない段階」で起こりやすい傾向があります。ここでは時系列に沿って、代表的な4つの理由を整理します。
研修・二種免許取得の段階でつまずく
タクシー運転手として乗務を始めるまでには、主に次のような要件や研修があります。
- 第二種運転免許(以下、二種免許)の取得
受験資格は原則「21歳以上かつ普通免許等の保有期間が通算3年以上」。受験資格特例教習を修了すれば「19歳以上かつ通算1年以上」で受験できる - 深視力の基準
普通免許にはない基準で、三棹(さんかん)法の奥行知覚検査器により2.5メートルの距離で3回検査し、平均誤差が2センチメートル以下であることが求められる - 地域ごとの試験
一部の地域では法令・安全・接遇に関する試験への合格が必要。たとえば東京の特別区・武蔵野市・三鷹市では、合格しなければタクシー運転者になれない - 初任運転者の適性診断・指導
どの地域でも、国の指針に基づいて会社が行う適性診断や指導を受けてから乗務を始める
とくに深視力の検査に不安を感じる方は少なくありません。運転に自信がない場合は、ペーパードライバー向けの研修を用意しているかを応募前に確認しておくと安心です。また、研修期間中に安全確認や接客の基本を学ぶなかで、「思っていた仕事と違う」と感じて早期に退職するケースがあります。
参考:警察庁|第二種免許等の受験資格の見直しについて
参考:警視庁|適性試験の合格基準
参考:公益財団法人東京タクシーセンター|輸送の安全及び利用者の利便の確保に関する試験
参考:国土交通省|事業用自動車の安全対策(運転者に対する指導及び監督)
隔日勤務の生活リズムに体が慣れない
タクシー業界に特有の働き方が「隔日勤務」です。朝に出庫して翌朝まで乗務し、勤務が明けた日は「明け番」として休息にあてます。明け番は休日とは別で、その翌日以降に公休日が入るのが一般的な流れです。
拘束時間や休息期間の上限は、厚生労働大臣告示である「改善基準告示」で定められており、2024年4月から見直し後の基準が適用されています。
| 項目 | 日勤 | 隔日勤務 |
|---|---|---|
| 1か月の拘束時間 | 288時間以内 | 262時間以内(労使協定により年6回まで270時間) |
| 1日・2暦日の拘束時間 | 13時間以内(上限15時間、14時間超は週3回までが目安) | 22時間以内かつ2回の平均で21時間以内 |
| 勤務後の休息期間 | 継続11時間を基本とし、9時間を下回らない | 継続24時間を基本とし、22時間を下回らない |
ルール上は休息が確保されていても、夜間を含む乗務は体内時計が乱れやすく、体が慣れるまでに時間がかかります。この生活リズムの変化に適応できず、体力的な負担を理由に辞めてしまうケースが見られます。
歩合制で収入の波に不安を感じる
タクシー運転手の給与は、売上に応じて変動する歩合制が一般的です。給与体系は主に、固定給と歩合給に賞与がつく「A型」、賞与がない完全歩合制の「B型」、歩合の一部を賞与として積み立てる「AB型」に分けられます。完全歩合制のB型でも、最低賃金は法令で保障されています。
どの給与体系でも売上が収入に影響する点は変わりません。土地勘や営業のコツがつかめない入社直後は、思うように売上が伸びないことがあります。
入社前に「最初の数か月は収入が安定しにくい」と理解していないと、生活への不安から退職を選びやすくなります。給与体系や入社初期の保証制度は、応募前に必ず確認しておきたいポイントです。
参考:働きやすい職場認証制度|タクシードライバーの給与体系とは?各体系のメリット・欠点も解説
接客・事故・違反のプレッシャーが重なる
日々の業務では、行き先の聞き取りや酔客への対応など、接客面でのストレスがあります。加えて、運転が仕事である以上、交通事故のリスクとは常に向き合う必要があります。
交通違反の点数は過去3年間で累積され、行政処分の前歴がない場合は次のように扱われます。
- 累積6点から14点
免許停止処分の対象(停止期間中は乗務できない) - 累積15点以上
免許取消処分の対象(乗務を続けられなくなる) - 基礎点数3点以下の軽微な違反の累積で6点に達した場合
過去3年以内に違反者講習や停止処分等の対象になっていなければ、違反者講習を受講することで免許停止処分は課されない
小さな違反の積み重ねが仕事そのものに影響するというプレッシャーは大きく、辞める要因になることがあります。
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歩合制の仕組みをより深く理解したい方は、給与体系ごとの特徴を押さえておくと安心です。以下の記事では、タクシードライバーの4つの代表的な給与体系の特徴を解説していますので、あわせてご覧ください。
2.ドライバー目線で見る「すぐ辞めた」につながりやすい場面
| つまずきやすい場面 | 起こりやすいこと | 事前にできる備え |
|---|---|---|
| 空車中の営業 | 売上を気にして急いでしまう | 給与保証期間中は安全運転と道を覚えることを優先する |
| 明け番 | 予定を詰めて疲れが残る | 仮眠の時間帯と公休日の使い方を決めておく |
| 実車中の道案内 | 道に迷い接客でも焦る | ルート確認の声かけと、会社のサポート手段を把握する |
ここでは、国土交通省関東運輸局の資料にある全国の事故統計と、同局のタクシー事故防止対策検討会の委員事業者に所属する運転者566名を対象に行われたヒヤリハット調査から、焦りや疲れが出やすい場面を取り上げます。仕事に慣れていない入社直後の時期にとくに意識しておきたいポイントとして整理しました。
空車で「次のお客様を急ぐ」ときに焦りが生まれやすい
同資料によると、タクシーの交通事故は空車時が実車時の約3倍発生しています。また、ヒヤリハットに関係する運転者自身の心理状態は「急いでいた」が最も多く、次いで「疲労」「路上の乗客を気にしていた」が挙げられています。
歩合制で売上を気にするほど、空車中に「早く次のお客様を見つけたい」という気持ちが強まります。入社直後に売上の数字だけを追うと、焦りが運転に影響し、事故やヒヤリハットをきっかけに自信をなくす悪循環に陥りかねません。
参考:国土交通省 関東運輸局|タクシー事業の概要や事故の状況等について(統計資料等)
明け番の過ごし方で次の乗務の疲れが変わる
前述のとおり、隔日勤務の後には長めの休息期間が確保されます。ただし、明け番を予定で埋めて睡眠が不足すると、疲れを次の乗務に持ち越してしまいます。
ヒヤリハットの心理状態で「疲労」が上位に入っていることを踏まえると、明け番は「自由な休日」ではなく「回復のための時間」と位置づけるのが現実的です。帰宅後の仮眠の時間帯を決めるなど、自分なりのリズムを早めに作ることが、隔日勤務を続けるコツといえます。
参考:国土交通省 関東運輸局|タクシー事業の概要や事故の状況等について(統計資料等)
道に不慣れな時期は乗車後の焦りに注意する
同資料の事故事例の分析では、実車時に道に迷ったことによる焦りがみられたと整理されています。お客様を乗せた状態で道がわからなくなると、接客と運転の両方でプレッシャーが一気に高まります。
カーナビや配車アプリで補える部分は増えていますが、道に慣れるまでの期間は誰にでもあります。わからないときは無理に進まず、お客様にルートを確認する、会社の無線やサポートを活用するなど、焦らない手段を持っておくことが大切です。
参考:国土交通省 関東運輸局|タクシー事業の概要や事故の状況等について(統計資料等)
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空車時の焦りや事故・違反へのプレッシャーなど、つまずきやすい場面をより具体的に知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。タクシー運転手がきついと言われる8つの理由と、ブラック企業の見分け方について詳しく解説しています。
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3.データで見るタクシー業界の離職率と働く環境

「すぐ辞める」というイメージが実態に合っているかは、公的な統計で確かめることができます。ここでは、厚生労働省の離職率データと、国土交通省関東運輸局の資料にある運転者数や収入の推移を確認します。
運輸業・郵便業の離職率は全産業平均より低い
「タクシー運転手はすぐ辞める」というイメージが先行しがちですが、公的データも確認しておきましょう。
厚生労働省の令和7年雇用動向調査によると、産業計の離職率は13.7%、タクシー事業を含む「運輸業,郵便業」は9.0%でした。
なお、この数値は運輸業・郵便業全体のもので、タクシー単独の離職率ではありません。運輸業・郵便業全体としては、他産業と比べて特別に離職が多い状況ではないと読み取れます。
参考:厚生労働省|令和7年雇用動向調査結果の概要(産業別の入職と離職)
運転者数の減少と収入の推移
国土交通省関東運輸局の資料によると、全国の法人タクシー運転者数は減少が続いており、平成27年度の約29.6万人から令和4年度には約20.9万人となっています。担い手が減っていることは、各社が採用や教育体制の整備に力を入れる背景の一つです。
同資料では、タクシー運転者の年間所得は、コロナ禍の影響があった令和2・3年度を除いて上昇傾向にあるとされています。
最新の厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」をもとに算出すると、タクシー運転者の年収は約451万円です(企業規模10人以上・男女計。月額の給与35.92万円×12か月+年間賞与等19.78万円で試算)。ただし、会社や地域、働き方によって差が大きいため、求人票の条件を個別に比較することが重要です。
参考:国土交通省 関東運輸局|タクシー事業の概要や事故の状況等について(統計資料等)
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収入や勤務体系の実態をさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もおすすめです。タクシー運転手の勤務時間や3つの勤務体系、平均収入について詳しく解説しています。
4.長く続けられる人とすぐ辞める人の違い

同じ環境で働いていても、長く続く人と早く辞めてしまう人がいます。ここでは、歩合制の収入との向き合い方と接客への姿勢という2つの観点から違いを整理し、自分の適性を確かめられる目安を紹介します。
売上の波に焦らず自分のペースを保てる
歩合制の仕事を長く続けている人は、日々の売上に一喜一憂せず、月単位など長い視点で自分のペースを保てる傾向があります。売上が少ない日があっても割り切り、焦って無理な運転をしない自己管理が求められます。
接客を柔軟にこなし、ストレスを溜め込まない
タクシーの仕事は運転業務であると同時にサービス業でもあります。目的地やルートの確認を丁寧に行い、厳しい言葉を受けても感情的にならずに受け流せる人は、精神的な負担を抑えやすく、結果として長く働き続ける傾向にあります。
自分の適性を確認する際は、以下の項目を目安にしてみてください。
| 確認したいこと | 続けやすい傾向 | ギャップを感じやすい傾向 |
|---|---|---|
| 収入の考え方 | 月単位で平均を見られる | 毎日の売上で気分が大きく変わる |
| 生活リズム | 明け番を回復にあてられる | 休みの日に予定を詰め込みがち |
| 接客 | 理不尽な言葉を受け流せる | 一つの出来事を長く引きずる |
| 運転 | 急がず安全確認を優先できる | 時間に追われると焦りやすい |
| 働き方 | 一人で判断する時間が苦にならない | 常に誰かと相談しながら進めたい |
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5.入社後に後悔しないタクシー会社の選び方

ここまで見てきたつまずきの多くは、会社の制度やサポート体制によって負担を軽くできます。応募前に確認しておきたい4つのポイントを順に解説し、最後に確認項目を一覧表にまとめます。
二種免許の取得支援と入社初期の給与保証を確認する
未経験から転職する場合、二種免許の取得費用を会社が負担する支援制度があるかどうかは重要な確認ポイントです。支援を受けるための条件も、あわせて確認しておきましょう。
さらに注目したいのが、入社後一定期間の「給与保証制度」です。売上が安定しない時期でも一定の給与が保証されていれば、生活の不安を抑えられます。前述のとおり、空車時の焦りは事故やヒヤリハットにつながりやすいため、給与保証は「売上より安全運転と道を覚えることを優先できる期間」としても意味があります。
新人研修と入社後のフォロー体制を確認する
受験資格の緩和などで入社時のハードルは以前より下がっていますが、道に不慣れな時期の焦りはなくなるわけではありません。同乗研修の期間、地理や営業エリアの研修内容、乗務中に困ったときの相談窓口があるかを確認しておくと、入社後のつまずきを減らしやすくなります。
配車アプリや車載設備など稼ぎやすい環境を見極める
配車アプリの普及により、流し営業の経験が浅くても乗客を獲得しやすい環境が広がっています。どの配車アプリに対応しているか、カーナビやドライブレコーダーなどの車載設備が整っているかは、稼ぎやすさと安全性の両面で確認したいポイントです。
「働きやすい職場認証制度」で労務管理の取り組みを確認する
労働環境を客観的に確認する指標として、国土交通省が創設した「働きやすい職場認証制度」があります。トラック・バス・タクシー事業者の職場環境改善の取り組みを「見える化」する制度です。法令遵守や労働時間・休日、心身の健康などの分野で取り組みを評価し、一つ星から三つ星までの段階で認証します。
公式サイトでは認証事業者を検索できるため、応募を検討している会社が認証を取得しているかを確認しておくと安心です。
参考:国土交通省|働きやすい職場認証制度(正式名称:「運転者職場環境良好度認証制度」)
参考:働きやすい職場認証制度|自動車運送事業者の働きやすい職場認証制度 公式サイト
ここまで紹介した確認項目をまとめると、以下のとおりです。
| 確認項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| 二種免許の取得支援 | 費用負担の範囲と支援を受ける条件 |
| 給与保証制度 | 保証される期間と金額 |
| 新人研修・フォロー | 同乗研修の期間、地理研修、相談窓口の有無 |
| 勤務形態 | 隔日勤務・日勤・夜勤から選べるか |
| 営業環境 | 対応している配車アプリ、車載設備 |
| 公的な認証 | 働きやすい職場認証制度の取得状況 |
6.タクシー運転手がすぐ辞めてしまうことに関するよくある質問

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タクシー運転手になるのに、地理試験はありますか?
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以前は一部の地域で地理の試験科目が課されていましたが、たとえば東京では、2024年2月29日の省令改正で地理科目が廃止され、試験は法令・安全・接遇に関する内容になりました。
ほかの地域で必要な試験や手続きは、勤務を希望する会社や各地の運輸局に確認してください。
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タクシー運転手をすぐ辞めた経歴は、次の転職で不利になりますか?
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短期間での退職は、面接で理由を確認されることが一般的です。辞めた理由と、そこから次の仕事選びで何を重視するようになったかを具体的に説明できれば、納得感を持って伝えやすくなります。
タクシーの運転に必要な二種免許(普通第二種免許)は、ハイヤーや運転代行など、ほかの仕事でも活かせる資格です。
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短期離職の経歴を次の転職でどう伝えるか不安な方は、面接対策についても押さえておくと安心です。以下の記事では、タクシーの面接に落ちる人の理由と、合格するためのコツを詳しく解説しています。
7.仕組みを知り、焦らず続けられる会社を選ぶ
タクシー運転手をすぐ辞めた人の多くは、隔日勤務や歩合制といった仕組みへの理解不足から、入社後にギャップを感じています。公的データを見ると、タクシー事業を含む運輸業・郵便業の離職率は全産業の平均より低い水準です。
タクシー単独の数値ではないものの、「すぐ辞める仕事」とは一概にいえないことがわかります。
公的な事故統計やヒヤリハット調査からは、「空車時の焦り」「明け番の疲れ」「道に不慣れな時期の焦り」が注意したい場面として読み取れます。仕事に慣れていない入社直後は、とくに意識しておきたいポイントです。
給与保証や研修・フォロー体制が整った会社を選べば、こうした時期を落ち着いて乗り越えやすくなります。事前の情報収集と自己分析を丁寧に行い、納得できる会社選びを進めてください。