自動車整備士資格の完全ガイド｜各級の概要や取得ルートなど

自動車業界で安定したキャリアを築きたいと考えているあなたにとって、自動車整備士資格は重要な選択肢の一つです。

この記事では、自動車整備士資格の全体像から具体的な取得方法、費用対効果まで、転職や就職を成功させるために必要な情報を包括的にお伝えします。

1．自動車整備士の業務内容

自動車整備士は、車の安全性と快適性を支える専門技術者として、現代の車社会に欠かせない存在です。ここでは、自動車整備士の具体的な業務内容と、なぜ国家資格が必要なのかを詳しく解説します。

自動車整備士の仕事内容と社会的役割

自動車整備士の業務は4つに分類されます。

6ヶ月から24ヶ月周期の点検でエンジンやブレーキ等重要部品の安全性を確保し、走行トラブルに迅速対応することで、交通事故防止と社会全体の安全維持に貢献しています。

資格の有無で変わる整備作業

自動車整備士の資格は、作業の安全性と技術的複雑さによって業務範囲を明確に区分しています。

無資格者でもタイヤ・オイル交換や板金塗装などの基本作業は可能ですが、エンジン分解や足回りの分解整備など保安基準に関わる重要な作業は有資格者のみが実施できます。

参考：株式会社サクラボ｜クラッチ求人｜無資格で自動車整備の仕事は出来るの？無資格・未経験で整備士に転職/有限会社千代島自動車整備工場｜自動車整備士とはどんな資格？柳川市の自動車整備についてもご紹介！

▼自動車整備士の仕事の分類について

以下の記事では、自動車整備士の職種・業種分類を解説しています。履歴書の正しい記載方法から転職成功のコツまで実践的知識をお届けしているので、ぜひ参考にしてください。

2．自動車整備士資格の種類

自動車整備士資格は3級、2級、1級、特殊整備士の4つの階級に分かれており、それぞれに異なる専門分野があります。ここでは各資格の特徴と、あなたのキャリア目標に応じた最適な選択方法をご紹介します。

3級自動車整備士｜基礎的な整備ができる入門資格

3級自動車整備士は4種類に分かれ、それぞれ基本的な整備のみ担当できます。

タイヤ交換、エンジンオイル交換、フィルター交換、簡単な点検・調整作業などの日常的なメンテナンスが主な業務です。エンジンや足回りの分解を伴う複雑な整備、高度な故障診断や修理は行えず、これらの作業には2級以上の資格が必要となります。

参考：株式会社 クイック｜整備士JOBS｜3級自動車整備士の資格 ～種類・試験内容・難易度

2級自動車整備士｜現場で最も求められる実用資格

2級自動車整備士は、最も実用性の高く取得者の多い資格です。3級と異なり、エンジンや足回りの分解整備など高度な作業が可能になります。

2級資格があれば、ほとんどの整備業務を担当でき、車検における分解整備、エンジンやブレーキシステムの修理、電子制御装置の診断など、整備士として必要な作業のほぼ全てが可能になります。

自動車検査員受験には、2級ガソリン自動車整備士か2級ジーゼル自動車整備士の資格が必要です。

参考：株式会社クイック｜整備士JOBS｜2級自動車整備士の資格 ～種類・試験内容・難易度

1級自動車整備士｜最高峰の専門技術者資格

1級自動車整備士は、自動車整備士資格の最高峰に位置づけられる専門技術者資格です。現在、実際に取得可能なのは1級小型自動車整備士のみで、1級大型自動車整備士と1級二輪自動車整備士は試験が行われていません。

1級では、ガソリン・ジーゼル・シャシに分類されている2級・3級とは違い、ひとつの資格ですべての部分を整備できます。

参考：株式会社クイック｜整備士JOBS｜1級自動車整備士の資格 ～種類・試験内容・難易度

特殊整備士｜専門分野のスペシャリスト資格

特殊整備士は、自動車整備士の中でも特定の分野に特化した専門資格です。現在取得できるのは、自動車電気装置整備士と自動車車体整備士の2種類で、自動車タイヤ整備士の試験は行われていません。

自動車電気装置整備士は、バッテリー、電子制御装置、冷暖房装置などの電気系統を専門とし、現代の高度に電子化された車両には欠かせない存在です。

自動車車体整備士は、フレームやボディの点検・修理・整備を担当し、事故車両の修復や板金塗装業務に従事します。必須な資格という訳ではないですが、より専門的な知識を付けられるチャンスになります。

参考：株式会社サクラボ｜クラッチ求人｜特殊整備士資格とは？仕事内容や受験条件、必要な実務経験

3．自動車整備士資格の取得ルート

自動車整備士資格を取得する方法は複数あり、それぞれに特徴があります。ここでは主要な取得ルートを詳しく解説し、あなたの状況に最適な選択ができるよう情報を提供します。

自動車整備専門学校で1・2級取得

自動車整備士専門学校での2年制課程は、最も一般的で確実な資格取得方法で、実務経験なしで受験できるのが最大のメリットです。

また、就職サポートも充実しており、整備工場やディーラーとの強いネットワークにより高い就職率を実現しています。

1級自動車整備士コース

1級整備士コースの場合、さらに4年間の専門教育を受けます。より高度な診断技術や最新の自動車技術について学び、4年次修了時に1級自動車整備士の受験資格を取得します。

2級自動車整備士コース

2級整備士コースでは、3年間で基礎的な自動車整備技術を学習します。3年次修了時に2級自動車整備士の受験資格を取得し、試験に合格すれば2級資格を取得できます。

参考：一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会｜自動車整備士を希望されるみなさんへ

自動車科の高校を卒業

高校の自動車科に入学し、3年間で自動車の基礎知識と実技を学習します。3年次修了時に3級自動車整備士の受験資格を取得し、卒業と同時に3級資格を取得できます。

2級整備士を目指す場合は、3級取得後に2年以上の実務経験を積む必要があります。整備工場やディーラーなどで実際の整備作業に従事し、経験を重ねた後に2級自動車整備士の受験資格を得て、試験に挑戦することができます。高校卒業後、合計5年で2級資格取得が可能です。

参考：一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会｜自動車整備士を希望されるみなさんへ

大学・高校で特定の学科を卒業

高校または大学の機械・電気・電子に関する学科を卒業後、まず6ヶ月以上の自動車整備に関する実務経験を積みます。この実務経験により3級自動車整備士の受験資格を取得し、試験に合格すれば3級資格を取得できます。

2級整備士を目指す場合は、さらに実務経験を重ね、大学卒業者は1年半以上、高校卒業者は2年以上の実務経験が必要です。必要な実務経験を満たした後、2級自動車整備士の受験資格を得て試験に挑戦できます。

参考：一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会｜自動車整備士を希望されるみなさんへ

働きながら取得

まず自動車整備工場などで1年以上の実務経験を積む必要があります。この実務経験により3級自動車整備士の受験資格を取得し、試験に合格すれば3級資格を取得できます。

2級整備士を目指す場合は、さらに長期間の実務経験が必要となり、3年以上の実務経験を積まなければなりません。合計4年以上の実務経験を経て、ようやく2級自動車整備士の受験資格を得ることができ、試験に挑戦できます。

参考：一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会｜自動車整備士を希望されるみなさんへ

▼自動車整備士になるために

自動車整備士への転職完全ガイド！以下の記事では、未経験から始める5つのステップ、必要な資格、転職サイト活用法まで詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

4．各級の試験内容と合格率・難易度

自動車整備士試験の合格率は資格レベルや受験者の背景によって大きく異なります。ここでは、各級の試験概要と実際のデータに基づいた合格率・難易度を詳しく解説します。

3級自動車整備士の試験概要

3級自動車整備士は、学科試験と実技試験の両方に合格する必要があり、基本的な整備技術と法規知識が問われます。

	学科	実技
試験料	7,200円	14,000円
出題数（四肢択一式）	30問	3問
試験時間	60分	30分

学科試験と実技試験の合格率は下記のとおりです。

学科試験の合格率

3級シャシ	3級ガソリン	3級ジーゼル	3級二輪
67.4 %	68.4 %	59.0%	87.7％

3級自動車整備士試験の学科試験の合格率は70％程度で、資格の種類や年度によって変動があります。学科試験の合格ラインは、それぞれ1問1点、30点満点に対し21点以上です。

実技試験の合格率

3級シャシ	3級ガソリン	3級ジーゼル	3級二輪
約62%	約61%	–	–

実技試験の合格率は60％程度で、3級ジーゼル、3級二輪自動車の実技試験は受験者がいないために直近での実施はありません。

参考：一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会｜自動車整備技能登録試験のご案内（令和3年度）/関東工業自動車大学校｜自動車整備士資格の実技試験の内容とは？実技試験の合格率や出題問題を徹底解説！/株式会社 クイック｜整備士JOBS｜3級自動車整備士の資格 ～種類・試験内容・難易度

2級自動車整備士の試験概要

2級自動車整備士は3級の上位資格で、より専門的な整備技術と知識が求められる国家資格です。ガソリン、ジーゼル、シャシの3種類があり、学科試験は高い合格率ですが、実技試験の合格率は低めです。

	学科	実技
試験料	7,200円	14,000円
出題数（四肢択一式）	シャシ：30問 ガソリン・ジーゼル・2輪：40問	3問
試験時間	シャシ：60分 ガソリン・ジーゼル・2輪：80分	30分

学科試験と実技試験の合格率は下記のとおりです。

学科試験の合格率

2級シャシ	2級ガソリン	2級ジーゼル
94.8 ％	86.2 %	94.3%

2級自動車整備士試験の学科試験の合格率は92％程度で、資格の種類や年度によって変動があります。

学科試験の合格ラインは、それぞれの分野ごとに40パーセント以上の成績で、2級シャシが1問1点、30点満点中21点以上、2級ガソリン・ジーゼルが、1問1点、40点満点中28点以上必要です。

実技試験の合格率

2級シャシ	2級ガソリン	2級ジーゼル
約20%	約40%	約20%

実技試験の合格率は20～40％程度です。

参考：一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会｜自動車整備技能登録試験のご案内（令和3年度）/関東工業自動車大学校｜自動車整備士資格の実技試験の内容とは？実技試験の合格率や出題問題を徹底解説！/株式会社 クイック｜整備士JOBS｜2級自動車整備士の資格 ～種類・試験内容・難易度

1級自動車整備士の試験概要

1級自動車整備士は自動車整備技術の最高峰資格として位置づけられ、高度な診断技術と専門知識が求められる国家資格です。1級を取得している人はそれほど多くなく、自動車整備士は2級取得で一人前とされています。

	学科	実技
試験料	9,300円	14,000円
出題数（四肢択一式）	筆記試験：50問 口述試験：2問	4問
試験時間	筆記試験：100分 口述試験：10分	40分

学科試験と実技試験の合格率は下記のとおりです。

学科試験の合格率

1級小型（筆記）	1級小型（口述）
59.1％	97.5％

1級自動車整備士試験は、整備士資格の最高峰として最も難易度が高く設定されています。また、筆記試験のほかに口述試験もあり、技術的な説明能力も評価されます。

合格ラインは、筆記試験で1問1点、50点満点に対し40点以上、かつ、それぞれの分野ごとに40パーセント以上の成績、口述試験は1問10点、20点満点中16点以上の成績です。

実技試験の合格率

1級小型の実技試験の合格率は31.9%で、合格ラインは、40点中32点以上の成績、かつ、各問題の配点に対して、それぞれ40％以上の成績です。

参考：一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会｜自動車整備技能登録試験のご案内（令和3年度）/令和5年度第2回/株式会社 クイック｜整備士JOBS｜1級自動車整備士の資格 ～種類・試験内容・難易度

5．資格取得にかかる費用

自動車整備士の資格取得には専門学校費用、受験料、実習費など様々な費用が発生します。進路別に必要な費用を詳しく比較検討しましょう。

専門学校の費用

2年間（2級コース）の費用の相場

公立	私立
40万円程度	200万円程度

自動車整備士は2級取得で一人前とされ、ほとんどの整備作業が可能になります。1級取得者は少数で、現状では2級との仕事内容や年収に大きな差はありません。

自動車整備士専門学校の2年制課程では、私立の場合、学費として200万円程度が必要です。各専門学校の費用を比較検討しましょう。

特待生制度を活用

自動車整備士養成課程では、優秀な学生を支援する特待生制度を設けている学校があります。成績優秀者や経済的支援が必要な学生に対し、授業料減免や奨学金給付などの優遇措置を提供しています。

中には返還不要の奨学金制度を設けている専門学校もあるため、入学を検討する際は事前に詳細を確認し、自分に適した支援制度を活用することが重要です。

参考：株式会社ダイバージェンス｜自動車整備士になるための費用ってどれくらい？まずは三級整備士を目指そう

働きながら取得する場合の費用

自動車整備技術講習の受講

全国にある自動車整備振興会の自動車整備技術講習を受講・修了する場合、実技試験を免除することができます。東京都の自動車整備振興会の場合の、会員・非会員の費用は下記のとおりです。

	東整振会員	非会員
３級自動車ガソリン･エンジン	62,000円	119,000円
自動車車体	78,500円	146,500円
２級ガソリン自動車	86,500円	165,000円
２級二輪自動車	83,000円	161,500円
１級小型自動車	121,500円	229,500円

前述にもあるとおり、実技試験の合格率は3級が約60%、2級が約20～40％なので、受講することで取得できる確率をあげるのも1つの方法です。

教育訓練給付金

自動車整備士を目指す方には、国の教育訓練給付制度を活用できる場合があります。この制度は、働く人の主体的な能力開発を支援するもので、厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を受講・修了した際に、受講費用の一部がハローワークから支給されます。

自動車整備士養成課程も対象講座に含まれており、専門実践教育訓練給付金では、受講費用の70％（上限56万円）が支給されます。雇用保険の被保険者期間などの条件がありますが、経済的負担を軽減しながら資格取得を目指せる有効な制度です。

教育訓練給付金

教育訓練給付金は、専門実践教育訓練を受講する離職者に対して、受講期間中の生活費を支援する給付金です、

失業状態にある方が初めて専門実践教育訓練（通信制、夜間制を除く）を受講する場合、受講開始時に45歳未満であるなど一定の要件を満たせば支給されます。

参考：厚生労働省｜雇用・労働教育訓練給付制度

6．自動車整備士資格で安定したキャリアを築こう

自動車整備士資格は、現代社会に欠かせない専門技術者としてのキャリアを築く重要な資格です。2級取得により一人前の整備士として幅広い業務に従事でき、専門学校や実務経験など複数の取得ルートがあります。

特待生制度や教育訓練給付制度を活用すれば経済的負担も軽減可能です。自動車業界での安定した就職・転職を目指すなら、計画的な資格取得を目指しましょう。