佐川急便は、セールスドライバーや輸送ドライバーなど、物流を担う大きな会社ですが、かつては長時間労働や厳しい労働環境から「ブラック企業」という印象を持たれ、「佐川急便で働くことはやめとけ」とも言われていました。
しかし、近年は働き方改革やテクノロジーの活用により、労働環境の改善に力を入れています。
この記事では、佐川急便の主な仕事内容や、働くメリット、実際の口コミなどを紹介します。
- 佐川急便の主な仕事内容と、セールスドライバー・輸送ドライバーの業務
- 佐川急便がブラック企業と呼ばれた理由と、働き方改革による労働環境の改善
- 佐川急便で働くメリットと、実際の従業員の口コミ
1.佐川急便の主な仕事内容
佐川急便には、軽四セールスドライバー職やカスタマーサービス職、デリバリー職などさまざまな職種がありますが、主に募集されているのはセールスドライバー職と輸送ドライバー職の2つになります。
以下では、その2つの職種について解説していきます。
佐川急便のセールスドライバー職とは
セールスドライバーは、各人が佐川急便の代表者として、さまざまな物流関連のサービスを提供するドライバーと位置づけられています。
その業務領域は多岐にわたり、荷物の集配のみならず担当エリア内での物流提案やセールス活動、集配業務、料金回収などが含まれます。
物流事業の最前線で活躍するドライバーは、顧客がいつでも気軽に相談できる物流パートナーです。
顧客が物流に関してどのような悩みを抱えているのかを敏感にキャッチし、課題解決に向けてベストな提案を行うのもセールスドライバーの役割です。
セールスドライバーの1日は、出社後の荷物積み込みから始まります。1日のスケジュール管理や車両の点検などを経て営業所を出発し、担当エリアで業務に従事します。
昼休憩のあとも配達や集荷業務をこなしつつ、既存顧客の相談にのったり、新規顧客への提案を行ったりすることも業務のひとつです。
帰社したあとはトラックからの荷降ろしや路線便への積み込み、事務業務、営業報告などを行い、すべての業務が終わったら退勤するという流れです。
佐川急便の輸送ドライバー職とは
輸送ドライバーは、佐川急便の営業所間における荷物の輸送を主な業務とする職種です。
顧客から預かった大切な荷物を、指定された拠点まで安全に届けるのはもちろん、時間も厳守しなくてはならない責任ある仕事です。
また、輸送ドライバーには業務効率化の意識を持つことが重要とされています。
扱う荷物の重さや大きさはそれぞれで異なるため、工夫しながら積み込まないと業務効率の低下につながりかねません。
ひいては輸送の遅延にもつながることから、効率的な業務の遂行が求められています。
輸送ドライバーの1日は、出社後の車両点検と運行前点呼の実施から始まります。その後、営業所や中継センターで積み込んだ荷物を目的地へ運び、荷降ろしするまでが1運行目の業務です。
休憩を挟んだあとは2運行目の業務となり、中継センターで積み込んだ荷物を目的地で荷降ろししたら帰社し、車両点検や運行後点呼を経て退勤します。
2.佐川急便がブラック、やめとけと言われる理由
インターネット上でリサーチすると、「佐川急便はブラックである」といった内容の記事を掲載したWebサイトが数多くヒットします。
佐川急便がブラック、やめとけと言われる理由のひとつは、厚生労働省が公表したブラック企業リスト(労働基準関係法令違反に係る公表事案)に社名が掲載されたことです。
公表された資料によって、佐川急便による従業員への賃金未払いや長時間労働の慢性化などが明るみに出ました。こうした経緯から、佐川急便に対するブラック企業とのイメージが強くなりました。
そもそも、運送業界は古くからブラックなイメージがつきまとっています。慢性的な長時間労働や過酷な肉体労働がその要因です。
佐川急便も例外ではなく、厳しいノルマの設定や体育会系な上下関係の存在、パワハラまがいの行為などがあり、古い体質の企業と言わざるを得ませんでした。
3.働き方改革で変わりつつある佐川急便の現状
2019年から働き方改革関連法が順次施行され、多くの企業が対応に迫られました。
佐川急便でも、働き方改革の推進へと舵を切り始め、長時間労働の是正やハラスメント撲滅に向けた取り組みを進めています。
長時間労働の是正
ドライバーの長時間労働を是正するため、佐川急便ではITツールを活用した勤怠管理の徹底や残業時間削減、有給消化の推奨といった取り組みを進めています。
さらに、長時間労働の根本的な要因を排除すべく、「モーダルシフト」へも舵を切り始めました。
モーダルシフトとは、これまでトラックなど車両を用いて行っていた輸送を、船舶や鉄道に切り替えることです。
佐川急便は、これまでトラックのみを用いた長距離輸送を行っていましたが、近年では鉄道やフェリーを活用したコンテナ輸送も始めており、ドライバーの運転時間削減やCO2排出量削減を実現しています。
もうひとつの取り組みが、「スワップボディ車」の活用です。これは特殊な構造を採用したトラックのことで、荷台と車体部分を簡単に分離し、入れ替えられる点が特徴です。
中継拠点でドライバーは、出発地点に輸送する荷台と交換し、そのまま出発地点へと引き返すことができます。中継拠点を越えて先へ進む必要がなくなるので、労働時間の短縮につながるという仕組みです。
ハラスメント撲滅に向けた意識改革
従業員が働きやすい職場環境を構築するため、佐川急便ではハラスメント撲滅に向けた取り組みも進めています。
たとえば、eラーニングを活用したハラスメント教育や管理者向けトレーニングの実施などです。
佐川急便では、過去にパワーハラスメントに該当する事案が発生し、メディアでも大きく取り上げられました。その後、再発防止策として継続的なアンケート調査や防止教育の実施に取り組んでいます。
ほかにも、内部通報に対する調査体制の強化や適正な評価に基づく人員の配置、就業規則の見直しなども進めています。
さらに、もともと設置してあったメンタル相談窓口をより活用してもらうべく、従業員への周知にも取り組み始めました。
テクノロジー活用による業務軽減
ドライバーの業務負担軽減を目的に、佐川急便ではテクノロジーの活用も積極的に進めています。
2023年12月には、AIロボティクスソフトウェアの開発などを行う米国の企業などとともに、AI搭載荷積みロボットに関する共同プロジェクトを発足させました。
これが実用化すれば、これまでドライバーが行っていたトラックへの荷積み作業をロボットに任せることができ、相当な負担軽減につながると考えられます。
同社では実証実験の結果を注視しつつ、今後中継センターなどへの導入を検討しています。
再配達削減の取り組み
輸送業界における課題のひとつが再配達です。再配達は二度手間であり、余計な時間と労力が発生します。そこで、佐川急便では再配達削減に向けて独自の取り組みを始めました。
取り組みのひとつが「スマートクラブ®」の運用です。
これは、2020年2月に始まった、荷物の輸送に関するさまざまな情報をオンラインで提供するサービスです。
ユーザーがスマートフォンで会員登録することで、メール通知サービスや荷物問い合わせサービス、配達予定荷物確認サービスなどを利用できます。
顧客は、手軽に荷物の配送状況などをチェックできるほか、配達時間の変更なども行えることから、再配達削減に向けて大きな効果が期待できます。
SGホールディングスとして、週休3日制の導入
SGホールディングスは、採用力の強化や人材の離職防止につながると考え、週休3日制の導入に踏み切りました。
休日が少ないうえに労働が過酷となれば、優秀な人材の流出や応募の見送りにつながりかねません。
貴重な人材を疲弊させ、流出させてしまうのは企業として得策ではないと考え、同社では制度の導入を決断しました。
女性活躍推進
SGホールディンググループでは、「わくわくウィメンズプロジェクト」と銘打った女性活躍推進の取り組みを行っています。
もともと、2011年からスタートしており、育休取得の条件緩和やフリーダイヤルデスクの設置、時短勤務の導入などさまざまな取り組みを進めてきました。
また、佐川急便内では働き方改革推進を目的に「さがわワクワク委員会」が発足しています。
こちらでは、乳がん検診の推進やピンクリボン運動、女性従業員向け社内報の発行などの取り組みが行われています。
4.佐川急便で働くメリット
ネガティブな口コミが目立つ佐川急便ではあるものの、働くうえで得られるメリットは多々あります。
高い給与水準
SGホールディングスが公開している有価証券報告書によると、2024年3月期における従業員の平均年収は約739万円となっています。
佐川急便だけの平均年収ではないものの、これに近い年収を得られる可能性は十分あります。
実際、インターネット上でも佐川急便の給与は高いといった評価は多くあります。スキルや経験次第では、相当な高収入を狙える可能性があります。
また、佐川急便は扶養手当や深夜早朝手当、住宅手当、時間外勤務手当といった各種手当が充実しているのも魅力です。
出典:SGホールディングス 「2024年3月期 有価証券報告書」
充実した福利厚生
また、佐川急便では、福利厚生の一環として連続休暇取得の取り組みを進めています。土日祝日や誕生日、記念日などに休暇をとりやすい環境を整備し、有給の取得を推奨しています。
また、災害等特別保証や資格取得祝金、スポーツ大会給付金、貸付金制度、海外研修制度など、さまざまな制度を取りそろえている点も特徴です。
さらに年次有給休暇以外では、介護休業や育児休業、結婚・出産に伴う特別休暇などもあります。
全国各地のさまざまな保養施設、リゾート施設と提携しており、格安料金で利用できるのも魅力です。レジャー施設やスポーツ施設などを低料金で利用できるため、仕事とプライベートどちらも充実させられます。
ドライバーが休暇をとりやすい環境整備
ドライバーの業務は肉体労働であるため、しっかりと休養をとれることが大切です。佐川急便はそのことをよく理解しており、ドライバーが休暇をとりやすい環境を整えています。
近年では、佐川急便が週休3日制を導入したことが大きな話題となりました。
通常の休暇以外にも育児休暇や特別休暇などがあり、ドライバーはそのときどきの状況などに応じて柔軟に休暇をとることが可能とされています。
佐川急便で実際に働くドライバーのインタビュー記事でも、「有給休暇をしっかりとることができる」との回答がありました。
スキルアップ研修を通して多様なキャリアへ挑戦できる
現場の第一線で働くドライバーだけでなく、さまざまなキャリアを歩める可能性があるのも佐川急便の魅力です。
実際、同社では従業員のキャリアアップに向けたカリキュラムを豊富に設けており、多様なキャリアへの挑戦が可能です。
たとえば、指導員への道が挙げられます。同社では「佐川ライセンス制度」と呼ばれる社内資格を設けており、取得し指導員になると新人ドライバーなどへの指導にあたれます。
ほかにも、管理職から営業所の所長を目指したり、大手企業向けの営業担当として活躍したりといった道も目指せます。
デジタル活用による生産性の担保
佐川急便では、業務へのデジタル活用も積極的に進めています。
かつては手作業で行われていた荷引き作業も、現在ではITや機械を用いた自動化に成功しており、大幅な業務効率化を実現しています。
デジタルの活用によって生産性を高めつつ、従業員の負担軽減につながる取り組みを積極的に行っている点が大きな特徴です。
5.佐川急便の転職サイトにある実際の口コミ
インターネット上の転職サイトには、佐川急便に関するさまざまな口コミが掲載されています。その一部をピックアップしました。
勤務時間に関する佐川急便の口コミ
昔と違い、労務環境や待遇面が良くなってきているので、プライベートとのバランスが調整しやすいと思います。
希望休を月に4日提出可能。基本的に希望は通る。連休を取得することも可能。主任職になると欠員の補充なので代わりに出勤することもある。
基本的に定時で帰れる事はないのでプライベートの時間はあまりないです 休日くらいじゃないかな
シフト制なので、土日祝休みが希望の方はお勧めしません。長期連休というのもいっさいありません。
佐川急便の勤務時間に関する口コミを見ると、以前と比べて労務環境や待遇面での改善が進み、プライベートとの両立がしやすくなっているという意見があります。
一方で、定時で帰れることは少なく、休日以外はプライベートの時間があまり取れないというネガティブな意見も見られます。
給与に関する佐川急便の口コミ
賞与は年2回あるが個人、営業所の成績が反映される為安定はしていない。各種手当も一般的な金額。 評価制度については、地方では給料は良いほうだと思う。
基本給から手当等含めれば、家庭持ちの人間は手取りで25万円以上は確実に貰えると思うので、給料に関してはやはり運送業の中でもかなりいいと思います。
基本給は低く、残業代で稼ぐという昔ながらの給料体系です。ただその分、手当等はしっかりしており、営業所手当、家族手当等に関しては大手だな。と感じる事もありました。
基本給は低く入社一年目は残業を60時間して、総支給28万円でした。ベースアップの額は大きいので、3年我慢すれば他の企業よりは貰えるので、長く続けるのであればおすすめです。
佐川急便の給与に関する口コミからは、基本給は低めだが、各種手当が充実しているため、家庭を持つ人であれば手取りで25万円以上は確実に得られるという意見があります。
賞与は年2回あるものの、個人と営業所の成績に左右されるため安定しないようです。
地方では同業他社と比べて給料は良い方だと評価する声もある一方、残業代で稼ぐ昔ながらの給料体系だという指摘もあります。
組織の雰囲気
体育会系のような社風。合わない人はいるかもしれない。交通ルールや安全運転には力をいれていた。
若い人でも役職がつくこともあり、早期からキャリアを積める可能性は十分にあります。
体育会系だと思ってましたが昔とはかなり変わったとどの先輩方もおっしゃてます。自分でもそれは実感してます。
仕事はキツイけど給料はそこそこ良かった。先輩や同僚はいい人が多くお互いに助け合う文化があった。
アットホームでした。ブラックじゃなくて普通の意味でです。良く言えば和気あいあいとしています。
佐川急便の組織の雰囲気に関する口コミを見ると、「以前は体育会系のような社風だったが、近年はかなり変化してきている」と感じる従業員が多いようです。
交通ルールや安全運転には力を入れており、若手でも役職に就けるチャンスがあるなど、キャリアアップの可能性もあるようです。
仕事は大変なものの、先輩や同僚はいい人が多く、お互いに助け合う文化があるといった声も聞かれます。
アットホームな雰囲気で、良い意味で和気あいあいとしているという評価もあり、ブラックな印象からは徐々に脱却しつつあるのかもしれません。
6.佐川急便で働く前に知っておきたいこと
佐川急便の従業員の口コミからは、運送業界特有の長時間労働や肉体的負担の大きさを指摘する声がある一方、近年は労働環境や待遇面での改善が進んでいることがわかります。
勤務時間やプライベートとの両立、給与面、会社の雰囲気などに良い評価がある反面、業務の特性上、長時間労働や肉体的負担は避けられないため、そうした点を理解し、受け入れる覚悟も必要でしょう。