自動車整備士の資格取得を働きながら目指す方法について、実務経験の積み方から給付金の活用まで詳しく解説します。実務経験を積みながら学べる現実的なルートで、自動車整備士への転身を実現しましょう。
- 働きながら自動車整備士資格を取得する具体的な方法と必要な実務経験年数
- 教育訓練給付金を活用と申請手順
- 整備士技術講習と独学の違い、費用対効果の高い資格取得ルートの選び方
1.働きながら自動車整備士資格を取得は可能?

専門学校や特定の学科を修了していない場合でも、自動車整備士資格の取得は可能です。その場合、修了した学科によって、3級・2級で必要な実務経験を積む必要があります。
大学・高校・中学校の卒業者 (自動車や機械など以外) | 3級:1年以上の実務経験 2級:3級合格後3年以上の実務経験 |
大学又は高等学校の卒業者 (機械、電気又は電子に関する学科卒業者) | 3級:6ヵ月以上の実務経験 2級:3級合格後1年6ヵ月(大学)/2年(高校)以上の実務経験 |
高等学校の自動車科の卒業者 | 2級:3級合格後2年以上の実務経験 |
参考:一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会|自動車整備士を希望されるみなさんへ
▼自動車整備士の資格について詳しく
以下の記事では、自動車整備士資格の取得方法から費用まで解説しています。3級・2級・1級の違い、専門学校と実務経験の選択肢、特待生制度活用など紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
2.働きながら資格を取るときのメリット・デメリット

働きながら自動車整備士資格を取得するには、実務経験を積めるメリットがある一方、学習時間確保の困難さというデメリットもあります。これらを把握し、効率的な学習計画を立てることが資格取得成功の鍵となります。
専門学校に通わずに済む経済的メリット
自動車整備士専門学校の2年制課程では、200万円程度の学費が必要になります。
一方、働きながら整備士技術講習を受講する場合、実技試験が免除になります。東京都自動車整備振興会の2級までの講習費用は、最大16万円程度と大幅なコスト削減になります。
さらに、講習期間中も収入を得ながら学習できるため、生活費の心配もありません。
実務経験を積みながら学べる効率性
働きながら資格取得を目指す最大のメリットは、実務経験を積みながら学習できることです。教科書の理論を現場で即座に確認し、実践的な技術と知識を同時に習得できます。
経験豊富な先輩整備士から直接指導を受けることで、専門学校では学べない現場特有のノウハウや問題解決能力を養えます。この経験は資格取得後の実際の業務において大きなアドバンテージとなります。
働きながら取得する際の課題と対策
働きながらの資格取得には課題も存在します。仕事と勉強の両立による時間的制約や、体力的な負担が主な課題となります。しかし、整備士技術講習は平日夜間や日曜日に多く開講されており、働く人のスケジュールに配慮された設計になっています。
また、約半年間という比較的短期間での資格取得が可能なため、集中して取り組むことで克服できます。職場の理解と協力を得ることで、効率的な学習環境を整えることができます。
3.自動車整備士資格の基礎知識と就職に必要な等級

自動車整備士は国家資格であり、技能レベルによって1級、2級、3級に分類され、それぞれ対応できる業務範囲が異なります。
3級・2級・1級の違いと仕事内容
自動車整備士は3級・2級・1級に分かれており、それぞれ扱える業務範囲が異なります。
級ごとの違い
3級:自動車の基本的な整備
エンジンオイル交換やタイヤ交換など
2級:自動車の一般的な整備
エンジンや足回りの分解整備・車検業務
1級:電気自動車やハイブリッド車を含む全ての車種の高度な整備を行える
2級の自動車整備士資格があればほとんどの業務がまかなえること、1級との給与などにあまり差がないことを考えると、2級の資格を持っていれば十分と言えます。
無資格でもできる整備業務の範囲
無資格・未経験でも自動車整備の現場で働くことは可能です。
無資格でもできる業務
- エンジンオイルの交換
- タイヤの交換
- 車両の清掃
- 資格を持つ整備士のサポート業務 など
また、板金塗装の一部作業や、車検時の準備作業なども無資格で行える業務に含まれます。ただし、自動車の分解整備を行うには自動車整備士法により国家資格が必要で、無資格者が分解整備を行うと道路運送車両法違反となり、50万円以下の罰金が科せられるため注意が必要です。
4.実務経験を積める職場への就職

自動車整備士資格の受験には実務経験が必須となるため、まず認証工場または指定工場での就職が第一歩となります。
認証工場・指定工場の見つけ方と選び方
実務経験として認められるのは、地方運輸局から認証工場または指定工場として指定された事業所での勤務のみです。
実務経験として認められる場所
認証工場・優良認定工場になっている
- 自動車整備工場
- タイヤ整備工場
- 板金屋等の車体整備工場
- ロードサービスのJAF業務を行っている工場
- 特定給油店となっているガソリンスタンド
求人サイトなどで検索する際は、「認証工場」「指定工場」「民間車検場」といったキーワードを含む求人を重点的に探しましょう。面接時には必ず「実務経験証明書の発行が可能か」を確認し、将来の資格取得をサポートしてくれる職場かどうかを見極めることが重要です。
参考:関東工業自動車大学校|自動車整備士資格に実務経験って必要なの?自動車整備士資格の取得方法を徹底解説!
実務経験証明書の重要性と注意点
資格試験の受験時には、勤務先から発行される実務経験証明書の提出が必須となります。この証明書は、実際に自動車整備業務に従事した期間と内容を証明する重要な書類です。
転職や退職の際には、必ず実務経験証明書の発行を依頼し、大切に保管しておきましょう。また、複数の事業所で勤務した場合は、それぞれから証明書を取得する必要があります。実務経験の内容についても厳格に審査されるため、日頃から自分が担当した業務内容を記録しておくことをお勧めします。
5.整備士技術講習か独学かの選択

受験資格を満たした後は、整備士技術講習を受講するか独学で挑戦するかの重要な選択があります。
整備士技術講習のメリットと費用対効果
整備士技術講習の最大のメリットは、修了後2年間の実技試験免除です。実技試験の合格率は独学では3級で60%、2級で20~40%程度ですが、学科試験では3級が70%程度、2級が92%程度の合格率なので、かなり確率を上げることができます。
また、全国の技術講習所で実施されており、地方在住者でもアクセスしやすい環境が整っています。確実な資格取得を目指すなら、講習受講が最も現実的な選択といえます。
講習の期間やスケジュール
自動車整備技術講習のそれぞれの時間と期間は下記のとおりです。
講習の種類 | 教育時間 | 教育期間 |
---|---|---|
1級小型自動車 | 182時間 | 約1年 |
2級ガソリン自動車 | 132時間 | 約6ヶ月 |
2級二輪自動車 | 132時間 | 約6ヶ月 |
3級基礎 | 48時間 | 約2ヶ月 |
3級自動車シャシ | 96時間 | 約4ヶ月 |
3級自動車ガソリン・エンジン | 96時間 | 約4ヶ月 |
3級二輪自動車 | 96時間 | 約4ヶ月 |
自動車電気装置 | 120時間 | 約6ヶ月 |
自動車車体 | 114時間 | 約6ヶ月 |
スケジュールは働く人に配慮されており、平日昼間のほか、平日夜間(週2日~3日)や日曜昼間開催のコースもあります。講習修了時には修了試験があり、これに合格することで実技試験が2年間免除されます。
研修内容は、福岡県の自動車整備振興会の詳細があるので、こちらを参考にしてみてください。
6.資格取得の給付金の活用

自動車整備士の資格取得には高額な費用がかかりますが、教育訓練給付金と教育訓練支援給付金を活用すれば大幅な負担軽減が可能です。
教育訓練給付金
教育訓練給付金とは?
働く人の主体的な能力開発やキャリア形成を支援する雇用保険の給付制度
教育訓練給付金は、労働者の職業能力向上と雇用の安定・就職促進を図るため、教育訓練受講に要した費用の一部を支給します。自動車整備士資格は専門実践教育訓練に該当し、受験費用の70%(年間上限56万円)が支給されます。
支給対象者
教育訓練給付金は、下記のいずれかの条件を満たす方が対象となります。
【在職中】雇用保険に加入している | 受講開始日に、支給要件期間が3年(初めて教育訓練給付金を受給する場合は2年)以上ある方 |
【離職中】過去に雇用保険に加入していた | 被保険者資格を喪失した日(離職日の翌日)以降、受講開始日までが1年以内(延長の場合最大20年以内)、 かつ支給要件期間が3年(初めて受給する場合は2年)以上ある方 |
支給までの流れ

キャリアコンサルティングは。どこのハローワーク、キャリア形成・リスキリング支援センターでも受けることができます。その後、受講開始の2週間前までに、管轄のハローワークかe-Gov電子申請にて電子申請にて行います。
支給申請は、受講開始日から6か月ごとの期間の末日又は修了日のいずれかの日の翌日から1か月以内に、管轄のハローワークにて行います。
参考:東京工科自動車大学校|教育訓練給付金・ 支援給付金/厚生労働省|雇用・労働教育訓練給付制度
教育訓練支援給付金
教育訓練支援給付金とは?
専門実践教育訓練を受講する離職者に対して、受講期間中の生活費を支援する給付金
失業状態にある方が初めて専門実践教育訓練(通信制、夜間制を除く)を受講する場合、受講開始時に45歳未満であるなど一定の要件を満たせば支給されます。
7.働きながら自動車整備士を目指すメリットと効率的な取得ルート
働きながら自動車整備士資格を取得することは、実務経験を積みながら学べる効率的なルートです。認証工場や指定工場での就職から始まり、必要な実務経験を積んだ後に整備士技術講習を受講することで、確実な資格取得が可能になります。
教育訓練給付金を活用すれば受講費用の70%が支給され、経済的負担も大幅に軽減できます。専門学校に通うより費用を抑えながら、現場のノウハウも同時に身につけられるため、転職を考えている方にとって理想的な選択肢といえるでしょう。