運行管理者試験の合格率が低い理由とは？合格するポイントは？

運行管理者試験の合格率は、貨物で14.4～43.9％、旅客で17.5～47.4％と低い水準で推移しています。仕事と家庭を両立しながら勉強時間を確保する難しさ、頻繁な法改正による出題範囲の拡大、試験問題の難易度上昇などが背景にあります。

本記事では合格率低迷の要因を分析し、効果的な学習法と心構えを解説します。

1．運行管理者試験の合格率推移と試験制度の概要

運行管理者試験は、安全運行の要となる重要な国家資格です。合格率の推移や試験の出題範囲、一般講習と基礎講習の位置づけなど、試験制度の全体像を把握しましょう。

合格率データに見る試験の難易度変遷（運行管理者の合格率は低い）

運行管理者試験の合格率が低い背景には、受験者側と試験制度側の両面に要因があります。

それぞれの視点から合格率低迷の理由を分析し、対策のヒントを探っていきましょう。

運行管理者試験の合格率は、過去10年間で貨物が14.4～43.9％、旅客が17.5～47.4％の間で推移しています。最新の情報によると、令和6年度第1回試験では、貨物で32.9％、旅客で30.7％となっています。

合格率が低迷している背景には、いくつかの要因があります。

1. 2016年1月の長野県軽井沢スキーバス事故後、国土交通省の安全指導が強化され、運行管理者の責任が重くなりました。
2. 運送事業者の重大事故発生を背景に、頻繁な法改正による出題範囲の拡大や、運送業界の安全意識向上に伴う試験問題自体の難易度が上昇していています。
3. 近年の運行管理者試験は合格率20～30％前後で推移しており、もはや一夜漬けの学習で合格することは困難です 。
4. 2021年度（令和3年度）以降の運行管理者試験はCBT試験方式に変更されており、試験形式の変化も受験者にとって影響を与えています。

参考文献：運行管理ラボ｜2024年度運行管理者試験合格率公開！合格率が低い4つの理由とは

運行管理者試験（貨物）合格率一覧

年度	受験者数	合格者数	合格率
令和6年度 第1回	非公開	非公開	32.9%
令和5年度 第2回	22,493人	7,701人	34.2%
令和5年度 第1回	26,293人	8,805人	33.5%
令和4年度 第2回	23,759人	8,209人	34.6%
令和4年度 第1回	28,804人	11,051人	38.4%
令和3年度 第2回	27,982人	9,028人	32.3%
令和3年度 第1回	34,164人	10,164人	29.8%
令和2年度 第2回	32,575人	14,295人	43.9%
令和2年度 第1回	39,630人	12,166人	30.7%
令和元年度 第2回	中止	–	–
令和元年度 第1回	36,530人	11,584人	31.7%
平成30年度 第2回	29,709人	9,743人	32.8%
平成30年度 第1回	35,619人	10,220人	28.7%
平成29年度 第2回	29,063人	9,605人	33.0%
平成29年度 第1回	37,774人	13,238人	35.0%
平成28年度 第2回	29,621人	6,069人	20.5%
平成28年度 第1回	36,028人	10,868人	30.2%

この5年間の平均合格率は約34.5%となります。特に令和2年度第2回の43.9%が最も高く、令和3年度第1回の29.8%が最も低い合格率でした。

出典：公益財団法人 運行管理者試験センター｜「合格発表」

運行管理者試験（旅客）合格率一覧

年度	回数	受験者数	合格者数	合格率
令和6年度	第1回	–	–	30.7%
令和5年度	第2回	5,434人	1,984人	36.5%
令和5年度	第1回	5,158人	1,780人	34.5%
令和4年度	第2回	4,675人	1,651人	35.3%
令和4年度	第1回	5,403人	2,167人	40.1%
令和3年度	第2回	5,787人	1,999人	34.5%
令和3年度	第1回	6,740人	2,196人	32.6%
令和2年度	第2回	7,610人	3,604人	47.4%
令和2年度	第1回	9,714人	3,026人	31.2%
令和元年度	第2回	中止	–	–
令和元年度	第1回	8,263人	2,624人	31.8%
平成30年度	第2回	7,605人	2,868人	37.7%
平成30年度	第1回	8,998人	2,856人	31.7%
平成29年度	第2回	8,588人	2,928人	34.1%
平成29年度	第1回	10,462人	3,694人	35.5%
平成28年度	第2回	8,028人	2,085人	36.0%
平成28年度	第1回	8,169人	2,876人	34.1%

※過去5年間の旅客試験の平均合格率は約35.3%です。
※令和元年度第2回は新型コロナウイルスの影響で中止になりました。

参考：公益財団法人 運行管理者試験センター｜合格発表

試験の出題範囲と合格基準

近年は、運送事業者の重大事故の発生などを背景に、難易度が上がってきています。合格率は過去5年間の平均で貨物が34.5%、旅客が35.3%となっています。

運行管理者試験は貨物と旅客の2種類があり、それぞれ5つの科目から構成されています。

• 貨物試験
  法令、運行管理の実務、車両管理の実務、運行の安全確保、その他の運行管理業務に関する知識と能力
• 旅客試験
  法令、運行管理の実務、安全運転管理、事故防止対策、その他の運行管理業務に関する知識と能力

この試験に合格するには、全30問中18問以上（60%以上）の正解に加え、各科目で少なくとも1問、「その他の運行管理業務」については2問以上の正解が必要です。このように、幅広い分野での専門知識が要求されるため、運行管理者試験は交通安全の専門家を認定する難関試験といえます。

参考：公益財団法人 運行管理者試験センター｜過去の試験問題

参考：国土交通省｜自動車運送事業に係る運行管理者制度について

一般講習と基礎講習について

運行管理者試験を受けるには、基礎講習と一般講習という2種類の講習が関係してきます。これらの役割は異なりますので、わかりやすく整理します。

基礎講習とは

基礎講習は、運行管理に関する1年以上の実務経験の代わりとなる講習です。この講習を修了することで運行管理者試験の受験資格を得ることができます。

• 対象者：実務経験がない運行管理者を目指す方
• 期間：約3日間（16時間程度）
• 内容：運行管理に必要な基本的な法令や業務知識

メリットとしては、受講により「運行管理者試験」の受験資格を得られ、また「補助者」にも選任できるようになります 。

一般講習とは

国交省指定の2年に1度受講が必要な講座です。すでに運行管理者として選任されている方が最新の知識を更新するための講習になります。

• 対象者：すでに運行管理者として選任されている方
• 期間：1日程度
• 内容：最新の法令改正内容や実務上の注意点

運行管理者に選任された後も、2年に1回は必ず受講するのが義務です。

講習と試験の関係

お運転管理者の資格取得について、基礎講習と実務経験の条件、申込みから受験までの流れを見てみましょう。

1. 受験資格の条件
   • 運行管理に関する1年以上の実務経験があるか、受験日より2年以内に基礎講習を修了している
2. 受験申込の流れ： 受験申込の時点で基礎講習の申込が完了していれば、「基礎講習修了見込み」者として受験申込が可能です。ただし受験日までに受講を修了していることが必要です。
3. 基礎講習修了証の提出： 基礎講習終了後、速やかに基礎講習修了証または運行管理者講習手帳を提出する必要があります。提出がない場合は受験できません 。

▼運行管理者資格のメリットは？

難しいけど、運行管理者資格は取った方がいい？以下の記事では、運行管理者の給与、仕事内容から資格取得方法まで解説しています。あわせて参考にしてください。

2．合格率が低迷する背景にある重要なポイント2点

運行管理者試験の合格率が低い背景には、受験者側と試験制度側の両面に要因があります。それぞれの視点から合格率低迷の理由を分析し、対策のヒントを探っていきましょう。

①受験者側の要因（仕事や家庭との両立、勉強時間確保の難しさ）

運行管理者試験に挑戦する人の多くは、30〜50代の男性で、運送会社でドライバーや事務職として働いています。彼らは仕事と家庭の両方の責任を抱えながら、空いた時間で試験勉強をしなければなりません。

運送業界では長時間労働や不規則なシフトが普通なので、勉強のためのまとまった時間を確保するのが非常に難しいのが現実です。さらに、体力的にも消耗する仕事が続くため、勉強へのやる気を維持し続けることも大変です。

②試験制度側の要因（頻繁な法改正、出題範囲の広さ）

運行管理者試験の合格率が低迷している背景には、試験制度自体の問題も大きく関わっています。

まず、運送事業の法令が頻繁に改正されるため、受験者は常に最新の知識を身につける必要があります。特に軽井沢スキーバス事故以降、国土交通省は安全確保のための新たな基準を設け、運行管理者の責任はより重くなりました。

現在の試験では、法令だけでなく、運行管理や車両管理の実務、安全運転管理など多くの分野から出題されます。このように幅広い専門知識が求められることも、合格率を下げている要因の一つです。

合格率を向上させるには、受験者の努力だけでなく、試験制度の見直しや業界全体の働き方改革など、さまざまな角度からの取り組みが必要だと考えられます。

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3．働きながら運行管理者試験の合格は可能か

運送業界で働きながら運行管理者試験に合格することは確かに難しい挑戦ですが、適切な学習方法を取り入れることで十分に実現可能な目標です。仕事と両立させるために、日々の生活の中で効率的に時間を使うことが重要になります。

例えば、通勤中や休憩時間などのわずかな隙間時間を活用して、スマートフォンの学習アプリで問題を解いたり、音声教材で重要ポイントを繰り返し聞いたりすることができます。こうした小さな学習の積み重ねが、知識の定着に大きく貢献します。

また、週末や休日には図書館や自宅の静かな環境で、まとまった時間を確保して集中的に学習するとよいでしょう。特に苦手分野の克服や過去問題の演習には、集中できる環境が欠かせません。

独学での勉強に限界を感じた場合は、自分のペースで学べる通信講座や、専門的な指導が受けられる専門学校の利用も検討する価値があります。どちらを選ぶにしても、自分の生活リズムや学習スタイルに合った方法を選ぶことが大切です。

最終的には、自分に最適な学習プランを立てることが、働きながらの試験合格への近道となるでしょう。

4．【合格者が語る】合格率が低くても運行管理者を目指す理由

難関試験に挑戦し続ける受験者たちの動機とは何でしょうか。キャリアアップの可能性や業界の安全を支える使命感など、合格者の声から運行管理者の魅力に迫ります。

運行管理者試験の合格率の低さに尻込みする人がいる一方で、難関に挑み続ける受験者も数多くいます。運行管理者を目指す理由とは何なのでしょうか。

また、キャリアアップと収入面でのメリットを挙げる人も少なくありません。

さらに、運行管理者としての使命感や責任感を口にする人も多くいます。

運行管理者試験の合格率の低さは、確かに受験者にとって大きな障壁となっています。しかし、その難関を乗り越えた先にある、運行管理者としてのキャリアの可能性や、業界の安全を支える誇りは、多くの人を突き動かす原動力となっているのです。

▼運行管理者のメリットとデメリットは？

以下の記事では、運行管理者の仕事内容からメリット・デメリット、年収まで解説しています。未経験でも分かる業界の実態と将来性を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

5．運行管理者試験に合格するための具体的アドバイス

合格への近道は効率的な学習方法と適切な心構えにあります。過去問演習の取り組み方や専門用語の覚え方、モチベーション維持のコツなど、実践的なアドバイスを紹介します。

過去問演習と専門用語の押さえ方

運行管理者試験対策で欠かせないのが、過去問演習です。本試験と同じ形式の問題を数多くこなすことで、時間配分の感覚をつかむことができます。過去問に取り組む際は、解説をしっかりと読み込み、出題の傾向や頻出テーマを分析することが大切です。

また、運行管理者試験では専門用語の理解が試されることが多いため、キーワードを確実に押さえておく必要があります。「改善基準告示」「事業用自動車」「運行指示書」など、頻出の用語は、意味や定義とともに覚えるようにしましょう。

失敗は成功のもと ｜再受験に向けた意欲の保ち方

運行管理者試験は合格率が低いため一度不合格になると諦めたくなりますが、前回の経験を活かすことが大切です。実際に多くの人が一度目の不合格から弱点を見つけて克服し、二度目の受験で合格しています。

この難関試験を突破するには効率的な学習方法を実践することと諦めない精神力を持つことが重要です。これらのポイントを心がければ、必ず合格への道が開けるはずですので、一緒に頑張りましょう。

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6．運行管理者合格への道は諦めない心が大切

運行管理者試験の合格率が低い背景には、仕事や家庭との両立の難しさ、法改正による出題範囲の拡大、安全意識向上に伴う試験難易度の上昇があります。しかし、適切な学習計画と効率的な勉強法を実践すれば、働きながらでも合格は十分可能です。

隙間時間を活用した日々の積み重ねと、週末の集中学習を組み合わせることが重要です。過去問演習で出題傾向を掴み、専門用語を確実に理解しましょう。不合格を経験しても、それを次への糧として諦めずに挑戦を続けることが合格への鍵となります。

運行管理者には、キャリアアップや収入面でのメリットだけでなく、運送業界の安全を支える誇りとやりがいがあります。明確な目標を持ち、周囲のサポートを得ながら、合格を目指しましょう。

▼運行管理者のその先…？

以下の記事では、統括運行管理者の役割や運行管理者との違い、法定選任基準、主な仕事内容、なり方やキャリアパスについて詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。