運行前点検の新ルール｜令和4年改正の重要ポイント

運行前点検は事業用車の安全運行に欠かせない重要な業務です。車両の異常を早期発見し、事故を未然に防ぐために日々実施する必要があります。令和4年の法改正では、運転前後のアルコールチェックの義務化など、点検項目がさらに厳格化されました。

本記事では、運行前点検の基本から法改正のポイント、効率的な実施方法までを詳しく解説します。

１．運行前点検とは？

運行前点検は事業用車両の安全を確保するための重要な作業です。点検を怠ると重大な事故に繋がる可能性があります。ここでは運行前点検の目的や種類について解説します。

運行前点検は、事業用車の運転に際して安全運転管理者が行うべき重要な業務の一つです。事故を未然に防ぎ、ドライバーや周囲の安全を守るために欠かせない作業ですが、近年の事業用車による事故の多発を受け、令和4年に法改正が行われました。

目的は事故を未然に防ぐこと

運行前点検は、車両の安全性を確保し、事故を未然に防ぐことを目的としています。日々の運行で車両は様々なストレスを受けるため、定期的な点検が必要不可欠です。点検を怠ると、重大な事故につながるリスクが高まります。運行前点検を確実に実施することは、ドライバーとしての基本であり、安全運転の大前提と言えるでしょう。

日常点検と定期点検の違いは頻度

運行前点検は「日常点検」と「定期点検」の2種類があります。

日常点検は毎日の運行前に行う簡易的な点検です。定期点検は3ヶ月ごとに実施する詳細な点検になります。点検内容と頻度を理解しましょう。日常点検では発見しづらい箇所もチェックし、車両の状態を総合的に判断します。

実施記録は1年間保存する必要がある

運行前点検の記録は1年間の保存が法律で義務付けられています。これは日常点検と定期点検の両方に適用されます。

日常点検は運行開始前に毎日実施し、定期点検は3ヶ月に1回の頻度で行います。記録には点検実施日時、点検者名、点検結果などの情報を正確に記入する必要があります。記録簿の形式は手書きやデジタルデータなど自由に選べますが、いつでも確認できるよう整理して保管することが重要です。

正確な記録を残すことで、車両の安全管理が徹底でき、万が一の際の証明資料にもなります。このような適切な記録管理は、安全運行の基本となるだけでなく、法令遵守の観点からも欠かせない取り組みです。

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2．運行前点検の確認項目

運行前点検では様々な項目を確認します。車両の状態を総合的に判断するために、各部位を丁寧にチェックすることが重要です。ここでは主な確認項目について説明します。

日常点検の主な確認ポイント

日常点検では目視で確認できる基本的な項目をチェックします。ブレーキの効き具合やタイヤの状態、灯火類の点灯など、運行に直接関わる部分を中心に点検します。異常があれば速やかに対処しましょう。

日常点検では、主に以下のような項目を確認します。

これらの項目を漏れなくチェックし、異常があれば速やかに対処しましょう。

定期点検で重点的にチェックすべき箇所

定期点検では日常点検よりも詳しく車両をチェックします。制動装置やかじ取り装置、サスペンションなど、専門的な知識が必要な部分も含まれます。車両の安全性を総合的に判断するための重要な点検です。

3ヶ月ごとに行う定期点検では、日常点検の項目に加えて、以下のような箇所を重点的に点検します。

定期点検は日常点検よりも時間と手間がかかりますが、プロの運転手として責任を持って実施することが求められます。

ドライバーの健康状態のチェック方法

車両だけでなく、ドライバー自身の健康状態も重要な確認項目です。顔色や目の充血、応答の様子などから体調を判断します。持病がある場合は特に注意が必要です。少しでも異変があれば運転を控えましょう。

運行前点検では車両だけでなく、ドライバー自身の健康状態もチェックしなければなりません。点呼時には、対面で以下のような項目を確認します。

持病のある方は、症状に応じてさらに詳しく確認が必要です。例えば、高血圧の方は頭痛やめまいの有無、心臓病の方は動悸や息切れなどをチェックします。
少しでも異変を感じたら無理をさせず、代替ドライバーを手配するなどの配慮が必要不可欠です。

▼アルコールチェック義務化についてもっと詳しく

以下の記事では、運送業のアルコールチェック義務化の最新動向から実施方法、対象範囲、罰則まで解しています。白ナンバー・緑ナンバー両方に対応した実践的なガイドになりますので、ぜひ参考にしてください。

3．令和4年の法改正で変わった点

2023年12月1日より、運転前後のアルコールチェックが義務化されました。

この制度改正では、従来の目視確認だけでは不十分となり、アルコール検知器を用いた確認が必須となりました。安全運転管理者は国家公安委員会が定める基準に適合した検知器を常備し、適切に使用しなければなりません。

注目すべき点は、アルコールチェックの対象が大幅に拡大されたことです。青ナンバーだけでなく白ナンバーの事業用車も含め、社用車やレンタカーなど業務に使用するすべての車両が対象となりました。これにより、運行管理者の責任範囲は以前より広がり、管理の重要性が増しています。

また、アルコールチェックの結果は記録し、1年間保存することが義務付けられています。記録には検査日時、運転者名、検査方法、検知器の器具名、測定結果などを正確に記載する必要があります。

電子データでの保存も認められているため、各事業所の状況に合わせて効率的な記録管理が可能です。この義務化により、飲酒運転防止対策がさらに強化され、道路交通の安全性向上が期待されています。

4．法改正への対応ポイント

法改正に適切に対応するためには、いくつかの準備が必要です。組織として体制を整え、必要な機器を導入することが求められます。ここでは主な対応ポイントについて解説します。

安全運転管理者の選任が必要

アルコールチェックの義務化に伴い、事業所ごとに安全運転管理者を選任する必要があります。管理者は必要な知識を習得し、責任を持って業務を遂行できる人材を選びましょう。研修などで知識を更新することも大切です。

アルコールチェック用の記録簿の用意

アルコールチェックの記録は法定項目を漏れなく記載できるフォーマットを用意します。改ざんできない形で保存することが重要です。管理ルールを明確にし、確実に記録を残せる仕組みを作りましょう。

手書きでもデータでも構いませんが、記録の管理ルールを決め、確実に運用しましょう。

基準に適合したアルコール検知器の購入

令和5年12月１日からは、アルコール検知器が国家公安委員会の定める基準に適合したものでなければなりません。

警告音や数値表示などの機能を有し、呼気中のアルコールを正確に検知できる機種を選定します。導入前には取扱説明書をよく確認し、メンテナンス方法も理解しておきましょう。

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5．運行前点検の効率的な実施のコツ

運行前点検を効率的に実施するためには工夫が必要です。単なる義務としてではなく、安全確保のための重要な業務として取り組む姿勢が大切です。効率化のポイントを紹介します。

点検漏れを防ぐチェックリストの活用法

点検漏れを防ぐには、適切なチェックリストの活用が効果的です。車両の特性に合わせたリストを作成し、確実に点検できる環境を整えましょう。重要項目は目立つように工夫し、注意を喚起することも大切です。

紙でもデジタルでも構いませんが、記入漏れを防止し、点検記録をすぐに取り出せる方式がおすすめです。重要項目はわかりやすく示し、点検者の注意を喚起するのも良い方法です。

各点検を一覧で管理する体制を整える

日常点検だけでなく、車検や法定点検の時期も一元管理することが重要です。点検時期を一覧で確認できるシステムを構築し、計画的に実施できる体制を整えましょう。車検切れを防ぐための工夫も必要です。

特に車検切れは絶対に避けなければならないため、車検満了日の1ヶ月前にはアラートを出すなどの工夫が必要です。社内の整備士を活用するのも良いでしょう。

ドライバーの意識を高める教育体制の構築

運行前点検を形骸化させないためには、全員の意識向上が不可欠です。点検の重要性や具体的な方法について、定期的に研修を行いましょう。知識を共有し合える環境づくりも効果的です。

運行前点検を形骸化させないためには、ドライバー一人一人の意識を高める教育が重要です。点検の重要性や具体的な方法について、定期的に研修を行いましょう。
運行管理者が手本を示し、ドライバー同士で知識を共有し合える環境を作ることで、安全運転への意識が高まります。ベテランドライバーが若手を指導するOJTも効果的です。

6．安全運行の基本を守るために

運行前点検は安全運行の基本となる重要な業務です。点検を怠れば重大な事故に繋がる可能性があります。定められた項目を漏れなく確認し、異常があれば早期に対処することが何より大切です。

令和4年の法改正では、アルコールチェックの義務化など、ドライバーの健康状態の確認がさらに厳格化されました。正しい知識を身につけ、機器の管理を含めたルールの運用を徹底する必要があります。

運行前点検を効率的に行うためには、チェックリストの活用や点検時期の一元管理、教育体制の構築など様々な工夫が必要です。全社一丸となって取り組む体制を作り、日々の安全運行に繋げていきましょう。