大型トラックドライバーは「運送業界の花形」とも呼ばれる魅力的な仕事です。高い給与水準や、ライフワークバランスの実現など、近年は労働環境の改善も進んでいます。
本記事では、大型トラックドライバーの仕事内容や必要な資格、年収事情、メリットなどを詳しく解説します。大型トラックドライバーを目指す方はもちろん、転職を考えている方にも役立つ情報をお届けします。
- 大型トラックドライバーの仕事内容と必要な資格
- 年齢別、地域別、他の運転手との年収比較
- 大型トラックドライバーの仕事の魅力とメリット
1.大型トラックドライバーの仕事内容
大型トラックドライバーは、「運送業界の花形」とも言える魅力的な仕事です。
これから大型トラックドライバーを目指す人は「大型自動車第一種免許」が必須ですが、定義や仕事内容、平均年収、メリットもあわせて確認しておきましょう。
大型トラックの定義とは?
運送業界では積載できる荷物の重量に応じて、トラックのサイズを「大型」「中型」「小型」に分類します。
大型トラックは、積載量が10tクラスの大きなサイズです。平ボディ(荷台が平らな形状になっている一般的なトラック)の場合、最大で11〜15tもの荷物を積載できます。
一方、中型トラックの積載量は4t、小型トラックは2t以下です。中型と大型は、トラックの形や備品・付属品によって積載量に差があります。
大型トラックの仕事内容とは?
大型トラックのドライバーは、主に依頼者から受け取る荷物を荷台に積載し、目的地まで運搬する仕事を担当します。
目的地に到着した後、積載していた荷物を下ろし、目的地に確実に届けることが必要です。運搬を終えたら、トラック内の清掃や洗車を担当することもあります。
交通事故を起こした場合、人身事故や物損事故になるケースが多いため、ドライバーの責任は重大です。当然ながら、人身事故には死亡事故も含まれます。
ドライバーは自分が交通事故を起こした場合、運送業界全体のイメージ低下につながることを考えて、安全運転を徹底しなければなりません。
必要な資格は?
大型トラックを運転するには、大型自動車第一種免許が必須です。大型自動車第一種免許を取得すると、大型トラックの他にダンプカーやタンクローリーなども運転できます。
教習所に通って大型自動車第一種免許の取得を目指す場合、まとまった費用がかかるものの、一定の条件を満たせば教育訓練給付金の受給が可能です。
また、大型トラックのドライバーとして働く前提で就職・転職する場合、大型自動車第一種免許の取得費用を補助してくれる会社もあるので、求人を探す際に確認することをおすすめします。
2.大型トラックドライバーの仕事の給料(年収)の平均は?
大型トラックドライバーは、実力や努力次第で大きく稼げる仕事です。平均給与をはじめ、年齢別や地域別、大型・中型・普通の比較、バス・タクシーとの比較など、さまざまな給料事情を把握しておきましょう。
大型トラックドライバーの平均給与
全日本トラック協会によると、大型トラックドライバーの平均月収は約36万900円、賞与を含めた平均月収は約39万3,400円です。平均年収は約443万円、賞与を含めると約472万円を期待できます。
引用元:公益社団法人 全日本トラック協会「2022年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態(概要版抜粋)」P4
年齢別
大型トラックドライバーの年齢別平均月収は「50~59歳」が最も高く、賞与を含めて約40万7,000円です。年収に換算すると約488万円になります。
給料は勤続年数や仕事内容に応じて変化するものの、「20~29歳」の平均月収と「50~59歳」の平均月収を比較すると、約4万5,000円しか変わりません。
大型トラックドライバーは働いた成果が給料に反映されやすいため、年齢による差は開きにくい傾向にあります。つまり、経験が浅い20~30代でも、努力次第で平均年収以上を稼ぐことが可能です。
年齢 | 平均月収 |
---|---|
20~29歳 | 361,400円 |
30~39歳 | 394,200円 |
40~49歳 | 406,200円 |
50~59歳 | 407,000円 |
60~64歳 | 354,700円 |
65歳以上 | 300,100円 |
引用元:公益社団法人 全日本トラック協会「2022年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態(概要版抜粋)」P11
大型、中型、普通での比較
中型トラックドライバーの平均月収は約30万6,200円、賞与を含めた平均月収は約33万円です。普通トラックドライバーの平均月収は約29万1,300円、賞与を含めた平均月収は約31万8,800円です。
普通から準中型・中型、大型へと、トラックのサイズが大きくなるにつれて、年収が上がります。トレーラーなどを運転する「けん引」はさらに上がり、運送業界でトップの年収額です。
引用元:公益社団法人 全日本トラック協会「2022年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態(概要版抜粋)」P4
バス、タクシーとの比較
賃金構造基本統計調査によると、バスドライバーの平均月収は約29万4,000円(企業規模10人以上)、年収に換算すると約353万円になります。
タクシードライバーの平均月収は約29万6,000円(企業規模10人以上)、年収に換算すると約355万円です。
大型トラックドライバーは高度な運転技術が求められるため、給料水準はトラック以外のドライバーより高いです。
引用元:e-Stat「賃金構造基本統計調査 1 一般_職種(小分類)DB」
地域別
2022年時点における、関東エリアのトラックドライバーの平均月収は約36万500円(賞与を含めると約38万9,200円)です。
それに対し、東北エリアは約29万9,800円、北陸信越エリアは約32万3,600円、沖縄エリアは約25万5,700円と、関東エリアより給料水準が低いエリアが複数見られます。
中部エリアと近畿エリアはいずれも36万円台で、関東エリアとあまり変わりません。
地域 | 令和4年度平均月収 |
---|---|
北海道 | 348,600円 |
東北 | 336,100円 |
関東 | 389,200円 |
北陸信越 | 355,600円 |
中部 | 395,700円 |
近畿 | 403,900円 |
中国 | 359,300円 |
四国 | 361,100円 |
九州 | 356,900円 |
沖縄 | 278,300円 |
引用元:公益社団法人 全日本トラック協会「2022年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態(概要版抜粋)」P6
3.大型トラックドライバーの仕事の給料を上げる方法
大型トラックドライバーが給料アップを目指す方法として、「資格を増やす」「長距離ドライバーを目指す」「先を見越して転職先を選ぶ」が挙げられます。
以下より、それぞれ詳しく解説します。
資格を増やす
大型トラックドライバーが以下の資格を取得すると、仕事の幅が広がり、キャリアアップや給料アップを目指せます。
運行管理者資格
運行管理者とは、トラックドライバーの乗務割の作成、休憩時間の管理、体調チェック、指導監督などを担当し、安全運行をサポートする専門家です。
運行管理者に選任されるためには、国土交通省が認定する国家資格「運行管理者資格」を取得する必要があります。
取得方法として挙げられるのは、「国家試験を受験するルート」と、「実務経験条件を満たして指定の講習を受講するルート」の2種類です。
大型トラックドライバーの場合は、一般的に講習認定機関が実施する基礎研修を受講した上で国家試験を受験します。
整備士資格
大型トラックドライバーは、日常点検整備としてタイヤやエンジン、ブレーキなどの状態確認や簡易的なメンテナンスを担当します。
大型トラックの整備に関する専門知識を磨くためには、国家資格にあたる「2級ジーゼル自動車整備士」を取得する方法が一案です。
これを取得することで、トラックに不具合や故障が発生した場合の対処法や、正しい日常点検整備の方法を理解できます。
リフト免許
大型トラックドライバーは荷物の積載も担当するため、「フォークリフト免許(フォークリフト運転技能講習修了証)」を取得しておくと、好条件の求人を探しやすくなります。
「技能講習修了者」と「特別教育修了者」の2種類があり、前者は最大荷重1t以上、後者は最大荷重1t未満の荷物を扱うリフトの運転が可能です。
けん引免許
「けん引免許」とは、大型トラックドライバーからトレーラー運転手へのステップアップを目指すのに必要な免許です。
けん引免許を取得すると、大型トレーラーやタンクローリーを運転できるので、高収入の仕事を受けられる可能性が上がります。
長距離ドライバーへのステップを目指す
大型トラックドライバーから長距離ドライバーにステップアップすると、深夜手当の上乗せによる給料アップを狙える可能性があります。
これは、遠方までの荷物を運搬する関係上、22時から翌朝5時までの時間帯に働くことが多いためです。
長距離ドライバーを募集する会社の中には、深夜手当以外の手当が充実しているところも多く見受けられます。休日出勤や早朝出勤の手当がある場合、身体に負担がかからない範囲で対応すれば、より効率的に稼げるでしょう。
転職先の会社選びも重要
大型トラックドライバーの給料アップには、稼ぎやすい会社を選択することも重要です。基本的には、各種手当が充実している大手の会社を選択した方が効率的に稼げます。
もちろん、小規模な会社の中にも従業員の働きやすさや給料に配慮しているところがあるため、「大手の会社の方が望ましい」とは限りません。
長い目で見て、自分の性格に合う雰囲気の会社を選択し、安定的に長く働いた方が稼げることも十分考えられます。
4.大型トラックドライバーの仕事のメリット
一見、大変そうに見える大型トラックドライバーには、いくつかのメリットがあります。以下より、大型トラックドライバーの仕事が自分に合うかどうかを見極めてみましょう。
他のトラックと比べて給与が高い
長距離の運搬を担当することも多い大型トラックドライバーの給料は、中型・小型トラックドライバーより高いです。大型トラックドライバーとして経験を積みつつ、専門資格を取得すれば、さらなる給料アップを狙えます。
近年においては、運送業界で労働環境の改善が進んでいるため、働き方の工夫により、効率的に稼ぎながらプライベートの時間も確保できます。ライフワークバランスは、仕事に対するモチベーションアップにつながります。
交通状況の予測、地理の把握に詳しくなる
大型トラックドライバーは指定された時間に間に合うように、最適な運搬ルートを見出す必要があるため、日々の仕事を通じて、交通状況を予測するスキルが身に付きます。
あらゆる道路を運転すれば、自然と地理に詳しくなり日常生活に便利です。
例えば、家族や友人とドライブする際、混雑しにくいルートがわかるようになります。また、遠方への旅行でも現地の道路を把握していると、スマートな道案内が可能です。
運転好きにはメリット
大型トラックドライバーの仕事は、運転が好きな人にとって天職です。基本的に運転している時間が長いため、好きなことをして稼げます。
また、長時間の運転により、自然とドライビングスキルが向上できる点もメリットです。経験を重ねれば重ねるほど、夜間の高速道路の安全走行やスムーズな縦列駐車などのテクニックを身に付けられます。
煩わしい人間関係がほぼない
大型トラックドライバーは、労働時間の大半をトラックの中で過ごします。依頼者に挨拶して荷物を渡す・受け取るなど、最低限のコミュニケーションがあるとはいえ、人間関係のストレスを感じにくい仕事です。
事務職や営業職の場合、人間関係の衝突を理由に離職する人が少なくありません。大型トラックドライバーは、意見が対立しやすい人や人間関係を築くことが苦手な人などにも向いています。
仕事でさまざまな場所に行ける
大型トラックドライバーは日本各地への運搬を担当するため、知らない土地を訪問して景色を眺めることが好きな人は楽しく取り組めます。
運搬後は休憩時間を活用し、日本各地の名物料理を楽しんだり、お土産を購入したりすることも可能です。
5.大型トラックドライバーで高収入を目指す
大型トラックドライバーは、高い給与水準と、運転スキルや地理感覚の向上、人間関係ストレスの少なさなど、多くのメリットがある魅力的な仕事です。
資格取得や長距離ドライバーへのステップアップ、転職先の選択など、工夫次第でさらなる給与アップも可能です。運転が好きな方や、自由度の高い仕事を求める方にぴったりの職業といえるでしょう。
大型トラックドライバーの仕事に興味を持たれた方は、ぜひ挑戦してみてください