国家資格が必要な運行管理者の仕事は、車両の安全管理から運行スケジュールの作成、ドライバーの労務管理まで、運送業界の要となる重要な職種です。年収は企業規模によって300万円から800万円と幅広く、経験を積むことでさらなる収入アップも期待できます。
国家資格の取得が必須となりますが、資格を活かした幅広いキャリア選択が可能で、将来性の高い職種として注目を集めています。
本記事では、運行管理者の具体的な仕事内容や年収事情、資格取得方法から、未経験からの転職事情まで、運行管理者に関する情報を詳しく解説していきます。
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- 運行管理者の具体的な仕事内容と必要なスキルについて
- 年収相場と経験年数による給与の変化について
- 資格取得方法と未経験からの転職実態について
1.運行管理者資格を取得するメリット3つ

運行管理者には、キャリアアップの可能性や安定した収入など、魅力的なメリットがあります。
具体的なメリットを3つ紹介します。
①運送業界でのキャリアアップ
運行管理者は運送業界における重要な職種であり、今後さらに需要が高まることが予想されます。
運行管理者資格を取得することで、運送会社の中核として活躍できるだけでなく、管理職への昇進や独立起業など、さまざまなキャリアパスが開かれています。
運送業界でのキャリア形成を目指す人にとって、将来性とステップアップの可能性を広げられるでしょう。
②やりがいのある仕事
運行管理者は運送業務の中核を担い、安全で効率的な輸送の実現のために多岐にわたる業務をこなします。
常に問題解決を求められる忙しい仕事ですが、自身の判断が会社の業績向上に直結し、大きなやりがいを感じることができます。
ドライバーの安全確保や輸送コスト削減など、具体的な成果を実感できる場面も多く、責任感と強い意志を持つ人に適した職種です。
③資格を活かした転職の選択肢
運行管理者の国家資格は、転職市場での価値が高く、幅広い業種で活躍できる可能性を開きます。
運送会社だけでなく、物流企業や通販会社など、輸送を必要とするさまざまな業界で求められる資格です。
資格保持者は転職市場で優遇される傾向にあり、より良い条件での転職チャンスが増えます。また、取得後も継続的なスキルアップが可能な資格でもあります。
2.運行管理者の年収・給料事情

運送業界における運行管理者の給与水準は、経験や企業規模によって大きく異なります。
ここでは具体的な年収相場と給与アップのポイントを解説します。
運行管理者の平均年収
企業規模・業態 | 年収範囲 |
---|---|
中小企業(正社員) | 300万円〜400万円 |
大手企業 | 600万円〜800万円 |
タクシー会社 | 350万円〜400万円 |
運行管理者の給与は勤務先の企業規模によって大きく異なり、大手企業と中小企業では最大500万円もの差があります。
特に大手企業では800万円という高水準の年収を得られる可能性があります。
タクシー会社の運行管理者の年収は中小企業とほぼ同水準で、業界の標準的な給与帯と考えられます。全体的に見ると、運送業界において運行管理者は比較的待遇の良い職種といえます。
経験年数による給与の違い
運行管理者の給与は、経験年数によっても差が出てきます。
経験の浅い運行管理者は、年収300万円前後からスタートすることが一般的です。
徐々にキャリアを積んでいくことで、400万円台、500万円台へと昇給していくでしょう。
ベテランクラスともなれば、600万円以上の高年収を得ているケースが多いです。大手企業であれば、経験豊富な運行管理者の年収が800万円を超えることもあります。
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下記の記事では運行管理者の給与相場や収入アップの方法を解説しています。企業規模別の年収から、仕事内容、キャリアアップの道筋まで詳しく紹介しているのでぜひ参考にしてください。
3.運行管理者資格取得後の5つの仕事内容

運行管理者の業務は多岐にわたり、安全運行の確保からコスト管理まで、幅広い責任を担います。
主要な業務内容を詳しく見ていきましょう。
運行管理者の仕事①車両管理
車両管理のポイント
- 車両の安全管理
(定期点検・整備の実施、不具合への迅速な対応) - 車両状態の把握
(日常的な状態確認、異常の早期発見) - 車両管理計画の立案
(適正台数の管理、増減車の判断、効率的な車両活用)
運行管理者は、会社が保有する全車両の安全管理を担当する重要な役割を担っています。
定期的な点検・整備を実施したり、不具合を発見した際は迅速に対応したりすることで、重大事故を未然に防ぐ必要があります。
また、車両の適正台数を判断し、効率的な運用を通じて会社の収益向上に貢献することも求められます。
運行管理者の仕事②運行スケジュールの作成と管理
運行スケジュール作成と管理のポイント
- 綿密な運行計画の作成
(荷主の要望、納期、ドライバーの配置を考慮) - 法令遵守の徹底
(運転時間や休憩時間の管理、ドライバーの健康管理) - 状況に応じた柔軟な対応
(交通状況や天候による計画変更、臨機応変な調整)
運行管理者は、荷主のニーズに応えながら、ドライバーの労務管理も考慮した運行スケジュールを作成したり、法令で定められた運転・休憩時間を確実に確保したりする必要があります。
また、日々変化する交通状況や天候に応じて、柔軟にスケジュールを調整し、安全で効率的な運送業務の遂行を実現することが求められます。
運行管理者の仕事③配送ルートの選定
配送ルート選定のポイント
- 安全性の確保
(事故多発地帯の把握、渋滞リスクの高いエリアの回避) - 車両特性に適した経路選択
(道幅や重量制限の確認、トラックの大きさに合わせたルート設定) - 最新情報の収集と活用
(国土交通省・警察からの交通情報の定期的な確認と運行計画への反映)
行管理者は、渋滞が予想されるエリアを避けたり、事故多発地帯を迂回したりしながら、最適なルートを選定する必要があります。単に最短距離だけを考えるのではなく、トラックの大きさや重量に適した道路を選ぶことが重要です。
そのためには、国土交通省や警察が提供する最新の交通情報を常にモニタリングし、状況に応じて柔軟にルートを見直す必要があります。
安全で効率的な配送を実現するには、このようなポイントを総合的に判断する能力が求められます。
運行管理者の仕事④安全管理と事故防止対策
安全管理と事故防止対策のポイント
- ドライバーへの安全教育
(交通ルールの徹底、安全運転の指導) - 事故リスクの分析と対策
(危険箇所の把握、事故防止策の立案) - 情報共有と意識向上
(ヒヤリハット事例の収集・周知、安全意識の醸成)
運行管理者は、ドライバーに対して交通ルールや安全運転の重要性を指導したり、日常的な安全教育を実施したりすることで、事故防止に努める必要があります。
また、事故リスクの高い状況を分析し、ヒヤリハット事例の共有など具体的な防止策を講じることで、運送業務の安全性を高めることが求められます。
運行管理者の仕事⑤ドライバーの労務管理
安全管理と事故防止対策のポイント
- ドライバーの健康管理
(疲労度の把握、適切な休養の確保) - 法定点呼の確実な実施
(運転前後の健康確認、安全運転の指導) - コミュニケーションの維持
(日常的な状態確認、変化の早期発見)
運行管理者は、ドライバーの疲労状態を把握したり、十分な休養時間を確保したりすることで、安全運転のための健康管理を行う必要があります。
また、法令で定められた点呼を確実に実施し、日常的なコミュニケーションを通じてドライバーの心身の状態を適切に把握することが重要です。
4.運行管理者の資格取得方法

運行管理者になるために必要な国家資格の取得方法や試験の概要、効果的な勉強法について詳しく解説していきます。
運行管理者になるには資格を取得する必要があります。ここではその方法を具体的に解説します。
受験資格の条件
運行管理者試験を受験するには、一定の条件を満たす必要があります。受験資格は、次の2つの方法で得ることができます。
①実務経験による受験資格
貨物自動車運送事業に従事した経験が5年以上ある場合は、実務経験による受験資格が与えられます。
ただし、運転手としての経験年数ではなく、運行管理に関わる業務に従事した年数がカウントされます。
②基礎講習の修了による受験資格
実務経験が5年未満の場合でも、国土交通大臣が認定した基礎講習を修了すれば、運行管理者試験の受験資格が得られます。
基礎講習は、運行管理に関する基礎知識を学ぶための講習で、通常は15日間のカリキュラムとなっています。
講習を修了するには、出席率95%以上が求められ、修了試験に合格する必要があります。
国家資格試験の概要
運行管理者の資格試験は、年1回8月上旬に実施される国家試験制度です。
試験は学科と口述の2段階で構成され、学科試験では運送事業法などの専門的な法律知識が問われ、70%以上の得点が求められます。
また、口述試験は学科試験合格者のみが受験でき、面接形式で実務的な適性や判断力が評価されます。資格取得には両方の試験に合格することが必須となっています。
試験項目 | 内容 |
---|---|
実施時期 | 年1回(8月上旬) |
試験形式 | 1. 学科試験 2. 口述試験 |
学科試験の内容 | – 貨物自動車運送事業法 – 道路運送車両法 – その他運行管理に必要な知識 |
学科試験の合格基準 | 70%以上の得点率 |
口述試験の受験資格 | 学科試験合格者のみ |
口述試験の内容 | – 面接形式 – 運行管理者としての適性評価 – 判断能力の評価 |
資格取得条件 | 学科試験・口述試験の両方に合格 |
試験勉強のコツ
運行管理者試験の筆記試験の合格率は、例年30%前後で推移しています。難易度が高い試験だからこそ、計画的な受験勉強が欠かせません。
まずは、試験範囲を確認し、学習計画を立てることから始めましょう。
運行管理者試験対策に特化した専門書や公式サイトで見られる過去問などを活用し、出題傾向を押さえておくことが合格への近道です。
また、独学だけでは心細いという人は、通信講座の受講がおすすめです。
初めて運行管理者として働く|未経験でも入社可能?
運行管理者の資格を持っていれば、運送業界未経験でも就職のチャンスがあります。ただし、多くの場合、最初から運行管理者として実務を任されることは少なく、先輩の下で基礎を学ぶ期間が設けられます。
運行管理補助として採用され、研修後に正式な運行管理者へ昇格するケースも一般的です。
資格の取得は入り口に過ぎず、実務では継続的な学習と経験の積み重ねを通じたスキルアップが必要不可欠となります。
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以下の記事では、運行管理者の役割、資格取得方法や受験の詳細、資格取得後のキャリアパスについて解説しています。ぜひ参考にしてください。
5.運行管理者の給料・仕事内容・資格取得について
運行管理者は運送業界の安全と効率性を支える要となる職種です。
車両管理、スケジュール管理、安全管理など多岐にわたる業務を担当し、その責任は重大です。
年収は企業規模により300万円から800万円と幅広く、経験を積むことでキャリアアップの可能性も広がります。
国家資格の取得は必須ですが、資格を活かした転職の選択肢も豊富で、やりがいのある仕事として注目されています。
運送業界の発展に不可欠な存在として、今後も需要は高まると予想されます。
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