運行管理者は、事業用自動車が安全に運行できるように管理・監督を行う国家資格です。
運送業では運行管理者の配置が義務付けられており、欠かせない存在となっています。そして、運行管理者の資格を取得することで、運送業界でのキャリアアップが期待できます。
本記事では、運行管理者の役割、資格取得方法について詳しく解説します。
- 運行管理者の具体的な仕事内容と重要性
- 運行管理者になるための2つの方法と試験の概要
- 運行管理者資格取得後のキャリアと将来性
1.運行管理者の役割と重要性

運行管理者の重要性は、交通・運送企業の安全と効率を支える点にあります。
まず、安全面における役割として、運行管理者は運転手の健康状態や勤務時間を適切に管理し、過労運転を防ぎます。
また、車両の整備状況を定期的にチェックし、事故のリスクを最小限に抑えます。さらに、天候や道路状況に応じて運行計画を調整することで、危険な状況を回避します。
効率面でも、運行管理者の役割は重要です。適切な運行計画と管理により、定時運行や効率的な配送が実現します。
また、運行管理者は法令遵守の要としても機能します。関連法規の理解と適用を徹底することで、企業のコンプライアンスを確保し、健全な事業運営を支えています。
このように、運行管理者は陰ながら企業を支える重要な存在です。
2.運行管理者資格について
運行管理者資格とはどんな資格か
運行管理者とは、自動車運送事業(バス、タクシー、トラックなど)において、安全で確実な運行を確保するために必要な国家資格です。
この資格は、道路運送法および貨物自動車運送事業法に基づいて定められており、旅客自動車運送事業と貨物自動車運送事業の2種類に分かれています。
運行管理者は、各営業所に配置することが法律で義務付けられており、事業用自動車の数に応じて必要な人数が定められています。
運行管理者の必要性
先述した通り、運行管理者の存在は、運送業界の安全性と効率性を確保する上で極めて重要です。
安全運行の確保、法令遵守の徹底、効率的な運行管理、緊急時の対応、品質向上などの役割を果たすことで、企業の信頼性と競争力の向上に大きく貢献しています。
3.運行管理者の具体的な仕事内容

運行管理者の仕事は多岐にわたり、安全で効率的な運送業務を支える重要な役割を果たしています。
主な業務内容には以下のようなものがあります。
- ドライバーの健康管理
- 車両の安全管理
- 運行計画の作成と管理
- 法令遵守の徹底
- 事故防止と安全教育
- 緊急時の対応
- 記録の管理と報告
- 運送品質の向上 など
これらの業務を通じて、運行管理者は運送業務の安全性、効率性、そして品質の向上に大きく貢献しています。
4.運行管理者になる2つの方法

運行管理者の資格を取得する方法は2つあります。
1つは運行管理者の国家試験に合格すること、もう1つが一定の実務経験で特定の条件を満たして取得する方法です。
国家試験に合格する
国家試験に合格する方法では、20歳以上で運行管理者基礎講習を受講していることが受験資格となります。
試験で資格を取得するメリットは、年齢や経験を問わず受験可能で、短期間で資格取得ができることです。
一方で、試験対策に時間と労力が必要で、合格率が40%程度と難易度が比較的高めであるといえるでしょう。
特定の条件を満たす
特定の条件を満たす方法では、旅客または貨物自動車運送事業の実務経験が通算5年以上あり、その間に運行管理者講習(基礎講習1回を含む)を5回以上受講していることが必要です。
申請方法は所定の申請書類を運輸支局などに提出し、実務経験と講習受講の証明が必要です。
この方法のメリットは試験勉強が不要で、実務経験を活かせ、確実に資格を取得できることです。
一方で、長期の実務経験が必要で、定期的な講習受講が必須、年齢制限がある場合があるのがデメリットです。
5.運行管理者試験の概要
運行管理者試験の日程と会場
運行管理者試験は年2回、例年3月と8月に実施されています。試験は全国の主要都市で開催され、各都道府県に最低1会場が設置されます。
申請期間は試験日の約3ヶ月前から1ヶ月間で、インターネットまたは書面で申請が可能です。申請期間は試験日の約2ヶ月前には締め切られるため、受験を検討している方は早めの準備が重要です。
試験は多肢選択式で30問出題され、試験時間は2時間です。合格基準は全体の正答率が60%以上かつ各分野で最低限の正解数を満たすことです。
運行管理者試験の科目と出題範囲(関連法規など)
運行管理者試験は、運送業務に関連する幅広い知識を問う内容となっています。
主な出題範囲は法令関係と実務上の知識に大別されます。
法令関係では道路運送法または貨物自動車運送事業法、道路運送車両法、道路交通法、労働基準法が含まれます。
実務上の知識では運行管理の実務に関する問題が出題されます。
具体的な出題内容には、
- 運行管理者の業務と責任
- 乗務員の労務管理
- 車両の点検整備と関連書類の管理
- 事故防止対策と安全運転指導
- 緊急時の対応
- 運送約款と料金制度
- 運行計画の作成と管理
- 関係法令の最新動向
などが含まれます。
運行管理者試験の合格基準と合格率
運行管理者試験の合格基準は、全体の正答率が60%以上(30問中18問以上)の正解が必要で、さらに分野別の最低正解数を満たす必要があります。
合格率は例年40%前後で推移しており、令和4年3月実施の試験では、旅客・貨物ともに約40%の合格率でした。
合格発表は試験日から約1ヶ月後に行われ、試験センターのウェブサイトで確認可能です。
合格率は比較的低めですが、しっかりとした対策を行えば十分に合格可能な水準です。
6.運行管理者資格の学習方法

おすすめの学習方法と教材
運行管理者試験に向けた効果的な学習方法としては、基礎講習の活用、過去問題の徹底演習、分野別の集中学習、模擬試験の活用などが挙げられます。
おすすめの教材には、過去問題や模擬問題集、オンライン学習サービス、学習アプリなどがあります。
効率的な学習計画として、3〜6ヶ月の準備期間を設定し、毎日30分〜1時間の学習時間を確保することが推奨されます。
重点的に学ぶべき分野には、関係法令の最新改正点、運行管理の実務に関する具体的事例、計算問題の解法などがあります。
運行管理者資格試験の注意点
運行管理者試験に関するよくある質問として、試験の難易度、実務経験の必要性、複数資格の取得可能性、再受験に関する質問などがあります。
注意点としては、申請期間を逃さないこと、基礎講習の有効期限を確認すること、試験当日の持ち物を確認すること、時間配分に気をつけること、マークシートの記入を丁寧に行うことなどが挙げられます。
計画的かつ効率的な試験対策を行うことで、運行管理者試験合格への道が開けるでしょう。
7.運行管理者になる前に知っておくべきこと
運行管理者はドライバーと兼任できない
運行管理者の重要な注意点として、ドライバー業務との兼任ができないことが挙げられます。
これは道路運送法、貨物自動車運送事業法により規定されており、運行管理者は専任であることが求められます。
この規定の背景には、運行管理業務の重要性と責任の大きさ、緊急時の対応能力確保、客観的な判断と管理の必要性があります。
ただし、極めて小規模な事業所など、一部の例外的なケースでは限定的な兼任が認められる場合があります。
この規定により、事業者は適切な人員配置計画の策定や運行管理者の増員検討が必要となります。
運行管理者の資格取得後、定期的な講習が必要
運行管理者資格の取得後も、継続的な学習と能力向上が求められます。
基礎講習は新たに運行管理者に選任される予定の者を対象に、一般講習は運行管理者として選任されている者を対象に、特別講習は行政処分を受けた事業所の運行管理者を対象に実施されます。
これらの講習は、最新の法令や技術動向の習得、事故防止対策の更新、他社の事例や好事例の学習など、プロフェッショナルとしての能力維持・向上に重要な役割を果たします。
講習受講のメリットには、法令遵守の徹底、安全管理能力の向上、キャリアアップの機会、同業者とのネットワーク構築などがあります。
定期的な講習は、運行管理者としての能力を維持・向上させるだけでなく、企業の安全性と品質の向上にも大切です。
8.運行管理者の資格を取得するメリット

キャリアアップと収入アップの可能性
運行管理者資格を取得することで、キャリアアップと収入アップの可能性が広がります。
昇進・昇格の機会が増加し、管理職への登用チャンスが増えます。また、資格手当の支給や昇格に伴う基本給のアップなど、収入面でのメリットも期待できるでしょう。
さらに、業界内での評価向上や転職市場での価値上昇、コンサルタントや講師としての副業機会など、専門性が高く評価されます。
責任ある立場に就くことで、意思決定への参画や部下の育成・指導、会社の安全方針策定への関与など、より広い視野で業務に携わることができます。
また、マネジメントスキルやコミュニケーション能力、問題解決能力の向上など、個人のスキルアップにもつながります。
専門性を活かした長期的な働き方
運行管理者の資格は、長期的なキャリア形成において大きな強みとなります。
運行管理者は経験を積むほど価値が高まる職種です。キャリアパスの多様性も魅力の一つで、運送会社内でのキャリアアップ、関連業界への転職、独立開業など、様々な選択肢があります。
継続的な学習機会が確保されており、定期的な講習による最新知識の習得や、法改正や新技術への対応力強化が可能です。
年齢に関わらず活躍できる職域であり、経験が重視される職種のため年齢による不利が少なく、体力的な負担も比較的少ないため長く働くことができます。
9.運行管理者資格を取得すること
運行管理者は、運送業界の安全性と効率性を確保する重要な職務です。
この資格は、法令遵守だけでなく、個人のキャリア発展と業界全体の質向上に寄与します。テクノロジーの進化と法規制の変化に伴い、その役割はさらに重要になると予想されます。
運行管理者としてのキャリアは、専門性を活かした安定した選択肢となり、物流コンサルタントや国際的な舞台での活躍など、多様な可能性を秘めています。
▼運送業で役立つ資格についてさらに知りたい方はこちら
以下では、運送業でどのような資格があるのかをまとめてご紹介しています。また、けん引免許や、危険物取扱者の資格概要、メリット、取得方法もあわせてご紹介します。